
Poem)言葉というものを、再び口にする時に…
言葉を話さないでいて下さい、今は。
と少し訳ありな風体の人に
すれ違いざまに告げられたような
気がした、夕刻。
待っていた、いつから話し出していいのか、
と。
どの空が、Goの合図なのか、と心配したが、
合図というものは、わかるようにできている。
これといった目立つ空ではなかった、
雷鳴が轟くとか、厚い雲に覆われ尽くした
漆黒の夜空から、閃光煌めく流れ星が
降り注いだとか、そんなドラマチックな合図
ではなかった、ただ…
急に、目の前の扉に気がついて押してみたく
なった、そんな偶然の重なりが生きるという
こと、息をするということだった。
見知らぬ人々の後ろ姿を見つけて。
話し出してもいいですか、誰に聞いているのか、
自分でも不明だったが、そんな律儀な挨拶を
しておきたかった、言葉というものを、
再び口にする時に。