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みんなのための競技規則① スローイン

分かりやすさを重視するために、競技規則の解説より前に事例を見ています。競技規則の解説は最後にあるので、分かりづらい物をなんとか分かりやすくしようとは努力しましたので興味があればご覧ください!ロングスロー対策について少し加筆しました。

この企画を始めた理由

サッカーの世界において、世界共通かつ唯一のルールブックである競技規則。競技規則は審判だけのものだと思いがちですが、プレーをするのはもちろん選手ですし、選手のプレーは競技規則によってある種制限されています。

競技規則に関して知識がある審判員が選手や指導者の皆さんのためにできることといえば、本当にわかりづらい競技規則を実戦で分かりやすい形に落とし込むことくらいだと思います。その行いをしてみたく、またルールを有効活用することで選手・指導者の皆さんに損をしてほしくないと考え、不定期でお送りしていきます。

ヘッダーの画像に関しては、みんなのためのルールブックというこの企画に名前を使いたいくらいドンピシャの子供向けの本をオマージュしております。オマージュ元が気になる方はググってみてください(笑)

第1回にスローインを選んだ理由

それは、この記事の公開直後である2021年1月11日14:00キックオフの高校選手権で、ロングスローが議論の対象となったからです。議論云々についてはTwitterですでに意見を表明しているので、こちらには書きませんが、個人的にロングスローはルールを守るために非常に高い技術が必要なプレーだと思っています

攻劇さんがスローインの反則のことで下記のようなツイートをされています。非常にわかりやすく、競技規則の発信者として素晴らしく、先輩として尊敬している方です。

これは審判員からすると常識的な部分もあるのですが、競技規則が分かりづらく、あまり伝わっていないのだと、痛感しました。

レフェリーについて会員制記事投稿サイトを運営されている某氏が無料記事を投稿されていたので、見たところただの競技規則の抜粋でした。もちろんファウルかどうか疑問に思ったとき競技規則を参照するのは正しい姿勢だと思います。その方の記事をお金を払って以前購読していましたが、ヘッドラインにありがちなタイトルのみで中身がない誘導の仕方をして、競技規則を抜粋するのみで結局分かりづらいという姿勢は正直残念です。(私個人の考えなのでイラっとする方は無視してください。)

意外とルールを認識されていないことを痛感したこと、そして書きたいこともあったので、このテーマを選びました。

なりやすいファウルスロー① ラインを踏み越えてしまうこと

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これは攻劇さんが解説してくださった内容ですので、あまり説明しませんが、勢い余って足が完全にフィールド内に入ってしまうファウルスローは多いです。

これは年代問わずあるファウルスローで、体感的には一番多いように感じます。ルールとしては、一部でもタッチラインに足がかかっていたらセーフなので、そこは勘違いしないようにしましょう。

なりやすいファウルスロー② 足が空中に浮いてしまうこと

スライド2

こちらは、どちらかというとU-12やU-15の世代など若い年代のプレイヤーに多い気がしています

スローインを投げるときには必ず、両足の一部が地面についていなければなりません。完全に片足が浮いてしまうとファウルスローになってしまいます。指導者の皆さんは投げるときに必ず両足を地面から離さないように指導していただけると損しないかと思います。

特に、人体の構造上、図のように後ろ脚が浮いてしまう傾向にあります。後ろ脚を地面にするような感じで投げるとファウルスローになりにくいと思うので、是非そのような投げ方をファウルスローをとられがちな選手には教えてあげてくださると損しないかと思います。

なりやすいファウルスロー③ 頭の上を通過せずに投げること

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スローインは、ボールを頭の後ろから頭の上を通過させて、前に両手で投げることがルールで決まっています。

よくあるファウルスローとして、頭の前からチョンと投げてしまう反則が多くあります。実は、これJリーグでは見逃されることが多い投げ方です。厳密に取るとゲームが面白くなくなるからだと思います。

一方、育成年代の試合だとファウルスローを厳密に取る審判員の方が多いかと思います。ですので、下記の手順で上半身を使うように指導してもらえると損しないかと思います。

①頭の後ろからボールを通す

②頭のてっぺんのうえを通過させる

③頭のうえを通過した後両手で、体の正面に向かって投げる。

【GK・DF向け】ロングスローが直接ゴールに向かってきた時の対処法

浦和レッズジュニアユース対鹿島アントラーズつくばジュニアユースの試合での出来事です。(とんさんがご紹介されていた事例です。上記動画が当該シーンの時間に設定されています。)

このシーン浦和レッズジュニアユースの6番の選手がロングスローを投げています。そのボールが誰にも触られず、ゴールぎりぎりまで行きます。そして、鹿島アントラーズつくばジュニアユース4番の選手がクリアしようとして、ボールに触れたか触れていないかくらいの感じで空振る形になっています。

このシーンもし、鹿島アントラーズつくばジュニアユース4番の選手が、ボールに触れていなかったら、ノーゴールでゴールキックになります。

触れたかどうかは本当に微妙ですので、その判断は主審の方を尊重すべきですし、今回は議論しません。

しかし、鹿島の選手がクリアする素振りを見せなければノーゴールになっていたシーンです。

スローインで投げられたボールがゴールに直接向かってきた時には、触れないように判断しましょう。そうすれば不用意な失点は防げるので、指導者の方は是非選手にルールを教えてくださると損しないかと思います。

【MF・FW向け】スローインはオフサイドがない

これに関しては、ほとんどの皆さんが知っている内容ですが、スローインからボールを受けたときはオフサイドの反則が適用されません。ですので、もしスローワーが長いボールを投げれるとき、前線の選手は極端に言えばゴールラインに位置してボールを受けようとするのはありです。

もし、攻撃側が深い位置を取っておくと、DFはマークするようになるため、おのずとラインは下がります。ラインを上げるのには時間がかかるので、その時間を有効に使えます。なので、ロングスローワーがいるのであれば、1枚深い位置のFWを置いておく戦術は間延びにつながり有効だと思います。是非、指導者の方々実践してみてはいかがでしょうか。

今話題のロングスロー対策

ロングスローに対して、FKのように壁を作ることは可能です。しかも、FKのときの9.15mよりも近い位置に壁が作れます!

スローインのときに作れる最も近い壁の位置は2mです。

2mより近づいて妨害してしまうと、妨害した選手は警告(イエローカード)を受け、間接FKになってしまいます。そうなるともっと危険なFKを与えることになり、元も子もないので、近づきすぎには気を付けましょう!

投げた瞬間に2mの距離があったらいいので、2021年高校選手権決勝の青森山田のロングスロー対策で山梨学院の選手が行っていたように、最初もう少し離れていて、最終的に2mに近づく作り方ももちろんOKです。その方が威圧感があると思いますし、賢い競技規則の利用です。素晴らしい。

競技規則の条文の解説

さて、読みづらいパートでございます。ぶつ切りにしてなるべくわかりやすく解説します。

スローインは、グラウンド上または空中でボールの全体がタッチラインを越えたとき、
最後にボールに触れた競技者の相手競技者に与えられる。
スローインから直接得点することはできない:
◦ ボールが相手チームのゴールに入った場合- ゴールキックが与えられる。
◦ ボールがスローワーのゴールに入った場合- コーナーキックが与えられる。

こちらはGK・DF向けで記したように、もし直接スローインがゴールに向かってきた時は触れないようにしましょうという部分です。味方のスローインが向かってきた時も下手に触るとオウンゴールになるので、安全にクリアもしくはキャッチする自信がなければ触らずコーナーキックにするのもありです。


1. 進め方
ボールを入れるとき、スローワーは:
◦ 競技のフィールドに面して立って、
◦ 両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグラウンドにつけ、
◦ ボールが競技のフィールドを出た地点から、頭の後方から頭上を通して両手を用いてボールを投げなければならない。

これはよくあるファウルスロー①~③で説明した部分です。片手で投げるのはもちろんだめですので、気を付けましょう。


すべての相手競技者は、スローインが行われる場所のタッチライン上の地点から2m(2ヤード)以上離れなければならない。

相手チームは2m以上スローワーから離れてください。妨害を意図的にすると、下にあるように間接FK+イエローカードになってしまい、明らかに損ですので、気を付けましょう。


ボールは、競技のフィールドに入ったときにインプレーとなる。ボールが競技のフィールドに入る前にグラウンドに触れた場合、同じ地点から同じチームによるスローインが再び行われる。スローインが正しく行われなかった場合、相手チームがスローインを再び行う。

風が強い日に、縦にボールを投げたときに、フィールドの中に入らないことがあります。そのようなときは同じチームのやり直しになります。

また、いわゆるファウルスローは基本的に相手チームのスローインになります。


競技者がスローインを正しく行い、不用意でも、無謀でも、また過剰な力を用いることもなく、意図的にボールを相手競技者に向けて投げて、はね返ったボールを自分のものとした場合、主審はプレーを続けさせる。
スローワーは、他の競技者が触れるまで再びボールに触れてはならない。

スローインは相手に当てて、跳ね返すことはできます。ただ、もしけがをさせようとすると、レッドカードで退場になる場合もあるので、基本的には避けた方が安全かと思います。

スローインは当たり前ですが、味方に出すものです。味方にわたる前に自分の足に当たったりすると、下にもあるように間接FKになります。あまりないですが、損ですよね。


2. 反則と罰則
ボールがインプレーになって、他の競技者が触れる前にスローワーがボールに再び触れた場合、間接フリーキックが与えられる。
スローワーがハンドの反則を犯した場合:
◦ 直接フリーキックが与えられる。
◦ 反則がスローワーのペナルティーエリアの中で起きた場合、ペナルティーキックが与えられる。スローワーがゴールキーパーだった場合、間接フリーキックが与えられる。
スローワーを不正に惑わせたり妨げたりする相手競技者は(スローインが行われる地点から2m(2ヤード)以内に近寄ることを含む)、反スポーツ的行為で警告される。スローインが既に行われた場合、間接フリーキックが与えられる。
その他の反則に対して、相手チームの競技者がスローインを行う。

スローインをGKがPA内で受けたとき手で扱うことはできません。手でもし扱った場合、バックパスを受けたときと同様間接FKになります。バックパスの項でも扱おうと思っていますが、もしかっさらわれて点を取られそうなくらいなら、手で取るのはありかもしれません。仮に決定機だったとしてもキーパーがスローインを手で取って防いでもカードは出ません。

まとめ

ファウルスローは結構育成年代の早い段階では多いと思います。指導者の皆さんがスローインを教える機会はあまりないかと思いますが、ファウルスローは損ですし、有効活用すると大きなチャンスとなることもあります。是非、正しいスローインのしかたや有効活用するためにこの記事が役に立てばうれしく思います。

また、ロングスローはファウルスローになることが多い反則です。遠くに投げるためには、特に足の反則(よくあるファウルスロー①と②)に意識が行かないことが多くあります。

2021年の高校選手権準決勝でもファウルスローはありましたし、ファウルスローにならないように得点につながる様なスローインを投げる選手は高等技術の持ち主ですので、そこは素晴らしいかと思います。

本日はお読みいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします

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Árbitro(あるびとろ)
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