意匠法改正で建築設計はどう変わるか考える

2020年(令和2年)4月1日から改正意匠法が施行されました。僕はこのことを前日くらいにtwitterで知って、へーそうなんだと思ってたんですが、ちょうど時間あったので特許庁のPDFみたり、vuild主催のzoom勉強会に参加して概要を確認するとかなり重要な内容だったので危機感を持ちました。
その辺りをざっくりまとめていきたいと思います。
まず、今までは建築の意匠をどのように主張していきたかという部分が分かりやすかった記事を紹介します。

今までは、建築物に意匠権の設定がなかったので、不正競争防止法、著作権法、商標法などを使ってその権利を主張してきたようです。
(CCCが代官山ツタヤの外観を立体商標として登録しているのは興味深いです。)

あとは今回「画像」も意匠権が設定されたようでUIもその対象になります。
これはHPを持つことになるだろう設計事務所も関係するのでこっちも重要ですがこの話は論点がずれるので記事の紹介のみにしておきます。

特許庁のPDFは割と分かりやすかったので詳細知りたい人は一読をお勧めします。僕も全部しっかり読んだわけではありませんが。。

この資料をもとに勉強会では説明がされていたので、ざっくりと内容を説明しつつ個人的に重要そうなところを追記して、これから設計事務所はどういうことを考えないといけないかの所感につなげたいと思います。

改正内容など

・今回の改正は明治以来120年変わっていなかった部分が変わる大きな改正
・今までは不動産は対象じゃなかったのが、建築全般、内装が対象になる
ただ、組み立て家屋は対象だった。(ヘーベルハウスのようなもの)
不動産じゃんと思いますが、おそらく工場で部品を作ってそれを組み立てるものは半分工業製品のようなものだからだと思われます。
・全体だけでなく部分でも申請が可能
・登録は正直早い者勝ちで、シンプルな意匠も認められる可能性がある。4ヶ月後くらいから認可出始めそう。
・申請時にすでに建っているものに対しては意匠権を行使できない。
なので、今ある建物内装は心配しなくてよくて、これから作るものが関係してくる。
・もし意匠権侵害したら刑事罰もある。結構重い。建築や内装の場合、最悪壊す上に金も取られる。

・すでに申請されている意匠は特許庁のj-platpatで確認できる。
申請者(積水ハウス、旭化成ホームズなど)、分類(組み立て家屋、組み立て温室など)などで検索可能。

そこで自力で調べるか、(申請しようと思う分類の中で近いものを確認する感じになるのかな。)弁理士に依頼してすでにある意匠かどうか鑑定を依頼できる。
・意匠権は年使用量がかかる1〜3年目8500円、4年目以降16900円(結構高い)

設計に関係しそうなこと

「ブランドイメージとインテリアの意匠」
前職がアパレルや飲食などの店舗設計が多く、ブランドのあり方などまで一緒に考えていくスタンスだったので、インテリアの意匠とブランドイメージの関係というのはすごく重要だと考えます。例えば、デサントブランやズッカなどある程度デザインコードが決まっていて、それらを用いて店舗展開していくタイプのものは申請はマストになるだろうと思います。すでにこれらのインテリアは有名なので、誰かが真似をしてそれを申請し、認定されるということはないとは思いますが、審査員がインテリアに知悉しているとも限らないのでもし通ってしまうと、もう次の店舗では使えなくなってしまいます。なので、今からでも申請することも選択肢の一つかなと思います。これは企業が判断することですが。
そして、これから一緒にやっていくブランドで新しいインテリアを考えている場合は申請の必要があると思います。基本的には施主の責任で進めていくことだとは思うのですが、設計した意匠がすでに登録されていた場合(これは知っててやったかどうかは関係ない)設計はやり直しになるわけですが、その時の費用は誰が出すのか、設計側の責任になってしまうのではないかというところが問題です。つまり、設計側にも意匠権に関するリテラシーと実務能力が必要になってきます。外注できれば良いですが、小さいブランドや個人経営の店舗などは予算も少ないことが多いので難しいと思います。
そこで、ポイントになるのが「創作非容易性」という言葉です。

「創作非容易性」
特許庁の資料の34Pのタイトルですが、創作非容易性とは、「誰でも思いつくかどうか」ということで「誰でも思いつかないもの」であれば意匠として登録できることになっています。
つまり、「誰でも思いつくもの」であればそもそも意匠の登録ができないので、意匠権の侵害にもならないということです。
ここでは公知(周知)のものの「置き換え」「寄せ集め」「配置の変更は」意匠の登録ができないとあります。
施主や自分の懐事情に合わせて、鑑定をして意匠をガシガシ進めていくか、公知のものの組み合わせを意識して意匠を考えるかのような、意匠権を意識した前提が出てきてもおかしくないと思います。
逆に、意匠権の侵害を言われた時に、公知のものの組み合わせであることと言えれば侵害にならないのであればその為の理論武装が必要だと思いました。

上記の内容で僕は建築設計、インテリア設計を取り巻く状況にかなり影響を与えるのではないかと思っています。まずは、数ヶ月後にどういう意匠が登録されているのかなどは確認していきたいなと思いました。


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