受賞事例は未来を先取りしていた~「2022愛知環境賞」表彰式から
資源循環や環境への負荷低減を目的とした先駆的な事例を募集し、優れた取り組みを表彰する「愛知環境賞」。2022年2月10日に名古屋市内で表彰式がありました。
脱炭素や自動車の電動化など急速に関心が高まっている昨今。過去の受賞事例をみると当時から環境経営を意識した企業や社会課題に取り組んだ団体がありました。
■初回の金賞はプリウス
愛知環境賞は20005年から始まっています。県内の最終処分場に産業廃棄物を搬入する場合に産業廃棄物税(2006年4月導入)を課すことになったのがきっかけといいます。共催は、環境行動に熱意のある企業・団体約260社(者)で組織する環境パートナーシップ・CLUB(略称・EPOC)と中日新聞社です。
初回の愛知環境賞の金賞受賞者はトヨタ自動車でした。ハイブリッド車「プリウス」が評価されました。
クルマに焦点を合わせてみると、2011年の金賞は三菱自動車工業技術センター(岡崎市)の新世代電気自動車「i-MiEV」でした。2016年には究極のエコカー、燃料電池車MIRAIの開発でトヨタ自動車が金賞。2017年は日本特殊陶業(名古屋市)がセラミックセンサー技術の開発と革新による自動車の大幅なCO2削減で金賞を取っています。
■受賞企業の環境対応先取り
今の社会課題につながる取り組みもありました。ワシントンホテル(名古屋市)は、歯ブラシなどを宿泊客が持参した場合、宿泊5日でクオカード500円分をプレゼントする活動を2005年から始めていました。今の廃プラスチックの環境悪化を防ぐ一歩といえるでしょう。2007年の愛知環境賞の銅賞を受賞しています。食べられる食器による「美味しい脱プラ」を事業化した丸繁製菓(碧南市)は2020年の優秀賞。いずれも取材した企業でした。
フードロスなど食品関係では、オカラ再生利用システムの構築(2006年優秀賞、INAX)や食品廃棄物を原料としたアルコール生産技術(2006年優秀賞・名古屋コンテナー)、食品リサイクルループ(2014年銀賞、ユニー)、コーヒー豆かすリサイクル(2018年名古屋市長賞、メニコン)など興味ある取り組みが続いています。
■2022年は脱炭素が評価
今年2022年は49件の応募の中から、16件が選ばれました。金賞はジェイテクト(刈谷市)とノリタケカンパニーリミテド(名古屋市)で、環境負荷の低減と脱炭素への貢献が評価されました。
■空港と農業のコラボ
個人的に関心があったのは、優秀賞の中部国際空港会社(常滑市)と農業法人とのコラボレーションです。空港の滑走路周辺に緑地帯がありますが、この刈草は年間約200㌧もあって処分に多額の経費がかかっていました。空港が地元・知多半島の酪農家に働きかけて、牛の飼料と敷料に使ってもらうことになりました。
いま飼料は輸入に頼っていますから、酪農家にとっては鮮度の高い飼料を安定して得ることができます。空港会社は、空港の刈草を食べている牛の乳製品を商品化して空港で販売できるような仕組みづくりも進めています。将来は航空機の機内食に提供する展開もあるそうです。
表彰式に出席した中部国際空港会社の犬塚力社長はトヨタ自動車出身で、ファイナス子会社の社長も経験しています。2019年には企業とソーシャルセクターが共創し、社会課題の解決を目的として、一般社団法人SCIフォーラム(サスティナブル・コ・イノベーション・フォーラム)を創設し、代表理事に就任しています。企業の社会的責任を強く意識して実行できる経営者です。
「環境」という投げかけは、実に多様な課題解決の実践例を見せてくれます。
(2022年2月11日)※2023年10月1日再掲
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