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タイサル!第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」

みなさんこんにちは、写真家を自称して現実逃避する研究員の豊田です。

自称し続ければ、いつか研究職で路頭に迷っても、研究者出身の写真家として野生動物の生態を撮るプロカメラマンになれるのではないか...と思っています。
自己暗示です。


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この写真は、私の調査部屋の前にある池に牛たちがやってきた時の様子をスマホで撮ったものです。

のどかな風景でいいところなんですよね、この調査地。

この池の水がシャワーから出てくる点を除けば...。


「タイでサル調査!研究奮闘記」略して「タイサル!」、第3話の今日はそんなお水のお話その①です。


■シャワーは浴びれば浴びるほど汚くなる

第1話で触れたように、私の調査基地に来ているインフラは電気のみです。上水道がきていません。

調査部屋のある建物の前に大きな溜池があり、その池の水をポンプで汲み上げて、各部屋のシャワーに配管して供給しています(無濾過)。

一度、シャワーとは別の蛇口から小魚が出てきたことがあります。
これぞアメージング・タイランド!!


そもそも、この池には牛やサルたちがやってきます。当然ウンチはしますから、それが池の水に溶け込みます。犬たちもよく池に入って泳いでいます。釣り人が来ることもあり、撒餌をしたり餌のでっかい団子を投げて釣ったりしていて、まぁ何でもありの池です。川や用水路とは接続しておらず、雨水以外に水の流入はありません。常に濁った、溜池なのです...

そんなこんなで、とにかくこの水の悪臭がすごいんです。硫黄臭いと言うか、なんと言うか、そのまま浴びたら髪の毛に臭いが移ってちょっと厳しいレベルです。
タイの猛暑の中サルを一日中追いかけ、汗だくになって帰ってきても、シャワーから出てくるのは日光で温められ生ぬるくなったこの池の泥水なのです。

住み込みの職員さんはこの水で生活しているので、タイの田舎では普通なのかもしれないのですが、流石に私にはこの水環境だけはどうしても耐え難いものがありました。

そこで、私はこの水と戦う決意をしました。


■沈殿作戦

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「この泥水をなんとかして!」と頼んだ結果、まず提案されたのがこれ(上の写真)でした。

これは焼きミョウバンです。これを泥水に溶かせば、泥が沈殿してきれいな上澄みが回収できるよ!ということでした。

早速試したところ、たしかに泥水からきれいな上澄みが回収でき、臭いもそんなに気にならない、いい感じでした。

しかし、この上澄みでシャワーを浴びるとなんか肌がキシキシするし、目も痛い...

ネットで調べると、泥水の沈殿実験みたいなページがヒットしますが、注意で「飲まない・目に入れない」などが書かれていました。

これはアカンやつや!ということで、この作戦は即打ち切りとなりました。

ここまでにかかった費用は数十バーツ(ミョウバン結晶代)だったと思います。


■濾過器の設置

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ならば正攻法だ、と、タイのHomeProというホームセンターに連れて行ってもらい、浄水器を3つ買ってきました。中に筒状のペーパーフィルターが入っています。フィルター内部には炭みたいなのも入っているので、臭いも取れるはずだと期待しました。

3つもあれば完璧やろ!

...と勝利を確信したのもつかの間、試しに水を通しただけでフィルターがどんどん茶色く変色し、3日と保たずフィルターが泥だらけで目詰まりしました。

濾過器を通すと、確かに水の色は少し濁りが取れ、砂粒などはなくなりましたが、悪臭は健在でした。

頻繁にフィルターを洗わねばならず(泥水で)、手間ばかりがかかり得られる結果は微妙、さらなる対策が必要でした。

ここまでの出費は4500バーツほど。


■濾過器の増設

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この悪臭を除去すべく、浄水器を追加しました。知り合いのツテで入手した金属製のガチモノです。これは水道水の水を飲用できるように浄水するものだそうで、単なる濾過器ではないので、高価ながら効果抜群のはず。3機のペーパーフィルターを通し、この浄水器も通せば、流石にいけるんちゃうか?と思っていました。

出費は5000バーツほど。


結果、臭いは多少残ってはいるものの諦めれば気にならないレベルになり、濁りも取れ、ようやく受け入れられるレベルの浄化設備が完成しました!



■新たな問題が...

しかし、ここまできて新たな問題が生じました。

もともと水圧が高いわけではないのに、濾過器を3機+浄水器を1機通しているため、蛇口をひねると出てくる水がごく少量なのです。
チョロチョロレベルです。

ならばポンプをつなぐぞ!といきたいところだったのですが、もう流石に結構なお金を使ってきてしまいましたし、おまけにポンプが結構高く、簡単に手に入らないこともあり、ここで改良は諦めました。

結果的に、博士院生時代の2年間の調査期間中はこのシステムでしのぎました。24時間蛇口は開けっ放しで、100Lのタンクに貯水して使っていました。

得られる水量は少なかったのですが、あまりに水に苦戦する僕を見かねた施設の園長さんの配慮で、途中から雨水タンクが導入されたこともあり、臭い泥水との戦いはひとまず終焉を迎えました。


つづく...


次回の水事情その②は、その雨水タンクのお話です。お楽しみに!


追記

イラストレーターとして本連載の挿絵を担当いただいているはなさわさんが、ご自身のサイトで「タイサル!」シリーズの紹介ページを作成してくださいました。
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