ハスキー雲台のカスタムパン棒を、限界突破でさらに魔改造してみた
ハスキー雲台のパン棒には、スタジオJinが販売している「ウッドパン棒」というカスタムパーツがあります。
価格は2本で税込13,200円と決して安くはありませんが、肌触り・形状・握り心地は100点満点で、非常に満足度の高いパン棒です。
しかし、私の撮影スタイルにおいて1つ不満がありました。それは天然木の美しい「色」。
皮肉にもこの鮮やかで美しい木目が、商品撮影において反射や写り込みの原因となり、時に私の撮影の邪魔をするのです。
黒いパン棒へのカスタム構想
「グリップの色を黒くしたい。しかも美しく!」という思いが芽生えました。
単に塗装して黒くするのではなく、どうせならば格好いいオリジナルをさらに格好良く仕上げてこそ、このカスタムには意味があります。
「格好いい黒」と言っても様々で、日本の伝統色だけでも「檳榔子黒(びんろうじぐろ」「漆黒(しっこく)」「濡羽色(ぬればいろ」「呂色(ろいろ)」「墨色(すみいろ)」「黒橡(くろつるばみ)」など黒色にも様々あります。
上の中なら「漆黒(しっこく)」が有名ですね。
「漆黒」とは「うるしを塗ったように黒くてつやがあること。また、その色。」と明鏡国語辞典に書かれていますが、一般的な漆黒という言葉の使われ方としては、黒の中でも最も暗い色の意として使われることが多く、「漆黒の闇」のように光が一切存在しない世界をイメージさせる「黒」や、漆器のつやのある「黒」といったように、情緒的な表現方法として用いられています。
幸いなことにウッドグリップの素材の「欅」(けやき)は、漆器の素材として 最高級にして最適だそうです。漆塗り良さそうですね!
日本三大漆器
現在、伝統的工芸品に指定されている漆器の国内産地23のうち、石川県が3つも指定されており、漆器の産地として非常に有名で「日本三大漆器」にも石川県から2つ(山中塗/輪島塗)入っています。
石川県はもともと、欅(ケヤキ)や翌檜(アスナロ)など木地に向いた種類の木が多く、鎌倉時代から漆器がつくられていたといわれており、特に輪島塗は丈夫で美しいという事です。
漆塗りのメリット・デメリット
漆塗を採用するにあたりメリット・デメリットがあります。
メリットは、酸・アルカリ・塩分・アルコールに強い点です。
また耐水性、断熱性、防腐性が高い点も雲台向きのメリットと言えるでしょう。
対してデメリットは、漆は素材にオイルや塩分があると乾かないらしいのです。
スタジオJinのオリジナルグリップは蜜蝋を染み込ませ、ウレタン成分が少量配合されたオイルを3度掛けして浸透させたと商品ページに記載があります。そのためにまず初めに全体を研いで下地処理をする必要があります。
次に紫外線と乾燥に弱い点です。
屋外でガンガン使いたいという方には向かない塗装ということになります。
私の場合は屋内専用と割り切って使う予定ですので、特に問題ありませんが、保管する際は、直射日光を避け、柔らかい布カバーをつけておく必要がありそうです。
耐久年数
荒粉蒔絵の耐久年数はおよそ10年程度だそうです。
また雲台のグリップは手で握り込む物ですので、一般的な漆器と比較すると耐久年数はさらに短くなるかもしれません。
塗り直し修理は可能とのことです。
完成
まさに漆黒。非常に美しく格好いいパン棒が完成しました。
被写体に影響するロール軸(左右軸)のパン棒は「黒一色」。
被写体に影響しないカメラマン側のパン棒には加飾していただきました。
ご覧のように被写体への色の写り込みの影響が極めて少ないハスキー雲台と相成りました。
操作側は非常に美しい加飾の他に、クランプノブ、ハスキーのステッカー、雲台ドラムなど、被写体側とは対照的に煌びやかな見た目になっています。
もともと握り心地は最高なグリップでしたが、しっとりした輪島塗の質感によりさらに吸い付くような握り心地になりました。
一日中ずっと握っていたい心地よさです。
工房様のアドバイスに従い。紫外線対策として100円均一ショップで購入した椅子足ソックスを被せて保管することにしました。
取扱方法
ホコリや砂・海水・グリースなどが付着した場合は、柔らかい布で払った後やさしく拭き取ればOKで、直射日光と乾燥に気をつければ、特に神経質に扱う必要はない。
とのことで思ったよりも気楽に取り扱って良さそうで一安心です。
能登半島地震
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、輪島塗の工房に甚大な被害をもたらしました。多くの職人たちが自宅兼工房を失い、仮設住宅や仮設工房での生活を余儀なくされています。
さらに、同年9月の豪雨により、地震からの復興途中だった工房の約8割が浸水し、業界全体が大きな打撃を受けました。
しかし、職人たちは諦めず、仮設工房での作業を再開するなど、復興に向けた努力を続けています。また、被災した工房の再建を支援するため、東京・文京区で展示販売会が開催されるなど、支援の動きも広がっています。
このように、輪島塗の工房は地震と豪雨による「二重被災」に直面しながらも、職人たちは伝統の技を守るため、懸命に復興への道を歩んでいます。
彼らの努力を支えるため、私たちにできることは、輪島塗製品の購入や展示会への参加など、さまざまな形での支援が考えられます。
輪島塗の美しさと職人たちの技術を次世代に伝えるため、ぜひご協力をお願いいたします。