【ドローンノススメ】広大な鬼ごっこは誰と誰のためのもの?
北海道のヒグマ、東北を中心としたツキノワグマ、全国で広がるシカ・イノシシ・猿等の大型生物の被害は約165億円の被害が計上されていますが、これは申告された数字であることをまずはご理解ください。
この約165億円を市場価格や対象作物以外に広げると軽く「0」が2~3個増えるのは間違いないです。
本日は、よく見ているyoutuberのコンテンツに触発されて、現在実施中の鳥獣調査の限界と合わせて書き綴ります。
我々の様な事業者は、まずは対象自治体から依頼やお話を受けて対象地でドローンを含むガジェットで調査を行います。
初動調査で何を行うのか?
その依頼に合わせて、地元の住民や猟友会へのヒアリングは絶対に行います。本質的に、この声はとても重要なのですが、この声だけでは実は自治体や警察は動けません。
通報により出動はしますが、ほとんどは何もできないのが現状です。
なぜかと言うと、鳥獣は鳥獣の理由で行動するからです。その為、鳥獣の必要がなくなればその場から移動します。逃げるのではなく、移動するのです。
あそこにクマのようなものがいた!そして、あっちに行った。これでは、広範囲で特定できない地域での捜索は、本当に難しく行政及び猟友会もおいそれと捕獲と言う結果をもたらすことは出来ません。
ニュースでも見られたかとおみますが、猿やイノシシ等の発見から捕獲まで軽く半日以上かかるケースが報道されますが、これは都市部でわりと本気を出したケースで地方ではほぼ放置せざるを得ないのが実情です。
それはなぜでしょうか?地方では、鳥獣が日常だからです。
そのため、単に鳥獣を見かけただけではなく、私のような外部の人間に依頼する場合では、日常過ぎて詳しく覚えてない人が多く、初動自体に遅れがあるのが現状です。
この記事を見られた!もしくは、見たときの為に、鳥獣の特徴「角の有無、色、数、大きさ等」は可能な限り覚えておいて欲しいです。
実調査では何を行うのか?
さて、色々と場所やヒアリングを行ってから行うのは、さあ、ドローンの出番です!ではないのです。
現実の発見情報をもとに、地域を練り歩きます。
ポイントは、耕作放棄地や空き地、ゴミ集積場、けもの道らしき跡と足跡や毛やフン等の痕跡です。
一般的なドローンの飛行は半径約5㎞です。直線では10kmは行けるのですが、日本の森は原則広葉樹で冬は葉が落ちますが、この時期は緑が生い茂り、森の中は実は大変暗いです。
単に、軍用機並みの性能を持ったヘリで日中の数時間を飛行したとしても、おいそれと見つけることは出来ません。そんなことで発見できるのであれば、山中での捜索漏れもなくなることでしょう。
それくらい、森の中で生物を見つけることは難しいのです。
そのため、ヒアリングと痕跡を頼りにドローン等で飛行させ、まずは痕跡から想定行動の仮説を立てて周辺を回遊飛行させます。
それで、ヌタバ(鳥獣のお風呂的な場所)やけもの道、隠れ場所と餌場等の導線を結び、更にその周辺調査を行います。
これで、まれに鳥獣が見つかるのですが、そこはまさに奇跡で再現性はほとんどありません。
再現性を根拠にした調査とは?
ドローンで出来る最大限の効果は、このような仮説に信頼性を向上させることです。もちろん、たまたまであれ発見されるということは、仮説の立証に大いに役立てれますが、再現性が無ければ後の工程はほとんどが徒労に終わります。
罠を仕掛けても、捕まえることが出来るのは最終的には運頼りです。もちろん、信頼性の高い根拠で罠を仕掛けるのですが、クマ・シカ・イノシシ等のジビエ用に仕掛けても、捕まったのがタヌキ・ハクビジンなんてことは中山間地域では往々にあります。
そのため、今我々が最大に信頼を寄せているのは「トレイルカメラ」です。
今回、23年度から約1年と言う長期間ヒアリング(聞き取り・報告調査)→ドローン → トレイルカメラと言うローテーションを実施して、通年に渡った中山間地域での鳥獣の発見を続けています。
広大な森林を一地方自治体予算で継続した調査費を賄うのはまあ無理です。さらには、我々のような事業者でも支援にも限度があるのも事実です。
これは、もしクマ以上のゴジラ的な超巨大生物が出現して、数千人単位で人への被害がなければ現在の政治状況では変わることはないでしょうか。
最大の課題とは?
もし仮に私が前澤勇作氏のようにお金をばらまけるほどの資金があれば解決すると思われるかもしれませんよね?
それは、大きな間違いです!
シカ・イノシシでさえ、一日の行動範囲は2~5㎡と言われ、市町村単位は軽く超えてしまいます。
仮に、A市へお金を渡しても、A市ではA市に対しての行動が出来ません。そうです、B市に移動した鳥獣に対して実行できるカードはないのです。
地方自治としては当然のことで、避けることのできない行政のジレンマが発生します。また、A市での被害が甚大なモノであっても、B市では軽微もしくは被害がないという実態であれば、B市との共同事業を興させることもできません。
隣に泥棒が入っても、悲しいですが大変ですね。で、終わってしまうと思います。
今後は、国 → 県 → 自治体へと伝えられる「鳥獣被害防止計画」を広域行政単位に変更することが第一の対策ではないでしょうか。
また、森林保護対策費を何かしらの名目で、予算化することは総務省管轄で可能なはずです。
現在は、鳥獣被害を管轄する監督官庁は「総務省」「農水省」「環境省」と、複数にまたがっています。それぞれの立場で頑張ってくれていますが、抜本的な解決として地域の協議会ではなく、監督官庁の協議会が必要と思われます。
現在だからできる対策!
私の幼いころは良く野犬が出没していましたが、今は街中に限って言えばほとんど見かけることはありません。いても、単なる迷い犬です。しかし、野生の犬(ノイヌ)はいますが。
野犬を見なくなったのは、徹底的に捕獲・排除と言う処分を進めてきたからです。
自治体問わず、大人の経験則と言うのは基本引き継がれてしまいますので、何かあれば集団で駆逐するすべはすでに持っている多恵です。
今我々一般人がするべき出来ることは、一時の感情に左右されず、野生生物は近くにいるという認識を持つことが何より重要だと思います。
都心部では幼稚園・保育園に「イノシシに注意」と言う看板はまだ見ることはありません。
彼らはそこに居るのです!
お知らせ
弊社の一年に渡る鳥獣調査の結果は各種掲載しております。
ご参考にして頂ければ幸いです。
また、こちらの動画は本当に良く出来ています。是非、参考にしてみてください。
ダーウィン博士のアニマルプレゼンCH
とは言え、生き物を相手にするというのは本当に大変です。
鳥獣は、見えることはあっても見つけ出すことは本当に大変です。
良き同じ世界に生きる隣人として未来永劫付き合うためには、努力は必要ですよね!