地質から読み解く大地震~「げんさいカフェ」で学ぶ
114回目の「げんさいカフェ」は、5月10日の「地質の日」にオンラインで開かれました。講師は、古地震学者の宍倉正展さんで、「古地質・古津波研究から予測する巨大地震」というテーマでした。
げんさいカフェは、名古屋大学にある減災連携研究センターの研究者らが2011年の東日本大震災以降、一般の人に災害のことを知ってもらおうと毎月、開いています。コロナ禍で最近はオンライン開催が続いています。
宍倉さんは国立研究開発法人・産業技術研究所で活断層・火山研究部門の第一線で現地調査を続けています。869年に東北を襲った貞観地震の大津波は知られていましたが、宍倉さんら調査チームは、宮城県の海岸から仙台市などの平野部にかけて地質調査を続け、過去の堆積物から津波の痕跡をデータに記録していきました。
その結果は「宮城県沖地震における重点的調査観測 平成17―21年度」として公表されています。行政やマスメディアが報告書に関心を示していたら、2011年の東日本大震災前に何らかの対策が打てたのではないか、と思える内容です。
報告書をまとめるとき、宍倉さんは貞観地震級の巨大地震(津波)が、いつ起きてもおかしくないという記述を加えることを提案したそうですが、東海地震にこそ使うべき言葉だという指摘があり、採用されませんでした。
巨大地震を予測することは、難しいことに違いありません。そのなかで切迫感をもって注意喚起できる言葉をどう選んだら良いのか。コロナ禍の呼びかけの文言に工夫が見られない昨今の状況とも重ね合わせて、考えさせられました。
(2008年8月24日©aratamakimihide)
現地現物の証拠も説得力があります。岐阜県本巣市にある「根尾谷地震断層観察館」を見に行ったときのことを思い出します。1891年(明治24年)の濃尾地震(マグニチュード8・0)の震源地とされる旧根尾村の断層のズレの一部を保存してありました。その規模に驚くとともに、後世に伝えようという意志を感じました。
減災連携研究センターには、もうひとつ「防災アカデミー」があります。地殻変動学が専門の連携センターの鷺谷威教授によると、2002年に名古屋大学が始めた「地震防災連続セミナー」が今に続いているとのことでした。2004年5月から現在の名称になり、主に外部の専門家から防災・減災の話を聞くことができます。
5月12日には福島大学の天野和彦特任教授がオンラインで登壇し、福島原発の現状と地域コミュニティづくりの新しい動きを紹介してくれました。こちらは、165回を数えます。
カフェもアカデミーも、かなり専門的な内容ですが、減災連携研究センター客員教授の隈元邦彦・江戸川大学教授や鷺谷教授らが、進行役として講演の内容を補足してくれるので、理解がしやすくなっています。
宍倉さんは、5月22日(土)にNHKで放送される「ブラタモリ」に出演するそうです。舞台は房総半島の館山です。
古地質の調査や地層の隆起・沈下から何を読み解くことができるのか。そして、私たちは巨大地震や大津波にどう備えるのか。「いつ起きてもおかしくない」という重みを考える機会にしたいと思っています。
(2021年5月15日)
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