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UFO/UAP問題 用語・人物 全解説 (1)
(2021/11/2 改訂)
6月24日「UFOの日」という事だが、1947年のこの日にアメリカまたは世界で初めてUFOが目撃されたなどという誤情報は、そろそろやめて貰いたい。
それよりいよいよ、日本時間で26日(30日という説も)に、一部は既にリークしているUAPに関する報告書が、ペンタゴンからアメリカ議会に提出される期限が迫った。但し努力義務のようなので多少は遅れるかもしれない。
また、提出されても何処まで一般に公開されるかは分からないが、今までこの問題をよく知らなかった人も読み解き易いよう、専門用語やキーパーソンの解説書を作ってみた。
初回は、今や有名な3本のペンタゴンUFO(UAP)ビデオのリークに関わった人達を取り上げた。
アメリカのメディアやネットでは今、頻繁に目にする人が多いが、外国の人の顔と名前はなかなか一致しないと思うので、出来るだけ映像もリンクしている。
ひとつ言えるのは、かなり早くから徐々に人脈が形成されていたという事で、ビデオのリークよりずっと以前から、着々と準備が進められていたように思えてならない。(以下、敬称略)
UAP
未確認航空現象(Unidentified Aerial Phenomenon)
UFO、すなわちアメリカ軍が1950年代から使い始めた、未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)という語に代わって、近年、軍事用語として使用されるようになったが、最初に使い始めたのはイギリス国防省。
UFOという語では、軍人が目撃しても報告しづらいという事情を考慮したとされる。
2016年の大統領選でUFOファイルの開示を公約していた、ヒラリー・クリントンがこの語を使用したことで、一般に広まったのかもしれない。
中国の人民解放軍(PLA)では、UAC(Unidentified Air Conditions)と呼ぶ。(前記事)
2004年 ニミッツ事件
USS Nimitz UFO incident
2004年11月初め、アメリカ海軍の USSニミッツ 空母打撃群は、南カリフォルニアの海で演習中、異常な飛行体群を追跡する事態に陥っていた。
USSプリンストンのレーダーオペレーター、ケヴィン・デイ(Kevin Day)は、サンディエゴ西沖のサンクレメンテ島付近で、高度8500mを時速220kmで飛行している、5~10グループの物体群を最初に報告した。レーダー・システムを総点検しても消えなかったので、誤作動ではないという。
また、高度1万8000mから15mまでソニックブームを発生させずに急降下する物体群も観測された。
機影は100機ほどになることもあり、中には海中を時速130km以上で移動する物(USO)も、潜水艦から観測された。
しかし、その記録データは、あとで空軍の制服を着た人達が突然ヘリでやって来て持ち去ってしまい、そんな経験は初めてだったという。
11月14日、パイロットのデイビッド・フラバー(David Fravor)中佐(トップガン出身)と、アレックス・ディートリッヒ(Alex Dietrich)中尉(女性)は、ニミッツから、F/A-18F戦闘機で発進して偵察に向かった。
1機の飛行体が、高度2万4000mに現れた後、海に向かって急降下し、高度6000mで停止した。フラバーは、白い楕円形物体が海の上にホバリングしているのを見たと報告した。
後部座席要員を含めた計4人が、約5分間、物体を目撃した。
フラバー機が接近しようとして旋回急降下すると、物体は上昇して消えた。
共に出撃した早期警戒機E-2Cの乗組員も物体を見たが、そのデータも空軍が持ち去ってしまった。
交代で、チャド・アンダーウッド(Chad Underwood)中佐が率いる戦闘機第2陣がニミッツから発進。その機は、高性能赤外線カメラ(FLIR)を搭載しており、1機の飛行体を撮影、記録したが、画面では動いていないのにロック・オンできなかった。肉眼では遠くて見ていないという。
アンダーウッドは、赤外線映像に写った物体を、ミント菓子に似ていた事から、"Tic Tac" という造語で表現したので、のちに、Tic Tac UFO と呼ばれるようになった。
アンダーウッドの詳細な証言。
これらの兵士達は、2019年にヒストリー・チャンネルなどに出演して証言し始めたが、フラバーとディートリッヒは、2021年5月、CBSの看板ニュース番組「60 MINUTES」に出演して、改めて事件を振り返った。
“I don't know who's building it, who's got the technology, who's got the brains. But there's something out there that was better than our airplane,” says fmr. Navy pilot David Fravor about his experience with a UFO off the Pacific coast in 2004. https://t.co/fSMVvwynzc pic.twitter.com/aDDIPg3TJq
— 60 Minutes (@60Minutes) May 16, 2021
インタビューの翻訳は、ギズモードで読める。
下は、よく纏まっている再現ビデオ。
攻撃こそしなかったものの、実戦そのものだったことが伺える。
2014-2015年 セオドア・ルーズベルト事件
(ニミッツ事件のような一般呼称はないようなので、便宜上こう呼ぶことにする。)
2014年夏、バージニアからフロリダの沖で中東派遣のための演習をしていた、空母USSセオドア・ルーズベルトの飛行隊パイロットで、航空工学の学位も持つ、ライアン・グレイブズ(Ryan Graves)大尉らは、奇妙な飛行体に遭遇し始めた。
F/A-18の観測機器は2004年よりも性能が上がり、照準を合わせ易くなっていた。
高度約9000メートルから海面の間を、極超音速で飛ぶその飛行体に、エンジンや排気炎はなかった。
12時間、空中を高速で飛んでいたり、時には衝突寸前になることもあり、
形状は、立方体を内包する球体のように見えたという。
飛行体は演習終了の2015年3月まで、飛行訓練のたび、毎回出現。5~60人は目撃しているはずだという。
その間に、フロリダ州ジャクソンビル沖で、同じくセオドア・ルーズベルト所属のF/A-18F戦闘機が、のちに、Gimbal と Go Fast(かっ飛び) と呼ばれるようになる、2本のUAP映像を撮影した。
もっと長く高解像度の映像もあって、艦長らもこれを見たが、特に何も対処しなかった。首都まで数分で行ける場所にも関わらず、考えられない話だとグレイブズは語った。
また、演習後に派遣された中東でも遭遇したので、ロシアのドローンではないかとも疑ったという。
グレイブズ大尉は、2019年にヒストリーchで、ビデオを撮影したパイロットは、音声から当時の同僚だと話し、さらに連邦議員の秘密会でも遭遇事件について証言したが、他のパイロットらは、みな証言を断った。
また、ニミッツ事件のフラバーとディートリッヒと同じく、2021年5月、CBSの「60 MINUTES」に出演し、大西洋岸で訓練をしているパイロットは、少なくともここ2、3年は日常的に、そのような物体を見ており、自分も心配していると語った。
AATIP
先端航空宇宙脅威識別計画
(the Advanced Aerospace Threat Identification Program)
エーティップと読むこともある。
UFOまたはUAPを調査研究するために、米国政府、具体的には国防総省の諜報機関である国防情報局(DIA)によって指揮された調査活動。
2008年から2012年まで実施されたとされるが、2010年まではAAWSAPという計画の一部だった。(後述)
法律によって、軍による調査は、純粋な民間に対しては出来ないので、対象は軍関係者のみとなっている。
2017年12月16日、ニューヨーク・タイムズ紙等が、3本のUAPビデオを公開すると共に、AATIPの存在を報道した。
2019年5月、国防総省はUAPの調査を行っていた事とそれが継続している事を認め、同年9月には、3本のビデオについても、海軍機が撮ったものだと認めた。
さらに、2020年6月の上院情報特別委員会(SSCI)公聴会でも、それらが公式に確認された。
しかし、AATIP終了時の報告書は、例えば、"Traversable Wormholes, Stargates, and Negative Energy"(通過可能なワームホール、スターゲート、および負のエネルギー)など、SF科学的なテーマの38件のリストしか公開されていないようだ。
尚、このリストをなんとか公表させたのは、亡くなる直前の、
ジョン・マケイン元上院議員(1936-2018)だが、2008年大統領選挙で、
オバマ元大統領と争ったのを覚えている人も多いだろう。
UAPTF
UAPタスクフォース
2020年8月、国防総省は、海軍機が撮影したUAPの調査のため、海軍情報局内に新たな作業部会を設置すると明らかにし、その任務は、米国の国家安全保障に脅威を与える可能性のあるUAPを検出、分析、およびカタログ化することとされているが、実質的にAATIPを引き継いでいると思われる。
また上院情報特別委員会は、国防総省と国家情報長官(現在は、アヴリル・ヘインズ)に対し、UAPTFの報告書を180日以内に提出するよう求め、2021年度包括予算法内のコメントという形でトランプ大統領に承認されたため、2021年6月がその期限となった。
TTSA
To the Stars... Academy of Arts & Sciences
2017年10月に設立された公益法人。
科学者、航空宇宙エンジニア、クリエーターの共同事業体と称し、いくつかの事業展開を発表したが、その主目的はUAP情報のメディア・リークと、軍、政府への情報開示要求活動だった事は明らか。
エンタテインメント部門の子会社として、To The Stars社がある。
2019、2020年には、主要メンバーが、ヒストリー・チャンネルのドキュメンタリー、"Unidentified: Inside America's UFO Investigation"
(解禁! 米政府 UFO機密調査ファイル)に出演し、ニミッツ事件、ルーズベルト事件の目撃者達から、改めて証言を引き出しただけでなく、現場付近の民間人、空軍核ミサイル基地の兵士、民間航空会社のパイロット、イタリアや南米など外国の軍関係者など、多数の目撃証言を収集、分析し、反響を呼んだことで、この問題に対する認知と世論の盛り上がりに貢献した。
その中で、UAPが核施設近辺に頻繁に現れている事も確認された。
また、ADAM(Acquisition and Data Analysis of Materials)研究計画を立ち上げ、UAPの破片とされるエキゾチック金属を入手したとし、陸軍と共同研究すると発表した。
但し現在は、初期の主要メンバーが去って個別に活動しており、TTSA自体は財政難とも言われている。
公式サイト YouTube Twitter Wikipedia
【TTSA初期メンバー】
ルイス・エリゾンド
Luis Elizondo
陸軍出身で、様々な諜報機関でキャリアを積み、世界各地でのテロ対策等の経歴を持つ元諜報員。
2008年よりAATIPの前進計画AAWSAP(後述)に参加していた。
2010年より国防長官府(OSD)スタッフとしてAATIPのブログラム・マネージャー/ディレクター。
任務は、米国の管理空域へのUAPの侵入を、科学的根拠に基づいて調査することだったが、その対象は軍人に絞られた。
だが調査結果を、戦場で上司だった時もあり最も信頼していた、当時のマティス国防長官に報告しようとしたとろ、中間の高官達に反対されたため、2017年に辞職。
社会のUAP問題への関心を高めるために、TTSAに参加した。
TTSAでは、グローバルセキュリティ&スペシャルプログラム担当ディレクターとして、2017年12月のニューヨーク・タイムズ等によるUAPビデオ・リーク直後から、主流メディアにも登場するようになる。
ヒストリー・チャンネルのドキュメンタリーにはメイン・キャストとして出演し、AATIPでの活動に関しては守秘義務で話せないとしながらも、AATIP時代に証言を得たと思われる軍人達にも民間人として再度接触。3本のUAPビデオその他に関する目撃者証言を、多数集める事に成功した。
その中には、ニミッツ事件、セオドア・ルーズベルト事件のパイロットらが含まれる。
TTSAは2020年末に退社したが、2021年、UAPTF報告書の提出が公式に決定されると、各種メディアから引っ張りだことなり、現在はUFOコミュニティにおけるスターとなっている。
国防総省は、AATIP時代にエリゾンドが作成した電子メールの開示請求に対して、消去したと回答した。
クリス・メロン
Christopher K. Mellon
1957年生まれ。メロン財閥出身。元国防総省および議会職員。
1998~2002年、クリントン政権およびジョージ・W・ブッシュ政権の情報担当国防副次官補。
2002~2004年、ある上院議員の上院情報特別委員会スタッフ・ディレクター。
その後、民間に転身。TTSAでは、国家安全保障問題アドバイザーであり、出資もしている。
映画「THE PHENOMENON」(2020) や、ルイス・エリゾンドとともに、ヒストリー・チャンネルのドキュメンタリーに出演するなど、UAP問題のキーパーソンの一人だが、AATIPの話(契約書)と3本のUAPビデオをメディアにリークしたのは自分だと認め、ビデオはペンタゴンの駐車場で匿名者(エリゾンドとしている一部記事もあり。)から受け取ったとしている。
また後に上院情報特別委員会で採択された、UAP報告書を要求する法案を実質的に作成したのも、彼だったという。
ハル・パソフ
Harold E. Puthoff, PhD
1936年生まれ。
スタンフォード大学出身で、レーザー、通信、エネルギー分野の特許を持つ物理学者。また、超心理学者。
NASA、国防総省、諜報機関などとの関りも深いとされる。
1970年代に、リモート・ヴューイング(SRV)に目覚めたとし、スタンフォード大の研究所だった、SRIインターナショナルで、陸軍やCIA等から資金提供を受けて、SRVの研究(スターゲイト・プロジェクト、CIAの情報公開サイトで確認できる)に携わった。
その際、ユリ・ゲラーやジョゼフ・マクモニーグルなど、今では有名な超能力者たちを研究した。
但し本人によると、一般の研究者からは、彼の研究が評価されていたわけではないという。
1985年、アーステック・インターナショナル社と、オースティン高等研究所(IASA)を設立。エネルギー生成と宇宙推進、地球外知的生命体に関する研究をしている。
1995年、ロバート・ビゲロウらと始めたNIDSという小グループ(後述)が、こんにちのUFO/UAP調査に関わるきっかけとなった。
2004年、パソフはビゲロウ・エアロスペース社のコンサルタントとなり、AAWSAPの契約受注に協力した。
TTSAでは共同設立者の一人となり、科学技術担当副社長。
スティーブ・ジャスティス
Steve Justice
TTSA航空宇宙部門ディレクター
ロッキード・マーティン社の先進開発プログラム(通称スカンクワークス)の先進システム担当プログラム・ディレクターなど、先進的な航空機開発に30年以上携わったが、その成果のほとんどは未だ機密扱いとなっている。
又、スカンクワークスの過去の資料を調べるうち、初代リーダーであり、U-2やSR-71の設計に携わった伝説の航空技術者、ケリー・ジョンソンらのUFO目撃が記録されたファイルを見つけたという。
また、UFO/UAPの駆動システムは時空間の尺度を変えるもので、その物理的な仕組みは分かっていると述べたことがある。
ジム・セミバン
James Semivan
TTSA共同設立者の一人、オペレーション担当副社長
1983年からCIAに25年勤務し上級諜報員となる。
学生時代からUFOに関心があり、CIAに入ってから、UFO遭遇体験もしたという。
退職後、国家安全保障問題コンサルタント。
2016年、ロバート・ビゲロウと交流のあった、ジョン・アレクサンダー元陸軍士官を通じて、トム・デロングの To The Stars社に興味を抱き、協力を申し出た。
トム・デロング
Thomas Delonge
TTSA共同設立者の一人、初代社長兼CEO
1975年生まれ。ロックバンド Blink 182 および Angels & Airwaves のメンバーだったが、元々興味のあったUFO研究を本格的に始めたいと考え、2015年、To The Stars社を設立。TTSAの母体となった。
デロングは、民間の有名人である立場を逆に利用して、エリゾンドやメロンに接触し、パソフやセミバンに引き合わせた。
また、当時ヒラリー・クリントンの選挙対策委員長で、UFO情報の開示にも意欲を持っていた、ジョン・ポデスタとメールをやり取りしていた事が、ウィキリークスにより暴露された。
TTSA設立後は、広告塔としての立場を甘んじて受け入れていたようだが、TTSAの子会社となった To The Stars社とは現在も関わっているようである。
【TTSA周辺の協力者】
ハリー・リード
Harry Mason Reid
1939年生まれ。民主党員、モルモン教徒。
1971~1975年 ネバダ州副知事
1983~2017年 民主党ネバダ州選出下院・上院議員
2007~2017年 上院多数党院内総務
こんにち、UFO/UAP問題を、ここまでのメイン・ストリームに押し上げた最大の功労者といえる政治家。
出身地ネバダ州にあるエリア51には何度か行ったことがあり、ステルス・ヘリコプターの開発などを見たという。
1990年代より、ロバート・ビゲロウらの研究グルーブ NIDS(後述)に密かに参加していた。
リードは、その活動内容について、元宇宙飛行士のジョン・グレン上院議員(1921-2016)(アメリカ人で初めて地球を周回飛行。)に相談。
上院院内総務だった2007年、テッド・スティーヴンス(1923-2010)、
ダニエル・イノウエ(1924-2012)両上院議員の協力を得てAAWSAPを立案し、2008年度補正予算の中に、5年間で2,200万ドルを割り当てた。
今は政界を引退しているが、最近のインタビューでは、「ロッキード・マーティン社がUFOからの回収物の一部を持っていると何十年もの間、聞かされていたので、議員時代にペンタゴンに申請してその資料を見に行こうとしたが拒否され、理由も説明されなかった。」と答えた。
AAWSAP
先端航空宇宙兵器システム応用計画
(the Advanced Aerospace Weapon Systems Applications Program)
オーサップと読むこともある。AATIPの前進または上位計画。
上記の、ハリー・リード上院議員らが主導して立てた国のプロジェクトだが、最初に立案したのは、国防情報局(DIA)にいた科学者のジェームズ・ラカツキ博士とされ、計画の名称は表向きのもので、実際はUFO/UAPの調査が主目的であり、ビゲロウ・エアロスペース社の子会社への委託費として2,200万ドルが計上された。
しかしその予算は、UFO/UAPだけでなく、関連する超常現象などの調査にも使われたようで(後述)、それが問題視されたためか、あるいは、UFO/UAP調査に関して、民間会社の代行調査では軍部の協力が得られなかったという事情もあったらしく、2010年でAAWSAPは廃止されたものの、UFO/UAP調査については、国防総省職員だったエリゾンドが率いるAATIPのチームに引き継がれた。
尚、リードは、AAWSAP/AATIPを、通常の機密情報を上回る保護措置とアクセス制限をかける、特別アクセスプログラム(SAPs)に指定するよう申請したが、なぜか国防総省は拒否。
それがその後のリークを許す原因の1つになったのかもしれない。
2021年10月には、ラカツキらが「Skinwalkers at the Pentagon」という著書を出版し、AAWSAPの内情を一部明かした。(後述)
ロバート・ビゲロウ
Robert Thomas Bigelow
1945年生まれ。アメリカのホテル・チェーン店経営で成功した有名な大富豪で、その後、宇宙ビジネスにも乗り出し、1999年にビゲロウ・エアロスペース社を設立。宇宙ホテル構想でNASAとも交渉を進めるなど(現在は休止)、一時期もてはやされた。
一方で彼は、UFOやスピリチュアル系の研究家としても知られ、2017年に、CBSの「60 Minutes」に宇宙ベンチャーの社長として出演した際、「宇宙人は地球に来ている。すぐそばにいる。」と発言した。
実は1995年に、NIDS(発見科学ナショナル研究所)というシンクタンクを設立していて、そこに招かれたのは、
アポロ14号の、エドガー・ミッチェル元宇宙飛行士、
同じくアポロ17号の宇宙飛行士だった、ハリソン・シュミット元上院議員、
前記の、ハル・パソフ博士など、UFOコミュニティーの重鎮といえる人達だった。
さらに、テレビジャーナリストのジョージ・ナップが、ハリー・リード議員をビゲロウに引きあわせた。当時民主党のトップを目指していたリードは、非公開という条件でNIDSに参加した。
それでも現役議員との親交を得ることで、ビゲロウは政府機関とのパイプを持ち、AAWSAPは競争入札だったが、1社入札でビゲロウ・エアロスペースの子会社 Bigelow Aerospace Advanced Space Studies (BAASS) が請け負ったため、後に疑問を投げかけられる事にもなった。
またBAASSは、UFO/UAPだけでなく、関連する超常現象などの調査も行っていて、その中には、ビゲロウが買い取っていた、超常現象や未確認生物(UMA)目撃が多発することで昔から有名な、ユタ州のスキンウォーカー・ランチ(牧場)も含まれていた。
注)AAWSAPに残る謎
この、スキンウォーカー・ランチは、アメリカではロズウェルと同様、根強い関心が持たれているようで、今もヒストリーchのドキュメンタリー番組が人気のようだ。
昨年、トランプ大統領が銀河連合と接触していると発言して話題となった、イスラエル国防省宇宙局の元責任者であるハイム・エシェド氏も此処に触れているし、あながち全てオカルト話として片づけられない。
(過去記事参照)
例の"モノリス"騒ぎも同じユタ州で最初に出現した。
実は2007年頃、国防情報局(DIA)の科学者、ジェームズ・ラカツキ博士らが、スキンウォーカー・ランチに関心を抱き、ビゲロウに接触して此処を訪れた際、空中に3Dの変化する図形を目撃し、それを聞いたリード議員が、調査のためにAAWSAPの立案に協力したという事のようだ。
さらに、AAWSAPに関するBAASSの2009年経過報告書として、UFO/UAPに関する500頁近いものが1件確認されている。
しかしAATIP終了時の報告書は、例えば、"Traversable Wormholes, Stargates, and Negative Energy"(通過可能なワームホール、スターゲート、および負のエネルギー)など、SF科学的なテーマの38件のリストしか公開されていないようだ。(後に、100本以上の報告書と、UFO/UAPのデータベースが納入されたと判明。)
とすると、AATIPはAAWSAPのUFO調査部分だけを引き継いだというのは、本当なのだろうかという疑問が湧いて来る。
エリゾンドが、AAWSAPには自分は関わっていないと最近妙に強調していたが、後で、実際はメンバーだったと認めているのも気になる。
ハリー・リードは、ビゲロウの会社に委託した事を後悔はしていないと述べているが、友人への配慮と、国費を浪費した責任を逃れるためだけだろうか。
実はとんでもない発見をしたので封印する必要があったのか、それとも単に役に立たなかったので中止にしただけだろうか。
しかし、UAP調査と情報開示のきっかけを作ったにも関わらず、どうも今のビゲロウは、死後の世界の方に関心が向いているようである。
【追記】
上記の謎は、ラカツキ博士らが記し、2021年10月に出版された、"Skinwalkers at the Pentagon"という著書に詳細に書かれているという事だが、1年以上に及ぶペンタゴンの審査を経ているというので、すべてが書かれているかは不明。
調査結果の一部要約
1. AAWSAPは、2009年にUAP史上最大の事件であるチックタック事件を発見し、速報した。
AAWSAPの担当者が派遣され、パイロットやプリンストンのイージスレーダーのオペレーターにインタビューを行い、2009年にDIAに100件の報告書の一部として調査報告書を提出した。
ニューヨーク・タイムズ紙がチックタック事件を知る8年前のことである。
2. UAPを調査するために、米国本土(CONUS)および国際的な人員をリアルタイムで現場に派遣。
3. 生理的、病理的な影響をもたらしたUAPsとの相互作用の何百ものケースを分析し、記録した。
4. 11個の独立したデータベースからなる巨大なデータウェアハウスを構築したことで、AAWSAPは6つのレベルで詳細な情報を含む非常に広範囲なデータセットを手に入れた。
データウェアハウスの設計は、UAPでの経験に基づいて行われた。
データウェアハウスに入力されたケースは、慎重に分析され(場合によっては英語に翻訳され)、慎重にスクラブされた後、信頼性の数値指標が割り当てられた。
これは、GIGO(Garbage In, Garbage Out)効果を最小限に抑えるための試みである。
5. 金属・構造物のクラフト(例:Skinwalker Ranch)やそれに付随する現象の近くにいると、体験者が「何かを持ち帰る」ことがある。
AAWSAPは、人から人への異常現象の「感染」について、感染体モデルを提案した。
この現象の愛称は "ヒッチハイカー" である。
6. マルチフィジックスソフトウェア「Ansys」を活用し、「Tic Tac」の挙動と性能に関する深堀り解析を実施。
これは、AAWSAPが雇った博士号を持つ物理学者を活用した、実際に現場で行われたエンジニアリング分析である。(将来的にこうすべき、ああすべきという報告書を出すのではなく。)
7. 複数のセンサーを搭載したポータブルな自律型UAP監視ユニットを設計・製造し、米国内のどこにでも1日か2日で配備できるようにする。
8. 複数の研究所と契約し、墜落したとされる場所やその他のソースからの異常なサンプルを化学的に分析する。
9. ジョージア州でUAPからのビームを浴びた結果、あるいは小さな青い球体(未確認飛行物体)と接近遭遇した結果、複数の医学的影響を引き起こした医学的ケースについてのディープダイブ(AAWSAP職員が現場に立つこと)。
近接遭遇が人体への脅威であることを示す十分なデータを得た。
10. ロシア人翻訳者を雇い、国家UAP戦略に関するソ連時代の文書の翻訳と分析を支援した。
1991年に作成された非常に複雑で整理された組織図を示し、複数の機関にまたがる非常に洗練されたアプローチであることを示した。
ジョージ・ナップ
George T. Knapp
1953年生まれ。
ラスベガスの、KLAS-TV(CBS系列)に所属している調査ジャーナリスト、キャスター。
ラジオ番組では、UFOの話題を頻繁に取り上げている。
ナップを一躍有名にしたのは、エリア51で墜落したUFOを研究していたと主張したボブ・ラザーの、1989年の暴露会見だった。
1990年代には、ロバート・ビゲロウのNIDSに協力しており、ハリー・リードをビゲロウに引きあわせた。
2005年には、スキンウォーカー牧場に関する著書を出し、2018年に映画化もされた。(実はこの本が、上記のジョージ・ラカツキ博士の目に留まり、AAWSAP発足のきっかけになったという経緯があるとのこと。)
最近では、UFO/UAP番組のキャスターとして、頻繁にメディアに顔を出している。
ナップのチームは、30年以上にわたってUFOと核施設の関係を研究していて、国防総省やエネルギー省に情報公開請求をして資料を集めている。
また、第二次世界大戦後に数多くの原爆が投下された、ネバダ砂漠の原爆実験場で働く10人以上の作業員にインタビューし、それによると、UFOはそこでは当たり前のように活動し、それを監視するための要員が配置されていたという。
以上、私の記事を初めて読まれた方は、マガジンの過去記事も参照してください。
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