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新聞の地域版で巡る小さな旅

 終息するかと思えば、また息を吹き返す。なかなか厄介なウイルスです。
 旅心をかき立てられていたとき、オミクロン株の出現で出鼻をくじかれました。
 それならばと、購読している新聞のオンライン紙面で各地の地域版を見て、旅の気分に浸ることにしました。
 まずは、ふるさと信州から。「藤村ゆかり『揚羽屋』復活」(12月5日)という記事が目に飛び込んできました。
 揚羽屋は小諸市にある食事処で、島崎藤村の「千曲川のスケッチ」にも「一ぜんめしの揚羽屋」として出ています。1885年に創業し、2016年に閉店しましたが、東京都出身の元雑誌ライターがカフェに改装して、今年10月14日に新たにスタートさせたそうです。
 良い旅のスポットに出会えました。もう一つ。同じ紙面に南信州・阿智村にある満蒙開拓平和記念館で、2013年の開館から20万人目の来館者があったというニュースです。
 私も数年前に訪れていましたから、20万人のうちの一人です。太平洋戦争当時、満州(中国東北部)へ渡った開拓移民の証言などを集めた貴重な史料が展示され、涙なしでは見られませんでした。伊那谷は開拓移民が多かった土地なので、ローカルジャーナリズムの精神を発揮して、足繁く通いたいと思いました。
 次は足の向くまま気の向くまま。茨城県に飛ぶと、石井連蔵氏(2015年死去)の碑が除幕されたことが報じられていました。「連蔵」という名前を覚えていました。
 記事には水戸第一高校硬式野球部出身で早稲田大から社会人野球でプレーし、早大野球部の監督を務めたと紹介されていましたが、実は朝日新聞社にも在籍していました。大学生の頃、弁論大会の審査員の派遣をお願いするため、朝日新聞社を訪ねた時に応対いただいたのです。学生野球界や日米大学野球選手権の創設に尽力した、野球殿堂入りした人です。
 次は訪ねたことがない大分県です。湯布院盆地の朝霧の中を、JR久大線の赤い列車が走っている写真がありました。なかなか出会えない景色を堪能できました。
 翌12月6日は、熊本県まで足を延ばしました。サッカーJ3のロアッソ熊本がFC岐阜を2-0で破り、逆転優勝と4季ぶりのJ2復帰を決めた喜びがあふれていました。地元サポーターは大喜びです。私はといえば、岐阜県で勤務して以降、ラモス瑠偉率いるFC岐阜を応援していたので、ちょっと複雑な気持ちでしたが。
 そういえば、信州の松本山雅FCの成績も気になります。急いで「長野」(長野県版)へ向かうと、J2最下位に沈み、来季はJ3降格に。残念ですが、名波浩監督をはじめイレブンの奮起に期待したいものです。
 お腹が減ったので、美味しそうなものはないかと香川県(香川版)を訪ねると、ありました。うどんです。
 年明けにうどんを食べる食文化を定着させようと、高松市で「全国年明けうどん大会」が開かれ、15道府県から計19店が出展していました。
 年越しそばで一年を締めくくり、国産小麦のうどんで年明けを迎える。小さな旅を楽しみながら、年末年始を迎えるのも、味なものかもしれません。
(2021年12月7日)
 写真は近所の四季桜 

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