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愛着障害の子と保育・学校現場で向き合う方法
☆ 愛着障害とは
○ 不適切な養育環境に置かれた子どもは、その後の対人関係に深刻な 課題を抱えやすい
○ 無秩序・無方向性については虐待や明らかな養育不全と関連がある
○ 抑制型・・・他者に対してひどく内気で警戒心が強く、苦痛があっても大人に安心を求めない、素直に甘えられず腹を立てたり嫌がるなど両価的な態度を示しやすい
○ 脱抑制型・・・慣れない大人にもためらいなく関わり、無警戒で誰にでも甘えたがる
○ 「家庭で問題がなく園・学校では対応に苦慮している」「発達障害の疑うが、その対応ではうまくいかない」→ 愛着障害の視点から見直してみる
3つのポイント
「1 愛着障害が生じる場」
・子ども虐待は最も突出した養育不全
・親の精神疾患や極端な育児方針
・過剰な育児不安・ストレス など
「2 子ども側の要因」
・親の関わり方を受け取る子どもの個人差の問題
・子どもへの伝わらなさが親の不安を高め極端な育児に傾くことも
・愛着の問題は親と子どもも双方を視野に入れて整理する必要がある
「3 愛着障害の支援の可能性」
・愛着対象は親、まして母親と限定されるものではない
・特に乳幼児期の早い段階で周囲が愛着障害の可能性に気づき対応することは、その後の精神発達に大きな意味をもつ。
保育・学校の現場で向き合う際の4つのポイント
1「キーパーソンの位置づけを整理する」
キーパーソン・・・子どもに時間的にも、心理的にも手と目をかけら れる支援者
たとえクラス全体を見ながらでも、その都度対象児には目を向け、ほめ、何かトラブルになればキーパーソンが介入し、他の支援者がその動きをフォローすることが必要。
たまたま居合わせた大人が、それぞれの判断で甘えさせたり、叱ったりを見通しなく繰り返すことが、問題を増幅させやすいことに留意する。
2「行動の制止より、感情の言語化、社会化を手助けする」
子どもは自分の様々な感情を叱責や非難ではなく、温かい言葉で言語化され、肯定的感情、否定的感情ともに適切な形で表出してよい(社会化)と受容されることで、ようやく大人と信頼関係を築く入口に立つ。
母性的養育の基本は、物言わぬ乳幼児に対しても大人が「いやなのね/
うれしいね/びっくりしたね」などと、子どもが感じているであろう感情を言葉にしていくことにあり、この基本をもとに実践を整理することが大事。
子どもの基本的感情はまず「うれしい/たのしい/かなしい/おこっている/うらやましい」の5つである。
行動や結果に注目し、「だめ/いけない」と指示を重ねるより、まずその行動の背景にある感情に子ども自身が気づくことができるよう感情の言語化を意識する。
3「叱り方と褒め方を一工夫する」
いけないことをまったく叱らないことに抵抗を感じるのは支援者として当然の感覚
「高い所は危ない」「大きな声はびっくりする」など情報提供としての叱り方が有効
さらに「下りてごらん」「もう一度先生に静かに言って」と次にとるべき行動を端的に示し、できたらすぐにほめる
問題が起きやすい場面を見極め、先手を打って個別に課題や指示を与えることも重要
片付け場面、切り替え・移動場面、新しい活動場面が子どもたちには「危機場面」となりやすい
クラス全体への一斉指示の前に「○○だけこの箱に入れて終わろうね」「先生と手を繋いで並ぼうね」と個別に指示を出し、できたらほめる(一意一文)
4「大人が遊びを主導し、子どもの応答性や達成感を育てる」
子どもの甘えに応じてスキンシップを重ねても一向に落ち着かない背景は、一時的な満足感はあってもそれを溜めて行動のエネルギーにつなげる土台(自己)が弱いためと理解する。
愛着形成に課題を抱える子どもをよく観察してみると、「遊べていない」「遊びを知らない」ことが非常に多い。他者(まず大人)と一緒に遊ぶ、遊びを教えるというシンプルな目標設定も保育・学校ならではの取り組みであり、子どもの自己の育ちには大きな支えとなる。
ここで大切なのは、支援者が主導して、遊びを設定し、誘い、見守り、一緒に楽しみ、褒める(ここでスキンシップを挟むことは効果的である)ことである
子どもの要求のままに大人が応答する子ども主導の関係では愛着生成は難しく、遊びも育たない。スキンシップだけでは子どもの心は育たず、スキンシップの次を見据えて支援者が主導し遊びを育てていきたい。