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これまで出会ったロボットたち~非接触の最新事情

 「敬礼もできるんですよ」。担当者がパソコンを操作しているオペレーターに指示すると、私の目の前にいる警備ロボットは右手で敬礼のしぐさをみせてくれました。
 この警備ロボットの実証実験は、2月15日からNTTドコモ東海支社が入るアーバンネット名古屋ビルで1週間、行われました。「Mira Robotics」(ミラロボティクス、川崎市)が開発したロボットに、総合ビルメンテナンスの大成(名古屋市)の警備業務のノウハウを取り入れ、NTTドコモの高速大容量の5Gを使った初めての実験でした。

 ロボットの目にはカメラが内蔵され、衝突を避けるセンサーや音声を出すスピーカーが搭載されています。目の前に何者がいるのかをチェックして、その画像を5Gを使って瞬時に警備室へ送信することができます。警備員に代わって巡回もできるため、外来者との接触を避け、お互いの感染リスクを減らすことにつながります。大成は4月をめどに東京都内のオフィスビルに配備する計画です。

 2020年の春先から、非接触という考え方が、新しいビジネスを生み出しています。NTT西日本や名鉄不動産は、建設中の名古屋市内の分譲マンションの全戸に、シャープのコミュニケーションロボット「ロボホン」(高さ約20センチ)を配置します。非接触型サービスとして、宅配ボックスに荷物が届いたときやマンション管理組合からの連絡を教えてくれます。
 ロボットの取材が増えたのは、2005年の「愛・地球博」(愛知万博)以降でしょうか。万博のパビリオンでは、トヨタ自動車が製作したヒト型のパートナーロボットがトランペットを吹いて観客を楽しませていました。三菱未来館にはwakamaruというロボットアテンダントがいて、館内の説明をしていました。「未来」を予感させるロボットが、会場のあちらこちらにいたことを思い出します。
 筆者が印象に残っているロボットは、エンターテイメント系ではなく、社会に役立つ実用系でした。そのひとつが、2014年に記事にした介護施設向けの見守りロボットです。愛知県内の中小企業8社が、自動車や工作機械向けの売り上げが落ち込んでいるなかにあって、社会貢献を目指した事業を志していたからです。
 その後どうしているのか、代表の鬼頭精器製作所(愛知県豊田市)の鬼頭明孝社長に話を聞きました。見守りロボットは2016年に「アイミーマ」という名前で、病院での実証実験に入りました。ただ、ロボットに任せることへの抵抗感がぬぐえないのか、病院や介護の現場での需要は、まだ少ないそうです。

 そこで非接触のビジネス需要を見込んで、来訪者の自動検温やマスクの提供をする消毒ディスペンサー付きの見守りロボットに進化させました。将来は配膳ロボットへの応用も視野に入れているそうです。国内の大手飲食チェーンの中には、中国製の配膳ロボを導入する動きも出ていると聞きます。鬼頭さんは「我々が配膳ロボを商品化したときには、安価な中国製が出回っているかもしれないけど」と言いながらも、いずれ見回りロボットが必要にされるときが来ると信じて開発を続けています。
 ロボットのいる風景が、当たり前になりつつあります。今朝も自宅の居間で掃除ロボットが働いていました。行ったり来たりしながら、最後は充電スタンドに戻ります。つい、「お疲れさん」と声をかけてしまいますが、これは米国製でした。将来、配膳や介護ロボットがありふれた日常になったときに、「サンキュー」とか「謝謝」(シェイシェイ)と言わなくてもいいように、地元の中小企業の踏ん張りに期待しています。
(2021年3月4日)

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