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Frassaï | A Fuego Lento
Threadsで交流のある香水愛好家の方々からの評判がすこぶる良いフラッサイ(Frassaï)。ブエノスアイレス生まれのナタリア・オウテダ(Natalia Outeda)が創業したアルゼンチンの高級ニッチフレグランスブランドです。
Nose Shopのオンラインショップでは品切れだったディスカバリーセットを、偶然立ち寄った店頭のショーケースで発見。スタッフとしばらく話して、このフラッサイには何か特別なものがありそうだと直感し、迷わず購入を決めました。
南米からはるばる日本にやってきた香りを、1本ずつレビューしていきます。
ブランドの紹介は、全本のレビューが終わってからまとめるつもりです。
調香師について
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ロドリゴ・フローレス=ルーは、メキシコシティ生まれの調香師です。幼少期から香水への情熱を抱いていた彼は、メキシコで生物学を学んだ後、1989年にフランスの名門調香学校ISIPCAへと進学しました。そこで名調香師ジャン=クロード・エレナのもとで研修を重ね、その後、シャンプーや化粧品の香り作りからキャリアをスタートさせています。そして、クリニークの「ハッピー」というフレグランスで大きなブレイクを果たしました。
現在、彼は世界最大手の香料会社ジボダンにて、シニアパフューマー兼フレグランスクリエーション部門の副社長を務めています。これまでにトム フォード、ドルチェ&ガッバーナ、カルバン・クラインなど、数々のトップブランドとコラボレーションを行い、多くのFiFi賞を受賞し、香水界の殿堂入りも果たしています。
ロドリゴの創作は「美、喜び、完璧」への情熱に基づいており、感性豊かな複雑な香りや物語性のある作品を生み出すことが特徴です。彼のメキシコのルーツと花への愛が創作の源となり、独自性の高い作品を生み出す原動力となっています。
代表作には、「トム フォード ネロリ・ポルトフィーノ」や「クリニーク ハッピー」などがあります。これらの香りは、個性豊かで多くの人々に愛される現代の名作として高い評価を受けています。
画像とプロフィール文はFragranticaから引用させていただきました。
ア フエゴ レント | A Fuego Lento
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寒空の陽光を浴びながら、手首に香りをまとった。強すぎるほどのジャスミンの香りが、まるで自分の存在を覆い隠すように立ち上がる。その圧倒的な存在感に、他の香りが入り込む余地はなさそうだ。
時が経つにつれ、ジャスミンの主張は和らぎ、オレンジフラワーの香りがわずかに顔をのぞかせる。だが、その爽やかさはすぐに消え去り、期待していたスエードの優雅さやトルーバルサムの深みのあるウッディな印象も見つからない。代わりに現れる甘さは、どこか捉えどころがなく、アンバーっぽくもありムスクっぽくもある。この香水の核をなすはずのベースノートの正体が掴めない。
ジャスミンの影響力は残り続け、他の香りの個性を薄めているかのよう。まるで主役のジャスミンに他の役者たちが押されてしまっているかのような印象だ。香りは拡散せず、自分の周りにごく小さな空間を作り出す。その中で、正体不明の甘さと向き合いながら、困惑が深まっていく。やがて夕暮れが近づく頃、謎めいた香りは私の中で未解決のままフェードアウトしていった。
調香師:ロドリゴ・フローレス=ルー(Rodrigo Flores-Roux)
香りの強さ:★★★☆☆
香りの持続時間:★★★☆☆
まとめ
立ち上がりのジャスミンの力強さが、徐々に存在感を薄めながら、柑橘系のフローラルな香りへと移り変わり、そしてフローラルとは異なる甘みが現れてきますが、その甘みは、おそらくシベットやトルーバルサムといった見慣れない香料のもので、具体的な表現が難しいです。そのうち何かが濃厚に香るのだろうと期待しましたが、ジャスミンの存在感が強すぎて、他の香りが目立たないように思えます。
暖かい室内よりも寒い室外のほうが香りを感じられる気がしますが、それにしても、この甘みの正体がつかめず、個人的には、トップノートのジャスミンの印象が強く残る作品でした。
ミドル中盤以降の甘みは長く続きますが、あまり拡散しないように感じます。香りの濃さはあるものの、付けた箇所に鼻を近づけないと分かりにくいです。そのため、体感では「香りが薄い、持続時間が短い」と感じるかもしれません。
この作品は、非常に良い印象を持ったベラノ ポルテーニョ(Verano Porteno)を手掛けたロドリゴ・フローレス=ルーによる調香です。自分の印象が誤っていないか確認するために、2日間この香りで過ごしてみましたが、印象は変わりませんでした。
ジャスミンの存在感がかなり特徴的なので、ジャスミンを愛する方には魅力的な作品なのかもしれません。