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鉱石少年と不思議なカード 2

 紅茶店ティールーム『マーシュマロウ』の窓辺に、秋の光が差し込んでいる。

 飾り棚の硝子ガラスの小瓶の中で、鉱石の結晶が、窓の光に煌めいていた。

「ご協力ありがとう、良い写真が撮れたよ」

 マリにカメラを向けていた写真家カメラマンは、数枚の写真を撮ったあと、カメラを下ろして満足げに笑顔を向ける。

 窓辺に立ち、すまし顔をレンズに向けていたマリは、抱えていた薔薇を置いて、お茶をいれるためにお湯を沸かす。

 仕事を終えた写真家に、マリが紅茶と焼き菓子をすすめると、手近な椅子にカメラを置いた写真家は、カウンターまでやって来て、紅茶を飲んで嬉しそうに一息ついた。 

 今日は、街の観光案内写真の撮影のため、紅茶店はお休みだ。
 数ヶ月ぶりに袖を通した薔薇のドレスはこの時期すこし肌寒い。肩掛けストールを羽織り直しながら、マリはこの服を着ていた、晩春のことを思い出す。

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 それは春の終わり頃、お店を訪れた不思議なお客様。

 喫茶室のテラス席で、向かい合って笑う少年たち。妹と同い年くらいだろうか、この辺りでは見かけない、時代がかった服装をしていた。

『おいしい! それにすごく綺麗。ね、水晶」
 淡水色の服を着た少年は、笑顔でもうひとりに声をかける。

『うん、いい香り。庭の薔薇も素敵だね、蛍石』
 水晶と呼ばれた片割れも、にこりと笑った。
 仲の良さそうな双子だった。

 妹の丹精した薔薇の曹達水を大袈裟に褒め、嬉しそうに飲む双子に気を良くしたマリは、彼らに小さな焼き菓子までサービスしたのだった。

『ありがとう、妹が育てた特別な薔薇なのよ』
 良い気分でマリは妹を自慢した。少年たちはそれぞれ頷いた。

『緑の指の女の子だね。物語で読んだよ』
『素敵な薬草魔女になるね、きっと』
 少年たちはそう言って、お茶を済ませて帰って行った。

 彼等が去ったその後。
 テーブルクロスの上には小さな無色透明な水晶と、淡い青色の蛍石の結晶が、キラキラと光を弾いていたのだった。

 また来年も、薔薇の曹達水を飲みにおいでね。
 心の中で呟いて、マリはその鉱石を硝子ガラス壜に入れ、お店の飾り棚に置いた。

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photo: 天使匣
dress:天使匣
doll: BlueFairy 
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