Abel アムステルダム発。都会のミニマリズムと自然の調和
今日はNOSE SHOPのガチャで引き当てたAbelを紹介します。
オランダ・アムステルダムを拠点とするニッチフレグランスブランド「Abel」は、自然と科学の調和を追求する新しい香りの在り方を提案しています。2013年にニュージーランド出身の元ワイン醸造家フランシス・シューマックによって設立されたAbelは、100%ナチュラル成分のみを使用した香水作りという、極めて挑戦的なミッションに取り組んできました。
従来のパフュームブランドとは一線を画し、環境への配慮と持続可能性を重視しながらも、現代的で洗練された香りを生み出すことに成功。有機栽培された原料、フェアトレード認証の成分を厳選し、複雑な香りの構築を可能にする独自の調合技術で、ナチュラル素材の可能性を最大限に引き出しています。
特筆すべきは、Abelの香りが単なるオーガニックフレグランスの枠を超えて、アート性の高い表現として評価されている点です。都会的なミニマリズムとナチュラルな要素が見事に融合した、そのモダンでありながら親しみやすい香りは、世界中の香水愛好家たちから支持を集めています。小規模生産にこだわり、原料の調達から製造、パッケージングまで、すべての工程で環境負荷の低減を意識した姿勢は、現代のラグジュアリーの新しい形を示唆しているとも言えるでしょう。
Abelの香りは、創業者と同じくニュージーランド出身のマスターパフューマーのアイザック・シンクレアが生み出しています。天然フレグランスを世界クラスのものにするというAbelの探求において、フランス人調香師ファニー・グラウが2人目の仲間として加わり、彼女はNurtureを手がけました。
Abel | Cyan Nori
清涼な水面に映る影のように、最初は儚く、まばらな気配しか感じられない。やがて、かすかな存在感を示すように、タンジェリンの輪郭が浮かび上がる。その透明感のある柑橘の香気は、白桃の柔らかな甘みを連れてくる。淡い色調で描かれた水彩画のように、輪郭がぼやけたまま香りは漂う。
ここで終わりかと思われた瞬間、体温という名の光が差し込む。植物性ムスクの温かみが、静かな波紋を描くように広がりを見せる。深く呼吸を重ねると、微かにベルガモットの気配が感じられ、その清澄な香りは静謐な空気感を纏いながら佇んでいる。空気中に溶け込んだように、ムスクは一定の距離を保ちながら、柔和な存在感を放ち続ける。
控えめな香りは、決して主張することなく、ただそこにあるように寄り添い続ける。海辺の磯の香気は一瞬の記憶として刻まれ、潮風に乗って消えていく。人工的な要素を極力排除した調香は、着用する人の個性を受け入れるように、その存在感を静かに主張する。それは自然界の精妙な均衡を思わせる。控えめでありながら芯のある佇まいは、現代のミニマリズムの美意識と呼応している。
まとめ
海苔が入っている香水と聞き、少し風変わりな香りをイメージしていましたが、実際には磯の香りが付けたての一瞬、かすかに漂う程度で、終始一貫して穏やかに植物性ムスクが香る心地良い香水でした。
長持ちする香りとは言えませんが、バイオテクノロジー、100%天然成分、揺るぎない倫理観を持つAbelの哲学は、いまの時代、あるべきブランドの姿の一つと言えるでしょう。最近、NOSE SHOPで6mlの取り扱いが始まりましたが、少し躊躇する価格です。これを高いと感じるかどうかは、Abelのサスティナブルなモノづくりの姿勢への共感度合いによるかもしれません。
現時点でどうしても欲しい香りかと問われると悩ましいですが、他の香りも試してみたいと思えるブランドの一つであることは間違いありません。