アメリカのBIM活用事例-オハイオ州立大学編-
オハイオ州立大学では、2015年に施設情報および技術サービス部署により「Buckeye BIM Initiative」というプロジェクトを立ち上げ、約3,400万平方フィートある施設スペースのBIM化を目標に掲げ、活動を開始しました。
本記事では、どのようにBIMを活用して上記のような効果を生み出したかを紹介します。
オハイオ州立大学の概要
オハイオ州立大学(The Ohio State University、以下OSU)は、1870年に設立されたアメリカの公立研究大学で、オハイオ州コロンバスを拠点としています。同大学は幅広い学問分野を提供し、特に研究活動と地域社会への貢献で知られています。
メインキャンパスは、593の建物で構成されており、2018年の資本投資予算は9億2,200万ドル、2019年には14億8,000万ドルに増加しました。施設内には、教室、研究用実験室、病院と診療所、図書館、管理事務所、スポーツセンター、農業施設が含まれています。
Buckeye BIM Initiativeプロジェクトを開始
OSUでは約3,400万平方フィートの施設空間を対象に、BIMの技術を活用し、新たな設計及び施工方法を模索することを目的として”Buckeye BIM Initiativeプロジェクト”が開始されました。
以下の動画にて、CADからBIMへの変遷、エネルギー消費分析やリノベーションにおけるBIMの活用について紹介しています。(約2分30秒)
53棟の建物のモデルを1年で完成
既存の建物は、2DのCAD図面からBIMに変換され、その正確さを確認するため現地検証が行われました。また、新しく建設された建物や大規模な改修工事が行われた建物については、OSUの設計基準に従ったBIM引渡しが求められました。
資産管理方法としては、※COBieフォーマットでBIM資産データを作成し、OSUの資産情報管理(AiM)システムと統合しました。
※COBieとは?
COBie(Construction Operations Building Information Exchange)は、建物の維持管理に欠かせない情報を効率的に整理し、関係者間で共有するための先進的なデータフォーマットです。このシステムは、建設プロジェクトの進行に伴い、設計・建設フェーズから運用・管理フェーズへと移行する際に、スムーズで効果的な情報管理を可能にします。NIBSやその他の機関からフォーマットが提供されています。
初期のプロジェクトでは学生も参加し、ウェクスナー医療センターの53棟のモデルが約1年で完成。プロジェクトに協力した学生にはBIMを活用する実践的な学びの場が提供されました。
また、BIMは以下のような分野でも活用されました。
特に、視覚化による新規や改修スペースの確認が、所有者主導の変更指示を減少させる一助となっています。
コスト回避の手段としてBIMを活用
OSUは、BIMの利用を、「実際にいま発生しているコストを削減する」というよりも、「将来的なコストを回避する」手段と捉えています。
コスト回避が可能な理由として、以下のポイントが含まれていると考えていました。
3施設で約11億円のコスト回避を試算
OSUは※NISTが発行したGSR-04-867のベンチマークを使用し、BIMを活用した場合に回避できる費用を試算しました。
OSUの敷地内にある3つの施設でBIMを完全に適用し、その施設の建設に関わるプロジェクトを行う際に、総額約11億円のコスト回避ができるとの試算結果が算出されました。(1ドル=150円換算)
※NISTとは?
アメリカのNIST(National Institute of Standards and Technology、米国国立標準技術研究所)は、アメリカ合衆国商務省の下にある機関で、産業や技術の発展を支援するために標準、計測技術、テクノロジーの開発を行っています。科学的・技術的な基準の確立、イノベーションの促進、安全性や品質の向上に寄与する他、NISTは、製造業、サイバーセキュリティ、建築、エネルギーなど、さまざまな分野での研究や標準策定に関わっています。
まとめ
OSUは、Buckeye BIM Initiativeプロジェクトにより主要な施設空間をBIM化し、資産管理のためのCOBieフォーマットの活用や、視覚化によるスペース管理の改善を実現しました。
BIMを活用することで、将来的なコスト回避や意思決定の質向上が期待され、3つの施設で約11億円のコスト回避が見込まれています。
参照元
BIM Beyond Design Guidebook
The Buckeye BIM Initiative
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