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それは伊勢湾台風の経験からだった~災害時に銀行駐車場を復旧拠点とする連携協定、ドコモと名古屋銀行が締結


災害時の連携に関する協定を締結したNTTドコモ東海支社の田畑支社長㊨と名古屋銀行の藤原一朗頭取

 NTTドコモ東海支社と名古屋銀行は2024年10月24日、同行本店ビルで「災害時の連携に関する協定」を締結しました。元日の能登半島地震で通信復旧時に作業拠点が足らなかったという反省からドコモが企業に拠点の提供を呼びかけていました。いち早く呼応したのが、伊勢湾台風時に迅速な対応をした実績のある名古屋銀行でした。
■協定の骨子

携帯電話用の充電器が名古屋銀行に配備された

 災害時に名古屋銀行の店舗敷地をドコモの災害復旧活動の拠点として活用します。さらに愛知県内11支店・営業部(名古屋市内の中村、港、黒川、六番町、葵、藤が丘と一宮、瀬戸、岡崎、豊橋各支店、豊田営業部)に携帯電話用充電器(マルチチャージャー)を配備する内容です。
■能登の反省
 NTTドコモ東海の田畑智也支社長は、協定調印後の記者会見で能登半島地震での課題が協定の背景にあると説明しました。
 光ファイバーの伝送路が亀裂し、多くの基地局が被害を受けたなか、復旧活動を行う拠点が不足していました。全国からドコモの社員、関係会社から約1万人、さらに支援車両や機材が集まったのですが、拠点の金沢市から能登半島への往復で時間をとられ、復旧に費やす時間が限られてしまったという反省です。
 南海トラフ地震では、名古屋の中心部にあるドコモのビルだけでは応援の人や機材を収容する場所を十分に確保できません。そこで田畑支社長は名古屋の企業が集まる会合で能登半島地震の課題と今後の取り組みについて講演し、拠点の提供を呼びかけていました。
■伊勢湾台風復旧へのDNA
 いち早く反応した名古屋銀行の藤原一朗頭取は、1959年の伊勢湾台風の事例を紹介し、「災害時の対応は名古屋銀行のDNAだから」と明かします。
 当時、港支店でも大きな被害が出ました。台風が襲来した9月26日は土曜日でしたが、翌週の火曜日には移動バスで営業を再開させています。通帳や印鑑を流されていても支払い応じたり、融資にも対応したりしたと原点を振り返ります。
 「大胆にトップが決断したことで、いまでも地元の顧客に感謝と信頼をいただいている」と藤原頭取は力説しました。
■地震がきてからでは遅い
 NTTドコモ東海支社は、大垣共立銀行や静岡銀行とも提携を結んでいます。田畑支社長は「能登半島地震を踏まえると、まだまだ復旧拠点が足らない。名古屋銀行のようにたくさんの店舗の駐車場を借りることができることで、機材や車両が集結でき、早期の復旧につなげることができる」と協定の他企業への波及を期待しています。
 名古屋銀行の藤原頭取は「地震が来てからどうしようということではなくて、常にそういうことを考えて備えていく。そこが一番のポイント」と言います。
 防災の基本は、災害をイメージして「想定外」をなくし、備えることに尽きます。
(2024年10月26日)