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実軸上非負な多項式は、ある多項式の絶対値の2乗としてあらわされる。

 命題:$${p\left( x \right)=\sum\limits_{k=1}^{n}{{{a}_{k}}{{x}^{k}}}}$$ を複素数を係数とする多項式とする。
すべての実数$${x}$$で$${p\left( x \right)\ge 0}$$ $${\Leftrightarrow p\left( x \right)={{\left| q\left( x \right) \right|}^{2}}}$$となる多項式$${q\left( x \right)}$$が存在する。


 証明)$${\Leftarrow }$$ はあきらか。
$${p\left( x \right)\ge 0\Rightarrow p\left( x \right)={{\left| q\left( x \right) \right|}^{2}}}$$を示す。
次数についての帰納法を用いる。
case1) $${p\left( x \right)=0}$$が実根$${a}$$ を持つ場合:1以上の整数$${k}$$を用いて
$${p\left( x \right)={{\left( x-a \right)}^{k}}{{p}_{1}}\left( x \right)}$$ と書ける。ここで、多項式$${{{p}_{1}}\left( x \right)}$$は $${{{p}_{1}}\left( a \right)\ne 0}$$ を満たしているものとする。したがって、$${{{p}_{1}}\left( a \right)>0}$$または$${{{p}_{1}}\left( a \right)<0}$$であり、$${{{p}_{1}}\left( x \right)}$$は$${x=a}$$の左と右で符号を変えないことに注意しよう。
$${p\left( x \right)}$$ は実数$${x}$$に対して実数値(非負の値)をとるので、$${{{p}_{1}}\left( x \right)}$$ も実数$${x}$$ に対して実数値をとる。ここで、$${k}$$は偶数でなければならない。なぜなら、$${k}$$が奇数とすると、$${x}$$ が$${a}$$ の左と右で$${{{\left( x-a \right)}^{k}}}$$ の符号がかわり、$${p\left( x \right)}$$そのものが$${x}$$の$${a}$$の左と右で符号を変えてしまい、すべての$${x}$$ で$${p\left( x \right)\ge 0}$$という仮定に反するからである。したがって$${{{p}_{1}}\left( x \right)=\frac{p\left( x \right)}{{{\left( x-a \right)}^{k}}}\ge 0}$$がなりたち、帰納法の仮定から$${{{p}_{1}}\left( x \right)={{\left| {{q}_{1}}\left( x \right) \right|}^2}}$$ と書ける。したがって、$${p\left( x \right)={{\left| {{\left( x-a \right)}^{k/2}}{{q}_{1}}\left( x \right) \right|}^2}}$$となり、$${q\left( x \right)={{\left( x-a \right)}^{k/2}}{{q}_{1}}\left( x \right)}$$として、$${p\left( x \right)={{\left| q\left( x \right) \right|}^{2}}}$$が示された。
 
case2)$${p\left( x \right)=0}$$が実根$${a}$$ を持たない場合: $${p\left( x \right)=0}$$の根を$${\alpha =a+bi}$$とする。
いま、$${\bar{p}\left( x \right)=\sum\limits_{k=1}^{n}{{{{\bar{a}}}_{k}}{{x}^{k}}}}$$と定義する(蛇足!$${\overline{p\left( x \right)}=\overline{\sum\limits_{k=1}^{n}{{{a}_{k}}{{x}^{k}}}}}$$とは違うことに注意)
$${g\left( x \right)=p\left( x \right)-\bar{p}\left( x \right)}$$ とおくと、$${g}$$は次数が$${n}$$ 以下の多項式である。
実数$${a}$$ にたいして$${g\left( a \right)=p\left( a \right)-\bar{p}\left( a \right)}$$を計算する。$${\bar{p}\left( x \right)=\sum\limits_{k=1}^{n}{{{{\bar{a}}}_{k}}{{x}^{k}}}}$$において$${x=a}$$とすると、$${\bar{p}\left( a \right)=\sum\limits_{k=1}^{n}{{{{\bar{a}}}_{k}}{{a}^{k}}}=\overline{\sum\limits_{k=1}^{n}{{{a}_{k}}{{a}^{k}}}}=\overline{p\left( a \right)}}$$である。$${p\left( x \right)\ge 0}$$より、$${\overline{p\left( a \right)}=p\left( a \right)}$$。
したがって 実数$${a}$$ にたいして$${g\left( a \right)=p\left( a \right)-\bar{p}\left( a \right)\equiv 0}$$。したがって、$${g\left( x \right)=0}$$ 。
いいかえれば、$${p\left( x \right)=\bar{p}\left( x \right)}$$ となり、$${{{a}_{k}}={{\bar{a}}_{k}}}$$ となり、$${p\left( x \right)}$$は実係数の多項式であることがわかる。実形式の多項式$${p\left( x \right)}$$の根は共役根となるので、$${p\left( x \right)=\left( x-\left( a+bi \right) \right)\left( x-\left( a-bi \right) \right){{p}_{1}}\left( x \right)}$$, $${\deg {{p}_{1}}=n-2}$$ かつ$${{{p}_{1}}\left( x \right)\ge 0}$$ がすべての実数$${x}$$でなりたつ。帰納法の仮定より、$${{{p}_{1}}\left( x \right)={{\left| {{q}_{1}}\left( x \right) \right|}^{2}}}$$。したがって、$${p\left( x \right)={{\left| \left( x-\alpha\right){{q}_{1}}\left( x \right) \right|}^{2}}}$$となり証明が終わる。

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