新体操の採点問題: 芸術と競技のバランス
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新体操の始まりは、18 世紀のドイツまでさかのぼります。当時、体操(Gymnastik)は主に女性や少女向けの身体教育の方法として扱われていました。その主な目的は体操の動作で女性や少女の身体能力を発展させ、健康的な身体を作ることでした。その新体操は、時代を経て、現在はオリンピックの正式種目として認められています。
しかし、新体操の今の採点には問題点があります。それは新体操は絶対的な数字(試合で実際に入れた得点やタイムを競う)スポーツではなく相対的な数字(審判員の評価による得点)で競うスポーツだからです。オリンピックや世界選手権などの大きな大会での試合結果は、審判員の判定や評価が大きな影響を持ちます。なので、選手たちは「芸術」として観客を魅了することよりも、いかに高得点を出すかに集中します。
上の引用のように、審判員も「感動した」等で採点はしません。一つ一つの技に対して、「これを行ったら何点」「ここができていなかったらマイナス何点」など、決められた基準に沿って採点をします。そして選手たちは、審判員がどのように採点をするかをわかっているので、その基準に沿って高得点を取りやすい演技を行います。
「競技に精通した一部の人間にしか理解できない採点規則」というのは、新規のお客さんを呼び込むのには不向きです。新体操の競技を見たことがない人が、新体操の試合を見て「この選手が勝ったのはなぜか」というのは、なかなか難しいでしょう。
フィギュアスケートやアイスダンス、体操競技、ブレイキングダンスやスケートボードなどのストリート系スポーツ、お笑いのコンテストも、このような問題に直面する運命にあります。
ちなみに、バレエという別のスポーツを考えてみると、競技の要素を持ちながらも、その主要な目的は観客を魅了することにあります。コンクールや他の競技イベントでは確かに採点が行われますが、バレエの中心は劇場や舞台でのパフォーマンスです。
良い点数をもらいながらも、お客さんを楽しませる、というバランスをどう取るか、が難しいところです。
## 参考資料
新体操の採点規則に関する哲学的研究 by 村田由香里 · 2011