見出し画像

さらっと西洋建築史3〜ギリシア文明の都市構成と市民生活を支えた公共施設群〜

ギリシア建築を支える土台はなにも神殿建築だけではありません。古代ギリシアでは、各地にポリスと呼ばれる都市を中心とした小国家が数多く建設されていったのです。
市民権を持った人々による自治政治が行われていたのです。
各都市には、守護神を奉る神殿の建つ神域と市民生活のための公共施設や娯楽施設が整えられていきました。
今回はギリシア建築の中でもそのように市民に開かれた公共建築について掘り下げて見てみます。

ギリシア文明の都市構成

古代ギリシアの都市は、地理的には小高い丘陵地(アクロポリス)を含む敷地が選ばれていきました。
ギリシア文明のアルカイック時代以前のアクロポリスはそこに建つ王の住まいや都市の守護神を奉る神殿の敬語のために周囲を堅固な壁で囲んだ城塞でした。
紀元前6世紀末、王政から貴族制を経て古代民主制が確立すると、アクロポリスは神殿が設けられた神域となり、都市における宗教の中心地へと変化していきます。また、ギリシア市民の都市生活の基盤となるアゴラには、神殿をはじめ、役所、議会場、裁判所などの行政機関、公共施設として泉や水路、図書館、さらに商業などの様々な施設が設けられた広場で人々が集う知的・芸術的交流の場となっていきました。

ギリシアの諸都市は、神域としてのアクロポリスと市民生活の中心であるアゴラが中核となって形成されていったのです。

画像1

丘の上に建設されたアクロポリスとアゴラ 写真:wikipedia

今でも生き続けるギリシア文明の公共施設

アゴラの建築群の中でも特に、劇場とストアは市民生活の中心施設として、交流の場として大いに賑わっていました。現在でも残っているものとしてはエピダウロスの劇場やアッタロスの柱廊が有名です。

画像2

エピダウロスの劇場 wikipedia

エピダウロスの劇場は保存状態がとても良いため、現在も使用されています。音響効果も素晴らしく、円形の舞台(オルケストラ)の直径は20m、斜面を利用した同心円状に並ぶ55段の石造座席は1万5千人もの観客を集客することができます。舞台背後には舞台背景兼楽屋も設置されています。

画像3

アッタロスの柱廊 写真:wikipedia

アッタロスの柱廊は表側が列柱廊で奥側が部屋になったI字型など細長い単純な平面形態で構成されています。建物は2階建で一階外側柱はドリス式、2階外側柱はイオニア式で作られているのが見てとれます。
屋根がついた開放的な建物であったため、商業用店舗や催し物の客席、日除けなど必要に応じて使い分けができるフレキシブルな空間として市民に活用されてきました。

秩序と調和を重視するギリシア人にとって心身ともに健全であることが理想的な市民に求められる条件でありました。
このような健全な市民生活を保障する都市施設は重要な存在であり、今でも保存状態の良いものは市民に愛され活用され続けているのです。

建築に関して様々に情報を配信していけたらと考えています。 興味を持っていただける記事作成のため、ご要望や質問等も随時承っております! 何かありましたらkn@archlife.jpまでよろしくお願いいたします!