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犬とパン屋と、ニューヨーク

近所のパン屋さん、店先にリードフックがあります。犬を散歩させる時に使うリードを、そこへ引っ掛けられるもので、犬飼い主としては嬉しい。

何故ならそれは、「そこに引っ掛けて、パンをお買い上げ下さいね」と言う、小さなメッセージでもあるからです。

思い起こせば、20年?いえいえ、25年?いや、もっと前?女友達3人で、ニューヨークを旅しました。

ケチって安ホテルに泊まり、朝ご飯はどこか外で食べる日々。

ある時、セントラルパークの近くで素敵なパン屋(ブーランジェリーって言うのかしら?)を見つけ、そこで何かを買って公園で食べようという話になりました。

2人よりも先に選んで会計を済ませ、パン屋…いえ、ブーランジェリーの前でぼんやりしていると、目の前に、犬を連れたイケメンが現れる。

可愛い犬。イケメン。そして、セントラルパーク。

犬は尻尾を振って、私を見ている。私は犬が好き。イコール撫でます。

イケメンが話しかけてきました。

「Are you from Japan ?」

そう、そう、そうです!!!間違いなくそうですよっ!!!!でも、頷く事しかできません。

何故なら、日本を発つ時から喉の調子が悪く、機内でも咳き込み方が半端ありませんでした。そこでニューヨーク到着後すぐに、ファーマシーへ駆け込んで咳止めを買い、処方箋に書かれてある通り、「成人女性の一回の量」をきっちり守って飲んだのです。そして、寝て朝起きると…

声が全く出なくなっていた。

恐らくアジア人としては普通の体型の私には、量が多すぎて、そして効きすぎたのでしょう。

心の中で「私、英語喋れるんですぅぅぅぅ」と叫んでいる間に、友達2人もパンを買い終え、店から出てきました。

訝しげな顔をしているイケメンに、「彼女は今、喉の調子が悪くて声が出ませんのー」とかなんとか説明をして、優しいイケメンは「お大事にね」と言って、(少し後ろ髪引かれながら←希望的観測)犬と一緒にその場から立ち去りました。

あぁ、イケメンがぁ…

今でも、パン屋と犬をセットで見ると、当時の歯痒さが蘇り、あの時声さえ出ていれば、今頃私は、セントラルパークの近くで、オノヨーコみたいな暮らしをしていたはずだ!

と、言うのが、定番のオチです。



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