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社会的な繋がりの欠如はフレイルドミノの始まり!?
社会的な繋がりが乏しいと、フレイルや要介護状態になりやすい可能性があります
近年、ニュースや新聞でも見聞きする機会の増えてきている言葉の1つに、「フレイル」という言葉があります。今回はフレイルの中でも、専門家が注目している「社会的フレイル」に焦点を当てます。また、フレイルは社会的フレイルから連鎖的に生じるとの見解もあり、この現象は「フレイルドミノ」と提唱されています。私たちが、フレイルドミノの進行を予防するためにできることをボランティア活動などの社会的活動の効果を含めてご紹介していきたいと思います。
社会的フレイルとは?
フレイルの概要に関しては、当サイトの『「フレイル健診」が令和2年度からスタート!!-高齢者の特性とは??-』で、歳を取るにつれて体力や回復力などが低下した状態と、紹介しています。
フレイルは、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的フレイルのみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的フレイル、さらには一人暮らしであることや経済的に苦しい状態、外に出る回数の減少や地域活動への不参加などの社会的フレイルを含む概念です。
最近の研究では社会的なフレイルが身体的なフレイルを引き起こし、最終的に要介護状態や死に至ると報告されています(参考文献・参考資料①、②)。
社会的フレイルの評価には様々なものがありますが、ここでは比較的質の高い研究結果から導き出された定義の1つをご紹介いたします。(参考文献・参考資料①)
■ 独り暮らしである(はい)
■ 昨年に比べ外出頻度が減っている(はい)
■ 時々,友人の家を訪問している(いいえ)
■ 家族や友人の役に立っていると思う(いいえ)
■ 毎日だれかと会話している(いいえ)
という5つの質問で構成されており、この中で()の答えが1つでも当てはまれば、社会的フレイルの一歩手前で黄色信号、2つ以上で赤信号の社会的フレイルと診断されます。
社会的フレイル(2つ以上)と診断された方は1つも当てはまらない方に比べ、1.7倍も要介護状態あるいは死に至りやすいとも報告されており、後述するような社会的活動を積極的に行う必要があるという結果といえるでしょう(参考文献・参考資料②)。
ではなぜ、社会的フレイルが要介護状態や死に至りやすい状況を導くのでしょうか。
フレイルドミノとは?
フレイルはドミノのように進行していく可能性があるとのことから、「フレイルドミノ」という概念が提唱されています。これは、まず、社会との繋がりが薄くなることで、だんだん閉じこもりがちな生活を送るようになり、徐々に食欲が低下し、栄養不足をきたし、体重が減っていき、最終的には転びやすい身体になっていくことを表しています。(参考文献・参考資料③)
(参考文献・参考資料3より編集部作成)
このドミノが倒れていくと、要介護状態になりやすいことや健康的に長生きすることが難しいのはイメージしやすいかと思います。
実際に1,200名の日本人高齢者を4年間追跡した研究によると、社会的フレイルの高齢者はそうではない高齢者に比べ、4倍身体的フレイルになりやすいことが報告されています。(参考文献・参考資料④)
また、2017年度の国民健康・栄養調査より、週1回も外出を行わない男性は外出している男性に比べ、痩せている方が多いことが明らかになっています。(参考文献・参考資料⑤)
(参考文献・参考資料5より編集部作成)
社会的フレイルは予防・改善できるのか
フレイルは「可逆性」つまり回復が期待できる状態と言われています。そのため積極的に社会参加を行うことでフレイルドミノの進行を遅らせる可能性があると考えられます。
例えば高齢者が週1回、幼稚園~小学校までの子供に対して絵本の読み聞かせを行うといった世代間交流をすることで、高齢者の知的能動性(好奇心のようなもの)やバランス能力の改善、あるいは低下の抑制が認められています(参考文献・参考資料⑥)。
また、趣味としてスポーツを継続することも心身に様々な好影響を与えることが報告されており、当サイトでも「定年を迎える父親にオススメしたい!ー健康に良いスポーツ5選ー」で紹介いたしました。
定年を迎えた皆様一人一人の生活機能や価値観に合わせた社会参加活動(ボランティア活動、趣味、近所づきあいなど)を行うことが、社会的フレイルの予防、ひいては要介護状態の予防、健康で長生きをすることに繫がると考えられます。
まずは、先ほどご紹介した5つの質問をチェックしてみて、ご自身の現状を確認してみましょう。そして、ご自身が無理なく続けることができる社会活動をできる限り長く続けることが日本にとっても、あなたにとってもいい影響を与えると多くの研究が裏付けています。
感染症の流行には気を付けて
今まで、地域との交流やボランティアといった社会的な繋がりが、高齢者の健康を維持するのに大切であることをご紹介いたしました。
しかしながら2020年4月現在、我が国を始め世界的な規模で感染症が流行しております。本邦でも不要不急な外出は自粛するよう呼びかけており、今回お伝えしたような社会的交流も控える傾向にあります。
ポイントは「密集・密接・密集」の「3密」を避けること、そして、十分な感染対策(手洗いうがい等の標準予防策)を徹底することです。そのうえで、自身の健康状態(体温や自覚症状など)と身体の状態(フレイルかどうか)を見極めつつ、可能な限りの社会的な繋がりを意識してみましょう。
例えば、先ほどお伝えした社会的フレイルの5つの項目のうち、「家族や友人の役に立っていることがある」は、3密を避けつつも意識して取り組むことができそうです。外出の自粛に伴って人との交流が減ってしまいがちな今だからこそ、誰かのためにできることを再認識する時間に当ててみてはいかがでしょうか。
Point 1.社会との繋がりを失うことがフレイルドミノの始まりといわれている
Point 2.社会的フレイルとは、外出頻度の減少や地域活動への不参加など社会的な繋がりが乏しい状態であること
Point 3.生活機能に応じた社会参加活動で身体的にも精神的にも健康で居続けよう
▼参考文献・参考資料1:Makizako H, et al : Social Frailty in Community-Dwelling Older Adults as a Risk Factor for Disability. J Am Med Dir Assoc 16 : 1003. e7-11, 2015.
▼参考文献・参考資料2:Yamada M, et al. : Social Frailty Predicts Incident Disability and Mortality Among Community-Dwelling Japanese Older Adults. J Am Med Dir Assoc. 19(12). 1099-1103, 2018 Dec.
▼参考文献・参考資料3:飯島 勝矢:高齢者と社会 (オーラルフレイルを含む). 日内会誌 107:2469~2477,2018.
▼参考文献・参考資料4: Makizako H, et al : Social Frailty Leads to the Development of Physical Frailty among Physically Non-Frail Adults: A Four-Year Follow-Up Longitudinal Cohort Study. Int J Environ Res Public Health. 10; 15(3), 2018.
▼参考文献・参考資料5: 厚生労働省.国民健康・栄養調査:外出の有無別、低栄養傾向(BMI20以下)の者の割合 - 年齢階級、外出の有無別、人数、割合 - 総数・男性・女性、60歳以上 (2020年3月29日閲覧)
▼参考文献・参考資料6:Sakurai R, et al. Long-term effects of an intergenerational program on functional capacity in older adults: Results from a seven-year follow-up of the REPRINTS study. Arch Gerontol Geriatr. 64; 13-20, 2016.