クレディスイス救済の禍根 | AT1債 無価値化の波紋
投資猫レイです。
シリコンバレー銀行破綻に端を発した金融不安はスイスの名門、クレディスイスに波及しました。結果的には、スイス政府主導の下、UBSによってクレディスイスは救済買収されることが決定しました。
しかし、今回のクレディスイス救済劇は資本市場に波紋を呼んでいます。
AT1債の無価値化
その波紋とはクレディスイスの発行していたAT1債が無価値化されたことです。これによって、このAT1債を保有していた投資家は大規模な損失を抱えることになりました。
AT1債とは何か
AT1債とは銀行の発行する劣後債の一種です。劣後債とは、普通の債券(シニア債)より弁済順位の劣後する債券のことです。
しかし、なぜ銀行はAT1債を発行しているのでしょうか。
簡単に言うと、預金を保護するためです。
銀行、特にクレディスイスのような国際的な大手銀行には、預金保護のために厳しい金融規制が敷かれています。この金融規制を遵守するためにクレディスイスはAT1債を発行していました。
銀行の資本構造は、上述の金融規制によって、複雑化しています。しかし、その目的はシンプルで、銀行が経営失敗によって損失を計上したときに、その損失を預金者に負担させないことです。
そのために、銀行が損失を計上したときに、誰が損失を負担するのか、その順番が決められているのです。
一般的に、具体的な順番は下の表の通りです。下から順に損失を負担していきます。
したがって、一番最初に損失を負担するのは株式保有者、その次に負担するのがAT1債保有者、その次がTier2資本(期限付き劣後債等)といった順番です。預金者による損失負担は一番最後になっています。
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