初めての共通テストの英語:リスニング

こんにちは。札幌で英語講師をしているアラといいます。

さて前回は先日第一回が行われた共通テストの英語試験のリーディングについて書きましたので、今回はそのリスニングについて書きたいと思います。

やっぱりリスニングも難化した

リスニングもリーディングと同様難化したと思います。それもものすごく。

音声自体はゆっくりはっきりしていて聞きやすいのですが、設問が複雑化しています。前半は英文も二度読まれますし、楽に正解できるでしょうが、後半は読み上げ前の指示も入り組んでおり、戸惑う人も多かっただろうと思います。資料の内容も読みつつ、さらに耳からの情報を処理するという複合的な作業が課されていました。

特に最後の大問6のBでは、4人の人物のディスカッションが読み上げられ、登場自分物の意見の変化を追う必要があり、大変難しかったです。音声の内容を問うのではなく、最終的に人々の意見がどうなったのかが問われました。

この問題については、ちょっと形式が独特すぎると思います。はじめに設問文が読み上げられる時間があるのですが、そこで日本語音声で「意見の変遷を聞くぞ」と言っておいた方がよかったのではないでしょうか。「意見が最終的にどうなったのか」という問いは問題用紙に書かれており、音声では言及されなかったので、何が問われたのかわからないまま答えた人が多かっただろうと思います。本番のプレッシャーと時間のプレッシャーがかかっている受験生には、あまりに複雑な手順です。そうなると、ではこの問題は一体何の能力を測っているのか、と疑問に感じざるをえません。

複雑すぎ

前回、リーディングは結構褒めたのですが、リスニングはもっと素直な問題でよかったと思います。聞き取る能力以外のものを測る必要はないと思います。問題用紙からして既に複雑で、情報量が多すぎです。一見して何をすればよいのか分からないような問題はやめるべきでしょう。ただでさえ緊張している受験生にさらにプレッシャーをかけても誰も得しません。平均点を50点にすることにこだわりすぎたように思います。リスニングの得点は大学側で圧縮するのですから、基本的な難易度の方がよいでしょう。

対策どうする?

では、今後受験生はどう対策をするのが良いでしょうか。来年度は難易度が下がるかもしれませんし、公立校は圧縮率を上げてくるかもしれません。とはいっても、対策をしなくてよいはずもないですね。

基本としては、精読した英文を聞く、ということになるでしょう。とはいえ、聞き流すのももったいない、というか、聞き流しに効果があるのか、僕にはちょっと判断がつきません。私見では、効果があるにしても膨大な時間が必要だろうと思います。とても受験では間に合いません。

といって、じっと集中して英語音声を聞き続けるのはかなり難しいことです。意味がとれないとどうしても気が散ります。一度わからない言葉がでてくると、もう何もかも見失ってしまうことも多々あります。固有名詞はとくにやっかいですね。

そこで、リスニングを練習するときはテーマを設定してみましょう。どの部分を強く読んでいるかと考えながら聞き、英文に点を打っていく。どこで発音が途切れているかを考えながら聞き、英文にスラッシュを入れていく。こうやってリスニングの練習の中に、手を動かす作業を取り入れていくと集中しやすくなると思います。あまり点やスラッシュを書く場所にこだわらず(正解があるわけでもないので)続けていくとよいでしょう。

リーディングの対策でも同様ですが、あまりテストの形式にこだわらず、地力をつける意識で勉強していきましょう。

中間集計を受けて

さて、今回の共通テストの中間集計が入試センターから発表されました。英語の平均点は、リーディングが60.35点。リスニングは57.23点でした。おそらく最終的な結果とそんなに変わらないでしょう。どちらも例年並みです。リーディングに至っては前年のセンター試験よりも約2ポイント上です。

試験自体は難化した印象があるのに、結果はあまり変わりませんでした。これについては、数学の試験について言われていることですが、ダミー選択肢の練り込み不足、または練り込みすぎ、があると思います。練り込み不足であからさまなダミー選択肢が増えてしまい「なんとなく」でも結構いけた、のかもしれませんし、英語は特にいろいろあったので、平均点50点を本気で狙ってしまうと方々から文句が来そうと考えて、練りに練った選択肢で前年並みの平均点を達成したのかもしれません。あるいは、日本の高校生の実力が順当に発揮された結果であるかもしれません。

いずれにしても、大学入試センターの配慮だとか忖度だとか苦悩だとかを気にしなくていい試験を目指して欲しいものです。そのためにはどの能力を測るつもりなのか、もっと明確にするべきだと思います。

受験生のどの能力を測るのか?

英語は社会の関心が高く、そのために根拠の薄い学習法が支持を集めることもあります。ここ40年くらいずっと、学校の英語はとにかくダメで、コミュニケーションを重視したアプローチじゃないと意味がないという考えが社会に定着しているように思います。そのために学校のカリキュラムも大幅に変わってきました。しかし人間の言語はそんなに単純ではありませんし、もう何十年もコミュニケーション重視のカリキュラムになっているにもかかわらず、いまだに学校の英語はダメだ、の声が止みません。そしてその声に再び配慮するかのように、4技能だ、民間試験だと新しいことをしようとしたわけです。

言語能力をすみからすみまで測る試験など存在しません。受験生のどの能力を測りたいのか、もっとはっきりと言う必要があります。そうでなければ、対策も難しくなり、専門性のある先生に習うことができる受験生が今まで以上に有利になり、教育格差がさらに開いてしまうでしょう。その点、今回のリーディングの試験は、英文を正確に、それなりの速さで読め、しかも資料を丁寧に処理することができるかどうかを測ろうとしていたことがよくわかりました。この方向性が続けば、塾に行かない子でも受験勉強を早めにスタートすることで意味のある対策が打てるようになるのではないでしょうか。

じゃあどうすりゃいいの?

しばらくは制度の変わり目ということで、高校生の皆さんは自分から情報をとりにいきましょう。その際、攻略法のようなものに振り回されないよう注意してください。結局遠回りになります。個別のテストの対策を始める前に、しっかり基礎を固めましょう。

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