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エリザベス女王工学賞の受賞報告~ネオジム磁石の佐川眞人・大同特殊鋼顧問

 2022年エリザベス女王工学賞を受賞した大同特殊鋼(本社・名古屋)顧問の佐川眞人さんが11月24日、愛知県の大村秀章知事を表敬訪問し、10月の授賞式の報告をしました。

受賞のトロフィーを持つ佐川顧問(左)と大村知事(愛知県公館で)©aratamakimihide

 ■ネオジム磁石とは

左がネオジム磁石。磁力が一目瞭然(2023年10月3日、ノーベル物理学賞発表取材の名古屋市内の会場に大同特殊鋼が設置)©aratamakimihide

 ネオジム磁石は、どのようなものでしょうか。佐川さんは知事に分かりやすく説明しています。
 「ネオジム鉄ボロン磁石といって、ネオジム磁石といわれています。ネオジムというのはレアアースのうちのひとつで、私が初めて発明したのが鉄を使った磁石。その前はコバルトを使っていたんですね。その後、ボロンを入れてネオジム鉄ボロンにすると世界最強の磁石ができるというのを見つけたんです」
 1982年に世界最強の磁石になりましたが、佐川さんは「それから40年経つんですけど、まだネオジム磁石を抜くものが出てこない。これからも多分ずっと続いていくと思います」と自信をみせていました。
 ■世界の産業と環境に貢献
 産業的には非常に大事な材料です。電気自動車(EV)のモーターにどんどん使われていて、地球温暖化防止に貢献することが期待されています。
 ネオジム磁石の一番最初の応用は、パソコンに使われるハードディスクでした。電子機器を高速化、コンパクトにするのに役立ちました。ネオジム磁石ができる前のハードデスクの重さは10㌕もありました。それがコンパクトになったのはネオジム磁石の出現のおかげといっても過言ではありません。IT社会に大きく貢献しています。
 大村知事は「モーター類やロボット自動化システム、家電などあらゆる分野でクリーンな省エネ技術の実現に貢献していますね」と高く評価していました。
 ■ネオジム磁石開発の歩み
 佐川さんは富士通に入社して磁石の磁力ならぬ魅力にひかれます。当時はサマリウム・コバルト磁石が主流でした。佐川さんは、コバルトより磁力が強い鉄が主成分ではないのかと疑問を持ち、研究を重ね、「ネオジム・鉄・ボロン」の組み合わせによる磁石が有望と見えてきました。
 その後、半導体など次世代技術を重視する富士通で研究が難しいと判断して、住友特殊金属(当時)へ移籍。ここでネオジム磁石を完成させました。量産化を進め、1988年にベンチャー企業としてインターメタリックス(京都市)を設立。その後、インターメタリックス・ジャパン(IMJ・岐阜県中津川市)で新しい製法で量産を始めます。
 IMJは2011年に大同特殊鋼の完全子会社となり、2016年に大同特殊鋼の連結子会社のダイドー電子と合併。これをきかけに佐川さんは大同特殊鋼の顧問に迎えられました。
 ■課題は脱中国
 2010年以降、中国が一部の希土類(レアアース)の輸出を制限しています。ネオジム磁石にもジスプロシウムというレアアースが使われてきました。2016年12月17日の日刊工業新聞のインタビュー記事にも、ジスプロシウムを使わない研究を進めていると話していました。知事表敬の時にも「脱中国レアアース」の決意を述べています。
 開発に終わりはありません。
(2023年12月11日) 
 

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