南砺の家について
美里の家の投稿に引き続き建築を建てきるまでの思考の流れを書いていきます。
今回は富山県に建てた南砺の家です。
1.施主の要望、状況分析等
まずは施主の要望が第一です。
いろいろありますが今回の住宅の大枠は以下の3つです
・コンパクトで動線計画の優れた家
・木の素材感を生かした木造の家
・必要スペース:LDK・主寝室・子供部屋・カーポート・水回り
次に、計画敷地についてです。
計画敷地の中にお客さんの要望の実現性を検討していきます。
初めて敷地に行った時はとても驚かされました。
広がる田園風景、山並み、これらの景色をいかに建物に組み込むかに注力していったことをよく覚えています。
計画地は砺波平野にあります。山々からの吹き下ろし風が年中降り注ぐと同時にその風を受け入れるような建物を考えました。
また、住宅街に立ち並ぶカーポートの風景が気になりました。
カーポートが立ち並ぶことで単調な街並みが生まれています。
施主の要望からもカーポートの要望もあったためこの2つの現状をいかに1つの建物に組み込んでいくのかを検討していきます。
2.建築の振る舞い方の検討
コンパクトな住宅であるというメリットを生かし、建物は平屋で抑えることで小さな敷地に建つ住宅にありがちな建物の圧迫感をまず防ぎます。
その上で街中にあふれるカーポートのデザインを意識しながら、周辺環境に馴染むように建物計画に取り入れ全体をまとめていくことを考えました。
模型とスケッチによって検討していき構造計画と平面計画を同時に検討していきました。
結果的にできた平面図です。
施主の要望する快適な動線、必要居室を単純な構造計画を意識しながら計画を進めていきました。
施主の要望である木の素材感を表していくことで必然的にコストが上がりますが、構造計画を単純化してデザインしていくことで必要以上のコストアップを防いでいます。
屋根の架構模型です。
モックアップも作成し、実際に施工できるかも検討しています。
架構計画はカーポート車1台分の幅普及サイズ、2.7mを1グリッドとし、それを徹底し反復しています。梁は120×270サイズで統一。
グリッドを横断する大きな火打はその半割り、60×270サイズを製材することで部材ロスを減らし、経済効率の良い架構形式を実現しています。
模型で作った建物に均質な屋根架構を建物にふわりと掛けてみます。
建物の根幹が出来上がりました。
3.完成した建物について
この写真からカーポートのデザインを意識していくことで特徴的な建物が違和感なく街並みに馴染んでいることがよくわかると思います。
車庫(カーポート)も建物と一体として考えていくことで軽やかなデザインが作ることができたと考えています。腰壁はモルタルで仕上げ、積雪から建物を守ります。
大雪時には、腰壁が雪で沈み、躯体と屋根だけがふわりと白い世界に浮かぶ姿をイメージし計画を行なっていきました。
考えてきた架構が風景と一体になって1つの景色を作っています。
この住宅では施主の方々もとても熱心に、建物を立てる過程を本当に楽しんでくれていたのが印象的でした。
思い入れのある建物ができ、生活を楽しんでいただいていることに設計者として強く喜びを感じています。
→南砺の家