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【支援先インタビュー】ZAICO、クラウド在庫管理システムの今後の事業構想(後編)
クラウド在庫管理システムを開発するZAICO社は、2024年11月6日にシリーズAラウンドで3億円の資金調達を発表しました。
前編では、ZAICO社の創業の秘話からArchetype Ventures(アーキタイプベンチャーズ)の新しい投資スタイルまでについての対談インタビュー内容でした。後編では、なぜATVから出資を受けたかや、ZAICO社の未来について語りました。
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なぜZAICOへ投資したか?
ー事業環境としては追い風で、広く深く刺していくためのプロダクトを作れるチームという確信が持てた
Archetype Ventures(以下、ATV):在庫管理システムには以前から様々な企業が参入している領域ですが、その中でZAICO社に投資しようと思った背景は何だったんですか?
野村美紀(以下、野村):まず、事業の全体を俯瞰したときに、この在庫管理という分野は大きな変わり目にあると思っています。物流チャネルが多様化し、資材コストや人材コストが上がり、これまでどんぶり勘定でやってきた企業もいよいよ採算を意識せざるを得ない状況がどんどん顕在化してきていると思います。在庫管理は、各業界ごとに特化した要素がありつつ、数多くの企業に適用されるインフラ的な役割があり、広くかつ深く取りに行く必要があります。様々なバックグラウンドや世代の方が関わることを考えたときに、圧倒的な操作性で横に広く取りに行く攻め方と、業界ごとに在庫管理を高度に実現する深さを追求する攻め方の両方がセットで必要だと考えています。ZAICOのプロダクトは、田村さんのバックグラウンドやプロダクトのビジョンが強く活かされていて、これからさらに深化させていくところの思想の強さと実行力が一番の魅力でした。事業環境としては追い風で、広く深く刺していくためのプロダクトを作れるのが田村さん率いるZAICOだという確信を持ったのが投資理由です。
なぜATVからの出資を受けたか?
ー一緒に走っていけるという手触りが得られた
ATV:田村さんとしては、ATVをお選びになった理由は何ですか?
田村壽英(以下、田村):言ってみれば、株をお渡しして一心同体になるので、長ければ10年ぐらいご一緒するパートナーになると思っていて、そのときに、ATVというその会社の思想や雰囲気、それを構成する中にいるメンバーの人がZAICOの雰囲気に合うかというところを重要視しました。私たちの場合、単純にファウンダーフレンドリーなだけでなく、変曲点を作るきっかけになり得るかを見ておりました。ブートキャンプのような形で、お互いを知り、お互いの変化の量を見る場が投資前にあり、一緒に走っていけるという手触りを得られたのが決め手で、今回お願いした背景です。
今後のZAICOが目指す方向とは?
ーモノの情報のプラットフォームを完成させる
田村:在庫管理を単純に良くしたいとは、さらさら思っていません。
幼少期に遡ると、正直勉強はあまりしていなかったですが、小学校の夏休みの工作だけは、日本有数のレベルでやっていたと思います。普通の小学生では絶対できないようなレベルの作品を作り、先生や友達、そして母から「すごいね」と言ってもらうのが楽しかったのだと思います。
在庫管理ソフトを進化させて、一定の売上を上げましたということを目指しているわけではありません。私が目指しているのは、その先にあるモノの情報のプラットフォームを完成させることです。
モノの情報のプラットフォームは、この会社のビジョンでもあります。それは、モノの情報を集め、整え、提供することで社会の効率を良くするものです。これが何で構成されるかというと、最初は在庫管理でモノの情報を正確かつ鮮度高くインプットしてもらうこと、続いて集まったモノの情報を活用して受発注を行いネットワークを形成すること、最後に自動的に更新される鮮度の高いデータが高度なネットワークを作り、公的なデータとして社会をより効率的にすることにつながります。その上で、新たな商売の可能性が広がります。在庫管理ソフトは、この3つのステップの手始めの第一歩です。
ZAICOのこれからのチーム構想とは?
ー経営陣のアップデートとリモートワークが成立する組織づくりを目指す
ATV:今回の資金調達を受け、どのようにチーム拡大を進めていかれるのですか?
田村:結論から言うと、大きく変えていかなければならないと思っています。今まで大切にしてきた会社としての方向性や、プロダクトを中心とした思想は大事にしつつ、私が社長として進めてきたものをさらに越えていかなければ、これ以上の進化はないと思っています。なので、ZAICOの変曲点を作っていく上で、各方面で常に自分の発想を刷新してくれるプロフェッショナルの方々を集めていくことが第一優先だと思っています。
ATV:優先度高く採用したいポジションはありますか?
田村:いくつかありますが、まずは事業戦略を一緒に考えられる方と、プロダクト構想の肉付けをしていくプロダクトマネージャーです。今まで私が一部やってきた部分はありますが、今の大きな構想を実現するには、自分一人では力不足だと感じています。まずは、今の経営陣をアップデートするところから始めないといけないと思っています。
ATV:現在フルリモートの会社と伺っていますが、それは変わらず続けていくのですか?
田村:フルリモートは、明確にやりきりたいと思っています。それは上場するまで、そして上場後もやりきれると思っています。リモートワークはオフィスに集まるよりも、基本的に効率性といった部分では劣ると思います。ただ、そのトレードオフを最小化する方法を常に探ってきており、リモートワークによって得られるメリットはかなり大きいと思っています。日本各地にいる優秀な方々、ともすれば埋もれてしまいがちな人たちとしっかり働けます。ZAICOは実際にそういった方々から、これまでも大きな助けを得てきました。今後も人手不足が続く中で、ZAICO独自の生態系が有利に働くだろうと思っています。
一方でリモートワークの良くない部分も絶対にあると思っています。コミュニケーションが疎かになる部分は、要所要所で直接会いに行ったり、ちょっとした集まれる場所を作ったりして、リモートワークが成立するための発明を繰り返していくことが必要だと思っています。その隠れたノウハウは、おそらく競争優位性の一つになると思います。
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ZAICOに期待していること
ー日本を代表するインフラ的な存在になってほしい
野村:もう期待しかないです。ZAICOはまさに今、変曲点を迎えていると思います。起爆剤として、田村さんのおっしゃった構想をしっかり実現し、日本を代表するインフラ的な存在になってほしいと心から思っています。そのために、これから田村さんや今のチームが進化をし、変化していくところをすごく期待しています。爆伸びしてください!それだけです!
ATVに期待していること
ー黒船になって良い意味での圧力やフィードバックをお願いしたい
田村:この表現が適切かどうかわかりませんが、ぜひその黒船になってほしいと思っています。伊豆大島時代を含めてのんびりと進めてきた時期が多かったと思います。個人的には、実は後悔していることがあり、本来は自分たちで変わる力を当然持ってやらなければならないのですが、一方で、歴史を振り返ると強い圧力によって変化が促されることが、物事を動かしてきた大きな要因であったとも考えています。なので、良い意味での強い圧力や、どんどん忌憚なきフィードバックをお願いしたいです。私は黒船を砲撃するつもりは全くないので、むしろぜひ来てくださいと思っているところです。
他起業家へのメッセージ
ー身近なお困り事にシンプルに寄り添うことで、必ず商売の種があります
田村:例えば、在庫管理の分野に他の方が挑戦すると言っても、なかなか二の足を踏むと思います。私でもそうです。一定成熟した市場で競合が多かったりする分野では、在庫管理に限らず挑戦を難しく感じることがあると思います。ただ、分野はどうであれ、意外と自分の身近なお困り事にシンプルに寄り添うことで、必ず商売の種があります。お困り事の大きさが最初は小さく見えても、後から実は大きいと気づいたのがZAICOのパターンです。なので、身近なきっかけから世の中の色んなお困り事を拾って、それを解決していったら、いくつかのパターンはすごく大きなビジネスになることがあると思います。テーマ選定には流行もありますが、案外自分の身近なところにある課題に取り組むと熱量が傾けやすく、つらいことがあっても頑張れるので、非常におすすめです。振り返ってみると、会社のビジョンを創業当初はそこまで重要視していなかったのですが、それ自体が経営戦略として差別化になると思っています。初期の思いやビジョンが、単なる在庫管理ソフトではなくてインフラになると繋がったように、一定の時間をかけてしっかり考えることで、後々すごく大きく跳ね返ってくると思っています。
以上、ZAICO社の田村氏との対談インタビューでした。
全体を通して、圧倒的な操作性を生み出すためのプロダクト開発への注力や、リモートワークへのこだわりなど、ZAICO社のユニークさが垣間見られる内容でした。また、創業の背景や資金調達への向き合い方についても具体的にお話しいただき、これから資金調達を志す起業家にとっても有益な内容になったのではないかと思います。田村氏率いるチームが、今後さらにツールを超えた価値を提供していくことで、ZAICOの爆発的な成長に繋がると期待しています!
ZAICO社、採用強化中!
ZAICO社は、今回の資金調達を受けて採用を強化していきます。ぜひ採用ページをご覧ください!
起業家の方へ
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