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「365日大葉を食べる人」~11月8日(いい大葉の日)でSNS発信1年に

 InstagramやTikTokで大葉の魅力を発信している佐藤光さん。本職は愛知県豊川市にあるJAひまわりの青果部で、大葉などの「つまもの部会」の指導を担当しています。SNSで大葉の魅力、レシピなどを毎日、食べて発信し続けている佐藤さん。「いい大葉の日」の11月8日で1年になります。
■愛知の大葉
 愛知県は大葉の産出額全国1位の128億円。このうち豊川市が40億円を占めています。
 コロナ禍で料亭や料理屋などで、つまもの需要が激減し、豊川市や豊橋市など大葉の産地が需要回復へ知恵を絞ってきたことは、これまでも筆者のnote「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」でも紹介してきました。
 ようやくコロナ明けとなった今、大葉生産者の高齢化による引退が目立っています。大葉は「刺身のつま」といった脇役に甘んじてきた状況も続いています。
■家庭でも消費してもらえる野菜に

JAグループ愛知記者会で「大葉愛」を語る佐藤さん

 佐藤さんがSNSで発信するきっかけは、愛知淑徳大学での授業でした。企業が抱える課題を解決するビジネスプランニングという講座に招かれ、「大葉をもっと家庭で食べてもらうためには」という課題を学生たちに投げかけました。 学生の意見のなかで、「1か月間、大葉を食べ続けてTikTokに投稿したらバズるのでは」というのがありました。佐藤さんは、どうせなら「365日大葉を食べる人のほうがキャッチーだ」と、1年間続けてみようとスタートしたそうです。
■数競うだけではなく 
 SNSの内容は大葉を使った料理だけに止まらず、大葉が健康に良いことを毛細血管の血液の流れの変化を示したり、マイクロファイバースコープで肌の様子を撮影したりしてアピールしてきました。
 毎日「大葉」を発信したことで、フォロワーはInstagramが6600人、TikTokが3300人に。
 ただ、佐藤さんはフォロワーが多いというだけでは大葉の消費につながっているかどうかわからないという周りからの指摘もあり、フォロワー向けアンケートを実施。
 この結果、103件の回答があり、フォローするようになってから大葉を食べる頻度が増えた人が67%。変わらない33%という回答でした。
■うれしい生産者の反応 
 大葉生産者からは「よりよい品質のものを出荷しなければと思うようになった」など声が上がってきました。
 ネットで国内や世界にも発信されていることを知って、「たくさんの人が動画を見るので、撮影場所のハウス内もきれいにしなければ」という意識も高まっています。
 佐藤さんが飲食店や量販店へ売り込みをして需要を開拓するので、農家は生産に集中できるメリットもあります。
■課題は持ち越しつつも・・・ 
 JAグループ愛知の記者会が2024年10月31日に名古屋市内で開かれ、佐藤さんが出席しました。佐藤さんに聞くと、つまものを担当した4年前と比べて生産者は2人引退しています。親の後を継ぐケースを除き、大葉農家への新規参入はゼロとのこと。

前代未聞の大葉フェスのポスター

 大葉を使った家庭料理の普及もまだこれからです。野菜嫌いの子どもにも大葉を食べてもらうことで消費者の裾野を広げていくことも必要です。
 豊川市など地域を挙げて大葉の消費拡大の動きも活溌になってきました。11月10日(日)には、豊川市のイオンモール豊川で「前代未聞の大葉イベント」と銘打ったOHBAフェスティバルが開かれます。
 市内の飲食店の大葉料理が並ぶ「とよかわ大葉マルシェ」。大葉のハンバーガーや餃子、焼売などが並びます。
 子ども向けのイベントとして、人気のガチャを活用し、大葉のグッズが当たる「大葉ガチャ」も。これは、愛知淑徳大学の授業のときに出されたアイデアの実現です。
■新たな試み
 大葉のパックは業務・飲食店向けの100枚入り、個人や家庭向けの10枚入り小袋と不ぞろいの大葉を詰めた20㌘入りが定番です。佐藤さんによると、愛知県岡崎市内に出店したスーパーのロピアでは30枚入りのロットでJAひまわり つまもの部会のロゴ入りで販売を始めたといいます。
 豊川の大葉は市場から「香が濃い」との評価があるようです。地元の食品会社とタイアップした「子持ちししゃもの香り巻き」も香りを生かした加工品です。試食すると、佃煮の味に大葉の香りが良く絡み、ご飯が進む逸品でした。
■最後に大葉を食べたのは?
 この1週間、トマトもキャベツもキュウリも食卓に並びましたが、大葉は食べたっけ?
 香り立つ大葉を刺身のつまだけで食べるのは、もったいない気がしてきました。筆者の家庭では毎夏、青シソジュースにして風味を満喫しています。
 秋から冬へ、大葉を生かしたどんなレシピが生まれることでしょうか。
(2024年10月31日)