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長野市「秋山食堂」 肉ニラ炒め定食

店名 秋山食堂
場所 長野県長野市小柴見375
電話 026-228-8431
ジャンル 食堂
バリアフリー ◯
駐車場 あり
食べたもの 「肉ニラ炒め定食」850円


母親の調理してくれた品、母親の手料理を食べなくなってからずいぶん長い期間を経てしまった。絶無ではない。たまに訪れたときにご馳走になることはあるが、そういう事ではなく日々の糧としての母親の手料理。私を育むために朝昼晩と作る食事を指すが、それらを定期的に摂取しなくなったのは23歳の時、ひとり暮らしを始めてからだから30年以上経過してしまったのか。そして29歳で結婚して以来25年間、ほとんど家内の手料理を食べているのだから、母親とのつきあいより長い時間が経過している。

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だから何を申し上げたいかといえば、母親は私にいったいどのようなものを食べさせてくれていたのかまったく覚えていない、という事だ。いや本当に記憶がないのだ。なにが、どんな形式で食卓に並んだのか。大雑把か彼女の性格から、各人別、小分けでの登場だけはなく、基本的に大皿料理だった気がするが、覚えているのはそれだけ。

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この記憶欠落ともいえる事態は私だけでなく、長兄次兄のふたりとも同様らしく、いつぞや3人で酒のみながらわが家で唐揚げなど出てきた事があるのか、ガスオーブンを買ったはよいが一度しか使ったことはないではないか、そもそも母親は料理できるのか。などと議論していたら当の母親から
「この薄情ものどもめ」
と泣かれてしまった。ひどい話ではあるが、そもそも男児なんてこんなもの。男しか産めなかったアンタが悪いのだ。

と、ここまで書いてきて思い出したことがある。母親は肉食動物なのだ。魚はサンマとアジの干物以外は面倒だと言って食べない。野菜は煮物にするもの、すなわちジャガイモ、れんこん、にんじん、ごぼうなど根菜類は別として、生野菜などもってのほか。兄ふたりが結婚してからわが家に初めてサラダなる文化がもたらされた時は、
「ああこんなものが一般家庭のメニュー登場するのか」
と感動したものだ。

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ああたまぁに野菜炒めの類いなら作ってもらっていたかもしれない。土曜日半ドン早帰りの日、冷蔵庫にあるものでちゃっちゃと作った、キャベツとモヤシと豚肉少しの野菜炒め。塩胡椒と軽く醤油をたらした簡単な料理とも言えないような代物だった。わが家は商売をしていたし、週休2日なんて夢のまた夢の時代だった。なんとなく懐かしいような、そうでもないような。


「秋山食堂」

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たったひと月半ほど行かないだけで『久しぶり』という感覚になってしまう。それほど通い詰めていた秋山食堂なのだが、マスターもだいぶ復調されてきたようで、短冊メニューも多くなってきた。

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さぁ今日のポイントな何か。冷やし中華はもう少し暑くなってから、ソース焼きそばもよいが映えがなぁ。炒め物類が多いところをみるとマスターの気分はここか。んではこれを注文しよう。


「肉ニラ炒め定食」850円

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いつも通り、白い大きな丸皿にドサリと積載された肉ニラ炒め。ニラとモヤシと豚の薄切り肉だけで構成され、塩胡椒だけの味つけsimple is best の道をひたすら突き進んできたかのような、秋山食堂らしいぶっきらぼうなフォルムだ。

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パリパリしゃきしゃきムニュリムニュリという歯ごたえが素晴らしい。素晴らしいといえば小鉢もの。今回はなんとお刺身。キハダマグロとハマチが数切れだが、こういう繊細さがなんともいえない魅力なのだ。

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久しぶりに母親に電話をした。といってもひと月は空いていないが。80すぎて気ままなひとり暮らしでけっこうけっこう。まだまだシャッキリしているからよい。とはいえコロナなどもらってきては自分はともかく周囲が大変だから、あまり出歩くなと言い置き電話を終える。薄情な息子だが、少しは優しい事を言っておかなければならぬ。

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