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散歩

 散歩が好きだ。
 子供の頃、祖母とよく散歩に行った。実家の裏手、道路を1本挟んだ向こう側が雑木林だった。市の境目にある林道。今日は北側に行こう。今回は南側。長い滑り台がある公園まで行こうか。とよく歩いた。

 春にはつくしや山菜を採りに行った。人が立ち入りにくい急な斜面には太いつくしが生えていて、どこの誰かも知らないおばちゃんと静かに取り合いをしていた。

 夏はあまりいかなかったように思う。七夕の前に笹(というか竹)を取りに行って、それ以降は秋までおやすみだ。祖母も私も暑がりの汗っかきなので、昭和の匂い漂う床置きタイプのエアコン(茶色い木目調のあれ)の前で、お米屋さんがくれた竹のうちわで扇いでいた。買い物帰りの祖母がシャワーを浴びたあとは必ずピンク色のテロテロした生地のワンピースを着ていたのがやたらと記憶に残っている。

 秋になるとまた散歩の季節だ。松ぼっくりや栗を拾ったり、きれいな落ち葉を集めたり。落ちている木の実を踏むのが嫌なので、どんぐりが沢山落ちている道を通るのが嫌だった。今でもどんぐり並木を通る度にあの薄暗い道を思い出す。

 冬のはじまり、地方紙の一面に六甲山の初氷が載るぐらいまでよく歩いた。一番遠い公園まで行って、歩道橋を渡ってスーパーまで行き、紙コップタイプの自動販売機でココアを買ってもらった記憶がある。歩道橋の橋桁の横に植わっている金柑の木を見ながら「あんたが風邪ひいた時に食べてる金柑、これに成るんやで」と教えてもらい、帰ってから植物図鑑で調べた。見たことも聞いたこともない柑橘たちを「これは食べれるやつ?これは?なんで食べられへんの?」と質問攻めにした。厄介な子供である。

 名前の知らない植物を見つけると、少し拝借して植物図鑑で調べた。牧野植物図鑑が家にある随分恵まれた家だったので資料には事欠かなかった。調べ始めたのは祖母の方だったので、私は真似をしていただけだったのだと思う。

 散歩も調べる事も今も大好きだ。
 1時間以内は徒歩圏内だし、歩いているときは必ず周りを見回してしまうし、気になったことはすぐに調べる。私はおばあちゃんっ子だったので母は手を揉むこともあったと思うが、今でも散歩と調べ物が好きなのは祖母がいてよかったなと思う。今度実家に帰ったときは、あの長い滑り台がある公園に行ってみようか。


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