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【フランス】ローマの中空十二面体
場所:サント・クロワ美術館、ポワティエ
時代:ローマ帝国時代(1~4世紀ごろ)
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この奇妙な金属製の物体(Dodecaedro Romano)は、1739年にイギリスの原野でローマコインとともに発見されてから現在までに、少なくとも120個ほどが北はイギリス、西はスペイン、東はハンガリーと、旧ローマ帝国領内の広い範囲で出土しています。特にフランスとドイツで多く見つかっているようです。それらは4cmから11cmと大きさに差があり、ほとんどは12面体でそれぞれの面に穴が開いていて、角にはそれぞれ丸い突起が付いています。多くは金属の青銅製ですが銅や鉛製のものもあり、中には石でできたものもあって、穴や突起がないものもあるそうです。
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さて、その用途については当時の文献には全く記録がなく、サイコロのような玩具であるとか、測量に使う道具とか、天体観測による農作業のためのカレンダーであるとか、衣類(手袋)の編み機として使われたといった様々な説がありますが、未だはっきりわかっていません。
各種の説の中で有力なものが、占星術やそれに関わる儀式で使用されたのではないかというものです。というのも、1082年にジュネーブで発見された個体には、12星座のラテン語名が刻まれており、またこれらの発見場所が帝国の特定の地域(ガリア北西部とゲルマニアあたり)に集中していることから、ケルトやガリアの宗教的な影響を受けているのではないかとも言われています。2022年、ベルギーで発見されたときに調査した博物館学芸員は、おそらくキリスト教以外の宗教が排斥された中で、密かに行われた異教的活動に使用されたもので、そのため文献上の記録が残っていないのではないかと推測しています。
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今回この物体は、ポワティエのサント・クロワ美術館で展示されていました。ヨーロッパの考古学博物館ではローマ時代の発掘品は石碑や石像、工芸品など種類も数も多く、割と地味な展示がほとんどなので、この時代に特別に関心がある人以外はほとんど素通りしているのではないでしょうか。かく言う自分も、以前どこかの博物館で同じものを見た記憶があるのですが、どうしても思い出せません。およそ120個も見つかっているということは、謎の物体ではあっても特に珍しいものではないようです。これまでに撮りためた写真を見返してみましたが、やはり見ただけで素通りしてしまったようで、残念ながら撮っていませんでした。
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