Hermès | H24 HERBES VIVES
H24 EDTについては既にレビューしました。かなりのお気に入りで、週に何度も使っています。
現在、H24のラインナップは3種類あります。
今回、今年の2月に発売された「H24 HERBES VIVES(EDP)」のミニサイズを購入しました。雨上がりに漂う自然の香りをイメージして作られたというこの最新作の香りを、早速レビューしたいと思います。
H24 HERBES VIVES | エルブ ヴィーヴ
刈り取られたばかりの草地を渡る風のように、鮮烈な緑の息吹が空間を満たす。自然の生命力を想起させながらも、どこか人工的な様相を帯びているのが特徴的である。庭園の植物が朝露に濡れる瞬間のような清々しさがあるものの、その中に違和感のある金属質な冷たさが混在している。
この特異な印象の正体は、フィスクールという合成香料にある。若々しい洋ナシの果実が放つ清涼感と共に、この新しい香料が現代的な無機質さを醸成している。まるで最新鋭の建築物に植物園を配したかのような、自然と人工の境界を行き来する香りだ。しかし、その印象は気温や体温の変化に応じて揺らぎ、時には香りの存在すら感じられなくなる瞬間がある。
最も印象的なのは、この香りが持つ実験的な性質である。草木の清々しい息吹とフィスクールがもたらす金属的な質感は、香りの最高の瞬間を定着させようとする試みの過程にあるようだ。その相反する要素の共存は、必ずしも調和的とは言えない。むしろ、意図的に作り出された違和感として存在している。
心地よい瞬間と物足りない瞬間が交錯する様は、完成形を追求する過程で生まれた中間的な表現とも受け取れる。確かに魅力的な要素は存在するものの、それらが永続的な価値として定着するかどうかは疑問が残る。この香りは、従来の価値観を超えようとする挑戦的な一歩なのかもしれない。
まとめ
クリスティーヌ・ナジェルらしい軽やかな透明感が感じられる香りですが、ノートの変化の乏しさは異色です。おそらくフィスクールの効果だと思いますが、香りの核がどこにあるのか分からなくなります。付けた箇所に鼻を近づけると香りはします。しかし、まるで肌に閉じ込められたように香りが広がりません。
並行輸入品(バッチコードは有効でしたので偽物ではないはずです)を購入したため、その影響かと考えFragranticaのレビューをチェックしてみたところ、暖かい気候でないと香りの真価が分からず、秋から冬へと寒さが強まる中では、ほとんど香りを感じられないという声が多くありました。
この特性は、以前にこちらでレビューしたEtat Libre d'Orangeの「THE GHOST IN THE SHELL」に似た感覚です。この香水もバイオテクノロジーの原料が使われており、無機質で均質な香りがほとんど変化しないまま続き、ある瞬間にあっさりと消えていく香水でした。
「H24 HERBES VIVES」も「THE GHOST IN THE SHELL」も、香水の未来を感じさせる独特の魅力があります。しかし、いまのところ購入は保留しました。暖かい季節に香りが飛びにくい可能性があるかもしれません。また試してみようと思います。