眠り苔という苔があって
お正月になると
1日だけ光りだす
眠り苔が自生する
昔ながらの村。
眠り苔が屋根を
覆っている
どこの家も、人々は
寝入っている伝説の村
初老の郵便配達人が
正月2日の朝だけ
この村を訪ねるのだが
屋根の苔は光だし
村人が家の外で
おめでとうと
挨拶を交わしている
眠り苔に守られた村
1年に1日だけの目覚めを
悲しむことはなく
祝福の記憶を重ねていく
この星に殺戮があることも
憎しみや恐れや
偽善や裏切りがあることも
知っていて
愛があることも
知っていて
眠り苔の村は
星の希望の灯りをともして
光の心臓のように
呼吸している
#詩 #現代詩