アメリカのBIM活用事例-ジョン・F・ケネディ国際空港編-
今回はBIMを活用し、効率化を実現した事例として、アメリカを代表する国際空港の1つでもある「ジョン・F・ケネディ国際空港」の再開発におけるBIMの活用方法と得られた効果について紹介します。
ジョン・F・ケネディ国際空港の概要
ジョン・F・ケネディ国際空港は1948年に開業しました。
ニューヨーク州クイーンズに位置し、同市内の主要な国際空港です。
施設内には、6つのターミナル(1、2、4、5、7、8)が存在します。
アメリカを代表する国際空港の1つで、巨大都市ニューヨークの空の玄関口として機能しています。
この空港のターミナル4、5の再開発時にBIMが活用されました。
時系列に沿って、BIMの活用方法と得られた効果について紹介します。
音響・人流のシミュレーションで活用(ターミナル5)
ターミナル5の改修工事は2005年から2008年にかけて行われました。
設計段階では、BIMを活用し、乗客のミクロシミュレーションを実施して、ターミナル内外の乗客の流れを最適化しました。
具体的には、モデリングツールを使ってBIM内の床面積、レイアウト、階段、エスカレーター、セキュリティゲートなどの情報をもとにシミュレーションのパラメータを定義しました。そして、BIMで設計コンセプトをモデル化し、それを利用して乗客の行動をシミュレーションしました。
以下が、実際のシミュレート動画です。
(引用元:TheOasysSoftware)
これらのシミュレーションは、ターミナル内の混雑度の測定に大きく貢献しました。
乗客の行動は、異なるタイプの乗客の動きをシミュレートするためにモデル化されました。例えば、ビジネス旅行者はエクスプレスレーンを利用し、手荷物が少ないモデルとして設定されました。一方、観光客はゆっくりとしたラインを通り、多くの荷物を持つ動きとしてシミュレートされました。また、始発便の乗客と乗継便の乗客の異なる割合もモデル化されました。
さらに、BIMは音響のシミュレーションにも活用されました。
通常の群衆音を超えて館内アナウンスの音声がしっかりと聞こえるよう、音響シミュレーションソフトウェアを使用して、ターミナル内の音響環境をモデリングしました。
人流に適した動線を網羅したデザインにも貢献(ターミナル5)
乗客輸送に関する緻密なシミュレーションは、ターミナルの形状にも大きな影響を与えました。改修工事後のターミナルは、中心ターミナルとスポーク形式から長くカーブしたドロップオフ/ピックアップエリアを持ち、中央にチケット販売所がある三角形のデザインへと進化しました。
また、航空会社のゲートへ自然に人の流れを誘導するデザインも構築することができました。
さらに、幅340フィートにわたり、20のセキュリティ検査レーンを備えたターミナル5のセキュリティチェックエリアが採用されました。この設計により、最も遠いゲートでも、セキュリティチェックエリアからわずか5分で到達できる動線が確保されました。
参照元:https://nap.nationalacademies.org/read/25840/chapter/15
発注者の変更依頼数を30%削減(ターミナル4)
JFK国際空港のターミナル4、コンコースB、およびターミナルビルの再開発プロジェクト(Phase 1)は 2013年から2023年にかけて行われました。
新築面積は556,000平方フィート、リノベーション面積は241,000平方フィート、総予算は10億米ドルを超える大規模なプロジェクトでした。
プロジェクトのPhase 1の管理はSatterfield & Pontikes Constructionが担当しました。Assembleシステムを用いてBIMデータを統合し、設計や見積り、施工業務の履歴などの情報を一元管理したことで、生産性の向上に繋がりました。
具体的には、週単位で設計の進捗を管理し、変更には迅速に対応したことで、発注者の変更依頼数を30%削減することができました。
これは工期だけでなく、大幅なコスト節減にも繋がっています。
まとめ
今回は建物の再開発プロジェクトにおいて、BIMを活用し、より機能的な空間だけでなく、効率化実現した事例を紹介しました。
今後も様々な事例を紹介していきますので、乞うご期待ください。
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