ダメだった勉強法
こんにちは。札幌は大通り駅から1分の教室で英語講師をしているアラといいます。
さて今回は、僕が英検一級をとるまであれこれやってきた勉強法のなかで、役に立たなかったなー、遠回りしたなー、と思うものを紹介しようと思います。といっても、あまり分かりやすい失敗談ではないです。もっと面倒臭い、考え方の話です。
1つ目:意味のわからない単語を調べずに読む
まず思いつくのが、「意味のわからない単語を調べずに読む」です。英語の勉強と英語テストの対策を履き違えてますね、これは。英語を理解するのが目的なのに単語の意味を調べないという矛盾に気づいていませんでした。「なんとなくわかればいい」という言葉に完全に流されていましたね、今思うと。大学生くらいまではこんな感じでした。やらないよりマシ、とかいいながら手を抜いて楽をしようとしてました。
残念ながら、日々教えている中高生にもこういう間違いをしている子は多くいます。そしてさらに残念ながら、そういう子たちに僕がいくら「単語調べろ」と言っても、なかなか真意は伝わりません。受験が迫ってきたり、模試で大失敗したりしないと変われない子も少なくないのが現実です。
テストは、勉強のモチベーションになるし大人数の知的な能力を短時間で測る最も現実的な手段ですから、間違いなく重要なものです。それでも、英語を勉強する目的はテストの点ではなく、英語を理解することであるべきです。以前にも書いた、英検二級をとっても英語ができる気がしない人が多いのは、テスト対策が中心の勉強になってしまっているという面もあると思います。選択肢問題であるかぎり、運で結構正解してしまいますし、正解はわからないけど消去法で正解しちゃうということも多くあります。これは理解度にはあまり関係のない作業ですから、この作業が上手くなったって意味がありません。
2つ目:文法用語がいい加減
次に思いつくのが、文法用語をいい加減に使うこと、です。
Trying to sweep all those fallen leaves out, he worked all day long.
という文があったとしましょう。文頭のTryingは、何と呼ばれる動詞の形でしょう? 中高生の多くは「進行形」と答えます。でも答えは、分詞、あるいは現在分詞ですね。進行形はあくまでも「be + 現在分詞」と考えなくてはいけません。
同様に、fallenは何と呼ばれる形かといえば、過去形、ではなくて過去分詞ですね。この場合、多くの子は「受動態」と答えます。しかし、態は文の中心である定形動詞の性質の一つです。あくまで「be + 過去分詞」のことである、と考える必要があります。fallenのことだけを指すなら過去分詞、と呼ばなくてはいけません。
こうやって用語をいい加減に使うので、意味がわかったようなわからないようなモヤモヤが大きくなるのだと思います。僕の場合、大学を出ても英語の勉強は続けていたので、その中でようやく用語の定義を学びました。用語の定義が曖昧でも、TOEICで860点ぐらいは取ってました。でも、自分が興味のある分野の英文がいまいち理解できた気がせず、モヤモヤしてました。そういう時に、以前も紹介した"The Grammar Bible"を読んで、長年の疑問が吹っ飛んだ気がしましたね。その後は統語論の用語や考え方を学んでいくことで、以前よりは正確に分析できるようになった気がします。
学習者のせいにできない面もある
ただ、文法用語は学ぶのが難しい面もあります。学びやすい用語の体系になっていないのです。中学3年生でならう「間接疑問」などは、学習者にとって字面が紛らわしすぎます。こういうものには学習用の用語を作るべきでしょう。たとえば「疑問詞ではじまる名詞節」とか。こういう用語の悩みは、どうぞお近くの英語オタクに聞いてください。難しい文法書を開いても混乱が深まるだけだと思います。
3つ目:単元別の文法問題集をやりまくる
役に立たなかった勉強3つ目は、2つ目とも関わりますが、単元別の文法問題集を解くことを文法の勉強だと思い込んでいた、ということです。単元別の文法問題集とは、例えば不定詞という文法事項の解説があって、その後に不定詞に関する文法問題が載っているような問題集です。こういう問題集は、もちろん初学時にはとても有用なものですし、とにかく一通りやり終えることが次に進むためには必要です。しかし、その問題を正解したからといってその単元を理解したことにはならないことに注意が必要です。
実際、中高生たちは「不定詞の問題ですって書かれているページなら正解しちゃうけど、バラバラに出されたら全く解けない。」とよく言います。さらに高校生だと、文法の理解度は入口の段階で止まっているのに、問題集のレベルだけは無茶苦茶上がっている子も少なくありません。不定詞と書かれているページなら、答えはどうせtoか動詞の原形なので、要領の良さで8割正解してしまうのです。本人もそういうのはオカシイと思って塾に来るわけですが、週一回の塾で考え方を変えていくには時間がかかります。そのうちに定期テストがやってきて、考え方なんてどうでもいい、とにかく教科書の暗記しなきゃ! となってしまうんですね。
対処法としては、文法事項がランダムに出題される問題集がいくつかあるので、それを利用するのが良いでしょう。あと、文法事項を学ぶ目的を常に意識することが大事です。その目的とは、英文を正確に理解すること、ですよね。なので、ランダムな問題集をやらなくても、英文を読む際に学んだ文法事項を利用して解釈するよう心掛ければ十分です。ただ最初はちょっと手応えがない感じがするでしょうから、受験生は手っ取り早くランダムな問題集をやってしまうのがいいと思います。(今年の受験生じゃないですよ。広く一般に受験生、ということです。今はもう11月ですから。)
高校生の頃僕は、問題集を買う時の意気込みだけはいっちょまえだったので、ムダに同じような問題集を買ってやりまくってしまっていましたね。当時はランダムな問題集があったのかどうかも分からないですけど、迂闊な子でした。文法用語をちゃんと理解するようになってからは、テスト前以外は文法問題を解くことは無くなりました。英文を読んだり聞いたりするときに文法事項の知識を利用できるなら、別に文法問題を解く必要はないのです。ただテストの形式に慣れる練習は必要です。
根っこは同じ
さて、今回は上手くいかなかった勉強法を三つ書いてみました。書いてみると、どれも本来の目的、大目標をちゃんと意識していないことからくる失敗だったように思います。つまり、英語を理解する、ことが目的なのに、英語のテストで点を取ることを大目標にしてしまうから、単語を放置して、文法用語をおざなりにし、文法事項の理解が浅くなるのです。
とはいえ、初めから大目標に向かって一直線に走っていける人なんてほとんどいませんよね。なので、多少の寄り道は気にせず、気長に勉強を続けていけばいいんだろうと思います。続けていればそれなりに上達するものですから。
で、そうも言っていられないのが大学進学を考えている高校生です。勉強の落とし穴なんて、ここで挙げた三つ以外にもたくさんありますし、人間、失敗からしか学べないところもあるので、落とし穴のいくつかには落ちておかないと次に進めないことも多いと思います。ということは、その分時間がかかる、ということです。ですから、受験をするつもりならとにかく早めに動き出しましょう。みなさんのライバルの中には、小中学校の時に勉強の落とし穴に一通り落ちて対応策を身につけている人たちもいるのです。そういう人たちは勉強の効率が半端なく良いので、周りからあまり勉強していないんじゃないかとさえ思われちゃうほどです。そういうライバルとの差を少しでも埋めるには、「早めに動き出す」しかありません。
東大など超難関大の合学者
さまざまな模試の結果をみると、超難関大はたいてい、高校3年生の2月の学力ではなく、4月時点の学力で結果が決まってしまいます。つまり超難関大の合格者の多くは、高校2年生の終盤時点でもう合格する学力があるのです。
受験の大問題は「時間をどうするか」
受験で一番難しいことは、時間がない、ということです。「早めに動き出す」しかこの問題の対処法は存在しません。ちょっと脅かすようですけどね。
勉強だけしていればいい日々
で、反面、多くの高校生が「3年生になってから」と考えているので、早めに動いた人は大変有利になります。それにね、おじさんからすると、勉強以外の高校生活って他に比べてもそんなに楽しくないよ、と思いますね。いろいろ経験してみても、やっぱり勉強のほうが楽しいです。勉強だけしていればいい日々はきっと、楽しい人生の土台になってくれると思いますよ。
では、また。