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CADとBIMの二重作業を乗り越えBIM移行を実現する

建設業界では、人手不足や高齢化といった課題の中、業務効率化を目的にBIMの導入が進められています。しかし、従来のCADからBIMへの過渡期であるがゆえに、日々の業務が非効率になることもあります。

本記事では、BIMへの移行期間における課題の一つである「BIMとCADの二重作業」に焦点を当て、業務をBIMへ完全移行するためのステップを提案します。


CADとBIMの併用が二重作業を生み、業務が非効率になる

BIMとCADの併用は、過渡期だからこそ避けられません。しかし、これによって発生する二重作業は、業務を非効率にします。以下にその具体例を挙げます。

BIMモデルを活用せずに、CADで図面を作成する
例えば、BIMプロジェクトに図面が内包されているにも関わらず、CAD形式の図面を求められるケースがあります。この場合、まずBIMデータの一部をCAD形式で出力し、そこに必要な情報を加筆します。こうした状況では、BIMでできる内容をわざわざ別のソフトウェアで作業をしており、結果として断絶されたデータが2種類存在することになります。

設計変更時にBIMとCADの両方の情報を修正する
設計変更が発生した場合、BIMに変更を反映してもCADへは反映されないため、修正作業が発生します。
変更が頻繁なプロジェクトでは、BIMとCADの両方を修正する二重作業が非効率を生む原因となります。また、BIMとCADのどちらか一方しか更新されていない場合、正しい情報が不明確になり、旧情報に基づいて施工が進むリスクが高まります。このような状況は、手戻りやスケジュール遅延を引き起こす可能性があります。


BIMのみを活用すると業務が効率化される

CADとBIMの併用では難しかった効率化も、BIMであれば可能です。以下で主なものを紹介します。

BIMモデルを活用することで図面作成を効率化
BIMモデルの情報を活用すると、図面作成の非効率を大幅に改善できます。BIMでは、建物全体の3Dモデルを基に図面を作成できるため、CAD形式で出力し、別のソフトウェアで作業するといった手間が不要になります。
また、すべての成果物が統一されたデータを基に作成されるため、作業の一貫性が確保されます。さらに、設計変更があった場合でも、BIMモデルを修正するだけで関連する図面が自動的に更新されるため、効率的なワークフローが実現します。

設計変更への対応がスムーズに
設計変更のたびにBIMとCADの両方を修正する手間は、BIMだけで業務を行うことで大幅に削減されます。BIMでは、モデル内での変更が全体に自動的に反映されるため、CAD図面のような手作業による1枚ずつの修正が不要になります。これによって、作業するファイルが1つに集約されることで、複数のデータ間の齟齬を確認する手間が省けます。また、常に最新情報が共有されるため、旧情報に基づいた施工による手戻りやスケジュール遅延のリスクも解消され、プロジェクト全体の効率化が可能となります。


CADとの併用からBIMに完全移行するためにやるべきこと

BIMとCADの併用から短期間でBIMへ完全移行するのは簡単なことではありません。一気にすべてを切り替えるのではなく、段階的にBIMでの業務を拡大し、ステップを踏みながら効率化を進めることが、現実的かつ効果的です。以下では、BIMへの完全移行を目指すための具体的な4つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状を把握し、課題を明確にする
まずは、BIMとCADの併用により発生している具体的な課題を把握することから始めます。設計変更や図面作成、干渉チェックといった場面で、どのように二重作業が生じているかを整理し、業務プロセスのどこに効率化の余地があるかを明確にします。また、関係者間のBIM導入状況や理解度も確認し、移行の際に協力が得られる体制を整える基盤を築きます。この段階で課題と現状の把握が十分であれば、次のステップがスムーズに進みます。

ステップ2:BIM活用の範囲を拡大し、効率化を進める

次に、BIMが最も効果を発揮する業務領域を特定し、その分野を中心に運用を拡大していきます。例えば、設計変更や干渉チェックといった業務でBIMの自動化機能を活用すれば、手作業の負担を大幅に軽減することが可能です。一方で、CADが必要な業務については引き続きデータ連携を行いながら、段階的にBIMの活用範囲を広げていきます。このように、BIMを活用することで効率化を実感できる具体的な成果を示すことで、関係者の理解と協力を得るきっかけにもなります。

ステップ3:データ基準を整備して、運用を安定させる
BIMとCADの併用が避けられない期間でも、データ基準の整備によって連携の効率を高めることが可能です。命名規則やレイヤー構造、属性情報の統一など、情報の一貫性を保つルールを策定します。また、IFC形式などの標準フォーマットを活用することで、異なるツール間でのデータ欠損や不整合を軽減します。この段階で整備された基準は、後のBIM一本化に向けた基盤に繋がります。

ステップ4:関係者間でのBIM運用体制を構築する
プロジェクトに関わる関係者全員で、BIM運用の共通ルールを整備します。発注者や施工会社と連携し、情報共有を円滑にするため、定期的な会議やトレーニングを実施します。また、特定のフェーズや小規模なプロジェクトでBIMを全面導入する試験運用を行い、その成果を関係者間で共有します。こうした取り組みを通じて、BIM中心のプロジェクト運営がスムーズに進む基盤を築くことを目指します。


BIMへの完全移行に向けて

現状のBIMとCADの併用から、BIMだけでの業務へ移行することは一朝一夕には実現できません。
しかし、少しずつステップを踏み、社内外の関係者と協力してBIMの活用範囲を広げていくことで、これまでの非効率を払拭し、業務の生産性を向上させることは可能です。一つひとつの取り組みを積み重ねることで、二重作業の負担を減らし、BIMを中心とした業務運用を実現していきましょう。


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