【第2回】「英国総選挙とは② 英国議会と選挙制度」
英国の国会は下院(庶民院・House of Commons)と上院(貴族院・House of Lords)から成り、今回開かれた総選挙とは下院での選挙を指します。下院で最も多くの議席を占める第1党の党首が、国王から首相に任命されます。
今回の総選挙では、労働党が過半数の議席を獲得し、党首のキア・スターマー氏が新たな首相となりました。
上院は貴族や聖職者が任命されて国会議員となるため、一般的な選挙はありません。公選によって選ばれることから、国民の意思をより反映していると言える下院には上院に対する優越権があります。
下院を通過した法案は、上院で否決されても、その後再可決することができます。上院の存在意義を疑問に思うかもしれませんが、法案の可決を遅らせたり、中身を吟味したりする役割があります。
選挙は単純小選挙区制と呼ばれる仕組みを採用しています。各地区の候補者のうち、最も票を多く獲得した人だけが国会議員(MP)になるという分かりやすい仕組みです。候補者1名を記入するだけですから、有権者が理解しやすく、選挙後の集計作業の負担も少ないと言われています。
一方で、わずか1票の差でも当選者以外は全て落選となるため、死票が多くなったり、政党支持率と実際の議席数が乖離した結果となったりする欠点があります。
日本では「候補者」に投票する小選挙区に加え、「政党」に票を入れる比例代表制もあります。僅差で敗れた候補者が、政党の得票数に応じて「復活当選」できる仕組みです。
よく「選挙に負けたのに復活当選なんておかしい」という声もありますが、選挙結果に民意をよりよく反映する、という点においては小選挙区だけの制度よりも優れていると言えます。今回の英国総選挙は、労働党の歴史的勝利と報じられていますが、投票数と議席数の相関関係に大きな乖離が起きており、次回以降で見ていきます。
小選挙区制度は二大政党制を実現しやすいと言われています。勝ち目が薄い候補に投票しても死票になることが予想されるため、有権者は応援したい候補よりも勝ち目がある候補を選びがちです。このため上位2候補の単純な一騎打ちになりやすく、選挙結果も大きく振れやすいとされます。