令和の時代の家づくり〜注文住宅の理由〜
マクロデータで見る、注文住宅の現在
最新の国土交通省「住宅市場動向調査」令和4(2022)年版報告書から、令和の家づくりを俯瞰します。
選択理由から見える世帯の特徴
建て替え以外の住宅の取得は、注文住宅を建てる、新築分譲住宅(マンション)を買う、中古住宅(マンション)を買う、の5択のどれか。
様々な選択肢がある中、取得者はどのような理由でその住宅を取得するに至ったか(グラフ1)。
取得した住宅「注文住宅」「分譲戸建(建て売り)」「分譲マンション」「中古住宅」「中古マンション」別の選択理由を見ると、志向の違いが鮮明になります。
・分譲戸建を購入した世帯は「新築」「戸建」が欲しかった
・新築分譲マンションを購入した世帯は、「新築」「立地の良さ」「マンションだから」を評価した
・中古住宅を購入した世帯は「戸建」と「価格」がキメ手だった
・中古マンションを購入した世帯は「価格」と「立地」で選んだ
新築の分譲住宅(マンション)を購入するのは新築志向の強い世帯。
中古の分譲住宅(マンション)を購入するのは、価格志向の強い世帯。
戸建よりマンションを購入するのは、立地環境を重視する世帯。
いずれも明確な志向のもと、それぞれの選択がなされたことがわかります。
注文住宅世帯の理由は「信頼できる業者だから」?
では「注文住宅選択世帯」はどうかと見ると、他の世帯と比べて全体のスコアが低めで、最も多い理由が「信頼するメーカーだから」。
「そこ?」と言いたくなる、いささか拍子抜けする理由がトップになっています。
業者への信頼は大手ハウスメ−カーの長年にわたる広告・ブランディングの影響が大きそうですが、「新築だから!」「価格が適正だから!」「立地が大事!」など内在的な志向性に基づかない他動的な理由です。
逆に「新築」「価格」「立地」「戸建」など、他の世帯が強い動機としたキーワードはいずれも最下位で、注文住宅世帯は、住宅取得に至る動機が他の世帯とは大きく乖離するようです。
注文住宅を取得した世帯のモチベーションは、どこにあるのでしょうか。
高気密高断熱、デザイン、安全性
調査項目の「設備等に関する選択理由(グラフ2)」を見ると、注文住宅世帯の志向が見えてきました。
他の世帯の選択では「間取り・部屋数が適当だから」と「面積(住宅の広さが十分だから)」が双璧ですが、注文住宅世帯のトップ3は
「高気密高断熱だから」
「住宅のデザインが気に入ったから」
「火災・地震・水害などへの安全性」
他の世帯では10~20%程度に止まる「高気密高断熱」「安全性」が、注文住宅世帯で、50%を超える高い支持があります。
ここに分譲住宅やマンションなど家を「買う派」と、家を「建てる派」の大きな違いがあるようです。
分譲や中古で家を「買う派」の選択理由は、新築、戸建(マンション)、部屋数、価格など、住宅の外形的な充足を求める世帯が多数派です。
一方の注文住宅を「建てる派」は、高気密高断熱や安全性など、住宅取得後の快適感や家の基本性能など「住み心地の充足」を求めているようです。
長期優良住宅認定、省エネ設備の有無
その実効性を担保する「長期優良住宅」の認定を、注文住宅を取得した世帯の50%以上が受けています(グラフ3)。
また高気密高断熱の必須項目である「ペアガラスサッシ」の導入率は80%を超え、太陽光発電も40%超が設置しています。
いずれもコストアップにつながりますが、住宅の質も上がる選択です。
注文住宅を選択した世帯が住宅に求めること。
それは高い機能性と、デザイン・安全性など心理的な満足、言わば住み心地を求める選択でした。
「信頼できる業者だから」がトップの意味
注文住宅取得世帯の選択理由トップは「信頼する業者だから」。
他の世帯と一線を画す理由は、高気密高断熱や安全性のハイスペックを供給できる業者への信頼と、言い換えできるかも知れません。
つづく
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。
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