鉱石少年と不思議なカード
レェス越しに、白い光が窓から差し込む、午の資料室。
朝から姿が見えず探していた、僕の双子の片割れである水晶は、机に向かって何か作業を行っていた。
「水晶、何をしているの?」
机の向かいに屈んで、僕は机の上を覗き込む。
水晶の手許には、一揃いのスタンプに、一冊のアルバムと、様々な紙片。どうやら異国の切符や郵便切手、書物の切り抜きやカードのようだった。
「ああ、蛍石。……これはね、ギャザリングブックだよ。先生が、古い資料を少し処分なさると言って、ぼくらにくださったんだ。きみも一緒に作ろうよ」
水晶が言うには、資料の中から好きなものを選んで、アルバムに集め、もらって帰っても良いのだという。興味を惹かれたぼくは、資料の入った古い匣を覗き込んだ。
航空機、船舶、異国の風景。知らない花や美しい書体。そして……。
「ねえ、水晶。この女の子、」
僕はそう言って、水晶に1枚のカードを差し出した。
「すごく古いカードだね。薔薇の蕾の妖精かな」
カードを受け取って、水晶は言った。
それは薔薇を抱いた少女の肖像だ。デザイン化された【R】の文字と、薔薇の蕾を背景に……。
その少女の面影に、僕は見覚えがあった。
「水晶、僕たち、この子に会ったよね。ほら、薔薇の曹達水のカフェにいた」
僕の言葉に、そう言えばと水晶も思い出したようだった。
薔薇の花咲く前庭で飲んだ、淡い色の曹達水。それは今年の春のこと。
カードの裏の消印は、百年以上も昔のものだった。
photo: Arcana-cica
dress:天使匣
doll: Blue Fairy
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