巨人の香月と言えば香月良太だった
巨人澤村拓一とロッテ香月一也のトレードが発表された。
何かとグラウンド内外を騒がせ、記事にもなった澤村だが心機一転ロッテで居場所を勝ち取ってほしい。今回入団する香月はあまり知らないのだが、一三塁を守り長打力もあるらしい。代打などで起用されつつ将来的には中島の後の一塁を北村や山下らと争っていくといったところか。
巨人の香月というと4年前までは香月良太がいた。オリックス時代からリリーフとして長く活躍していたが、絶対的存在というほどではなかった彼を私は巨人に入団してからその動向を注目していた。レプリカユニホームへの背番号圧着サービスで13番香月でやってもらったのは私くらいなのではないか。
香月良太が巨人で最も活躍したのは2014年、盤石だったスコット鉄太朗に陰りが見え始めた年。序盤はマシソンも山口も西村もピリッとせず、他の若手も打ち込まれる中防御率1点台と安定していたのが香月だった。
シュートで丁寧に内角を突くピッチングで一時は抑えも務めた。仙台での楽天戦、9回にマシソンが四死球で荒れに荒れて満塁のピンチを作り、急遽変わった青木高広もタイムリーを打たれ、絶体絶命のピンチの中でマウンドに上がった香月が後続を断って投げセーブを挙げた試合は痺れた。
残念ながらシーズンが進むにつれて調子を落とし、何度か二軍での調整を経ても出れば打たれるというような状態になり最終的な防御率は4点台、CSでは出番は無かった。
翌2015年は前年同じように奮闘した久保や青木が出番が無かったのに対して昇格の機会があったが、やはり徐々に打ち込まれ数試合の登板に留まる。2016年は由伸政権に変わり、ハナから構想外だったようで二軍で40登板しながら一軍に呼ばれず戦力外、そのまま球界を去った。
何故ここまで香月良太に注目するようになったのか、私にもキチンと説明できる自信はない。ただ、実績はあるのにトレード相手の東野と比較されて入団前からマイナスな印象を持つ声が多いような気がして、それなら逆に自分は応援していこうとよく分らない正義感を持ったのは覚えている。
生え抜きでもない、FAで三顧の礼で迎えられたわけでもない、助っ人外国人のように突き抜けた力もない。でもチームを回すのは彼らだけじゃないだろ。オリックスで残してきた実績はこんな理不尽に言われるほどのものじゃないだろ。意地を見せてくれよ。
こんなことを思う人は特殊だとしても、ファン目線での思いをプロ野球死亡遊戯こと中溝氏はよくコラムで言語化してくれる。香月良太にしても「ダンディ香月」とブログやtwitterでよく触れられてたなあ。
...いつの時代もプロ野球の魅力は“敗者復活戦”でもある。その日限りのトーナメント戦ではなく、果てしなく長いペナントレースを戦う中で、一度落ちた者が、再び這い上がる様にファンは感情移入するわけだ。子供の頃はプロ野球選手に憧れて、大人になると共感する。
出典:33歳・陽岱鋼、巨人二軍で汗にまみれる台湾の英雄の今…
...誰に何を言われようが、己の腕一本を頼りに今は花の都・大東京で中継ぎの仕事を黙々とこなしている。大竹のそういう生き方は心から恰好いいなと思う。あのFA移籍が成功だったかなんて、そんなことはもうどうでもいいのだ。
出典:誰よりも批判されたFA投手の逆襲。大竹寛の生き方が心から格好いい。
奇しくも香月の後に背番号17を付けている大竹が躍動している。2人は年齢も近いし、シュートを決め球にボールを左右に散らして打ち取るというピッチングスタイルも似ている。そして交換で移籍した相手のこともあって当初からファンの風当たりが強かったことも。
大竹もFA入団ながら年々出番が減り、一時は戦力外寸前まで行きながらも辛くも残留。そこから這い上がりリリーフとして再生し、日本代表にも選ばれ今年も勝ちパターンとしてなくてはならない存在になっている。
香月には今の大竹のような立ち位置になることを期待していた。つくづく2014年の好調が続かなかったことが悔やまれる。
崖っぷちからの逆襲という生き様は代打、代走の切り札よりもこういう中継ぎ投手の方が合っているような気がする。チャンスでの活躍ではなくピンチを凌ぐというより勝敗に直結する役割や、肩肘の消耗・入れ替わりの激しいポジションで身を削る様がその選手の背景の悲壮感と相まってより映えるのだろうか。
こういった立ち位置の選手は遡れば高木康成、マイケル中村、吉武等多数いたがほとんどは強力な投手陣に食い込めず静かに現役生活を終えている。大竹はここからどこまで逆襲ストーリを描いていくのだろうか。
今回のトレードとは全く関係のない話だったがちょっと思い出した。今回入団する香月一也、そして勝手に香月良太に託した思いを継承する大竹にはこれからも頑張ってもらいたい。