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「動じない心」を鍛える方法

どうすれば感情とうまく付きあえるのか?


勉強や仕事、部下の管理、スポーツ。どんな分野であっても「冷静さ」というのは重要です。

不安や緊張、憂うつ、イライラ、怒り…。こういった否定的な感情に振り回されていては、本来のパフォーマンスは発揮できなくなるでしょう。

トラブルや逆境、想定外の困難に対処するのも難しくなります。いったいどうすれば、否定的な感情とうまく付きあえるのでしょうか?

コントロールできないものに思いを寄せない


世の中には自分次第でコントロールできる(選択できる)ものとそうでないものがあります。

勝敗や売上といった結果、天候、景気、社会情勢、人がどう動くか、世間がどう思うか…?
コントロールできないものに強い思いを寄せていると、必ず否定的な感情が湧いてきます。

「結果がどうなるか」と緊張したり、「うまくいくかどうか」と不安になったり、思った通りでなければイライラが湧いてくるでしょう。

これは性格の問題ではありません。そもそも人間の心の仕組みは、そのようにできているのです。

たいていの場合、「よいことが起きるように」と願ったり、「悪い結果が出ないように」と祈ったりします。場合によっては強引にコントロールしようとすることもあるでしょう。それでも思い通りにことが運ぶかどうかは決められません。

「結果は自分次第でコントロールできない」。ほとんどの人は直感的にそのことを知っています。

それにも関わらず、なぜ結果をコントロールしようと躍起になるのでしょうか…?それは外的なものを「よし悪し」で判断しているからです。

否定的な感情は「よし悪し」から生まれる


人間は「よい」と思うものを手に入れようとし、「悪い」と思うものを避けようとします。

たとえば、健康や豊かさ、利益、勝つこと。何かについて「よい」と判断するのは、それらが人生において有利になる(と思っている)からです。

反対に、病気や貧しさ、損害、負けること。何かについて「悪い」と判断するのは、それらが不利益をもたらす(と思っている)からです。

問題の根本原因は、そういった「よいか悪いか」の判断を外的なもの、つまりコントロールできないものに向けてしまうことにあります。

よいと思うものが手に入るかどうか。悪いと思うものを避けられるかどうか。どんなに力を尽くそうとも、思い通りになるかは別の話です。

強い思いを向けていれば、不安や緊張、イライラなどの否定的な感情は避けられません。感情を表に出さないぐらいはできるでしょう。でも、否定的な感情そのものを消すことは不可能です。

不安やイライラが湧き出る源泉ごと消し去る


ただし一つだけ、否定的な感情を完全に消し去る方法があります。コントロールできない外的な物事についてよし悪しの判断をしないことです。

よいか悪いかの判断は、自身のコントロール下にあるもの、確実に制御可能なものだけに限定する。そうすれば、よいものを手に入れ損ねることも、悪いものに遭遇することもありません。

不安やイライラそのものではなく、感情が湧き出る源泉ごと、根こそぎ潰してしまう発想です。

この考え方の起源はギリシャ時代の哲学、ストア派に遡ります。ストイックという言葉の語源であるストア派は、政治家や経営者、アスリート、哲学者に愛好家の多い実践重視の哲学です。

いざという時に備えて心の筋肉を鍛えておく


とはいえ、外的な物事によし悪しの判断を向けないことは、おそらく直感に反するものです。
けっして常識的な考えではありませんし、日常生活で実践するのは容易ではないでしょう。

「感情のない無機質な人間になれ」という意味ではありません。ただ「必要ならばいつでもそうなれる」という選択肢を持つことは大切です。

一朝一夕には身につきませんが、だからこそ、その他大勢を圧倒する強さを与えてくれます。

筋肉を鍛えるのと同じ。有事のために普段から心の筋肉である意志を鍛えておくことです。
そうすれは、いざというときでも動揺したり、取り乱したりせず、冷静な対処ができます。

仕事でもスポーツでも人間関係でも、あなたが持っている本来の実力を発揮できるでしょう。

心の仕組みを利用し、動揺を避ける思考技術


外的なものに「よし悪し」の価値観を置かないことは、それが否定的な感情をもたらす源泉だからであって、それ以上の意味はありません。

実際、けなされるより誉められる方が、試合に負けるより勝つ方が、赤字より黒字の方が、病気より健康に過ごす方が好ましいのは確かです。

だからといって感情を乱して執着するようなものではない、ということです。たとえ躍起になったところで、それらは自分次第でコントロールできないのです。むしろ、焦らず待っていれば結果は出たのにね…、ということは多々あります。

外的なものに価値を置き過ぎると、感情に振り回されてしまう。そういった仕組みを踏まえ、混乱や動揺を避けるための思考技術に過ぎません。


本当に大事な一瞬の選択を間違えないため


全力を尽くした上で出た結果を気持ちよく受け入れる。物事の結果が好ましくても、そうでなくても、それをどう受け止めるかは自分次第です。

好ましくない状況でも理性的に判断できることを「よい」と、そうでないことを「悪い」とみなす。そうすれば、よいものを逃すことも、悪いものに遭遇することも、理論上ゼロになります。

実践しなければ机上の空論。でも、日常的に実践し、鍛え続ければ動じない心が手に入ります。

否定的な感情に襲われる心配もありません(本人がそれを望まない限りですが…)。誰かや何かを非難したり、自身の無力さを嘆いたりすることもなくなります。理不尽や不利益に遭遇しても、冷静かつ穏やかに、最善の対処ができるでしょう。

「動じない心」は技術。鍛えられるものです。
本当に大事な瞬間にこそ、冷静さは試されます。その一瞬の選択を間違えないため、日頃から感情マネージメント力を鍛えておきましょう。