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塩尻市「塩尻東座2」2021年昭和への旅③

店名 塩尻東座2
場所 長野県塩尻市大門4-4-8
ジャンル 映画館
バリアフリー △ 入口に段差あり
駐車場 あり


ピンク映画館が全国的に少なくなってきている。という事を先に記したが、なにゆえに左様な事態となっているのか。これはピンク映画の本来的な役割とその変遷が深く関連しているのだ。そもそもピンク映画とはなにか。そんな事は言うまでもない、男女の性的な行為を軸に据えた映画作品を指す。


だいたい、そんなものは観るものではなくするものだ。と言ったのは筒井康隆だが、なかなかそこまで達観できる人間は少ない。ましてや相手に恵まれていたり、いなくともある程度の経済的な余裕のあるものであれば、かなり近い心境へと達することは可能であろう。しかしながら世の中そこまでは甘くない。相手もいなければお金もない、かといってある程度の充足感を得てみたい。というものはいくらでもいる。


そういった社会的弱者(なのか?)を救済させるための映画作品とは、映画が発明されたごく初期からあったらしい。ジョルジュ・メリエスの残した作品をみれば分かるように、だいたい映画とは見世物であったのだ。見世物がエロスを追求しないわけがない。娯楽にこだわり切ったアメリカ人プロデューサー ロジャー・ーマンはその著書で映画を当てるには
「アクションか怪獣、または女の裸を出せ」
とまで言い切った。そうだ!ピンク映画とは映
…少々熱くなってしまったが、人間(とくに男性)の根幹を描くピンク映画、そしてそれのみを扱うピンク映画館が登場したのは昭和30年代初めくらいではないか。れはちゃんと調べたわけではないが、複数の資料を当たるとそんか感じかなぁというくらいでしかない。


詳細はいずれ研究するとして、ピンク映画館の出現は本来的な「社会的弱者の救済」だけでなく様々な役割が加算されていく。有名なところでは深酒し終電を逃した酔っ払いが、始発電車を待つための施設。現在でいえば漫画喫茶のような存在であったのだ。


そしてもう一点
ピンク映画館はゲイのハッテンバとして機能だ。ゲイとはLGBTのGのこと、ハッテンバとはゲイが相手を探すための場を指す。ここなら男しかいない、この暗がりなら男同士がなにやら怪しげなことをしていてもわからないし誰も咎めはしない。社会的弱者は自宅でインターネットにひたり、酔っ払いは漫画喫茶に流れた現在、かの地はハッテンバとしての機能のみが残された。と言われているがどのようなものか。


話は塩尻東座2に戻る

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初回が11:50との事なのでその少し前に到着。われわれだけの暗い空間を無作法に調べまくり撮影しまくった後で上映が始まる。2人きりの上映などミニシアターでは当たり前だから、ピンク映画なんてこんなものだよね、と安心してみはじめたら開始10分くらいで続々と入り初め、最終的には20人くらいになったのではないか。

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50〜60席の劇場に20人とは大したことがないように受け取られるかもしれないが、ぶっちゃけたところ長野市の某ミニシアターは20人よりずっと少ない時があるし、今はなきシネマポイントは80席という東座2よりも大きなハコだったが、観客が私ひとりという時は記憶だけで10回以上あったぞ。そんなわけだから、この入場者数をみてけっこうな感銘を受けたのだ。すげーぞ!ピンク映画!


ただ気になった点がある
全員とは言わないが、妙に落ち着きがない者が多いのだ。映写中であるにも関わらず席を何度も何度も変えるもの、席が空いているのに後ろでずっと立っているもの、何度も何度も席をたち外に出るもの。古くて建て付けの悪いドアだからバタンバタンとうるさくてかなわない。お前らも1700円出してるんだからもう少し真面目に鑑賞しろよ。

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「溢れる淫汁 いけいけ、タイガー」は昂る!荒ぶる!おっぱいぶるぶる!!っとさせるものだし、「奴隷人妻 恥辱のあえぎ」はあなた、ごめんなさい…私、肉人形になるものだから真面目に鑑賞されても困るのだろうが、映画マニアとはこんなもの。落ち着きなくバタンバタンやっているヤツらを無視して観ていたのだが、ある時ひとつ空けた隣に座った者ひとり。暗がりなので何歳くらいの野郎なのかはわからないが、時々チラチラこちらを見てくる。


なんだ気持ち悪いなこの野郎
基本的に穏やかな方だし、あまりイライラしたり怒り出したりする方でもないが、よそ様に迷惑をかける者は大嫌いなのだ。こっち見るな向こうへ行っとけ!と声には出さないが、かような気をこめて睨みつけてやったらどこかへ行ってしまった。


ああこれで安心少しは集中出来るぞと思い直した時にふとひらめいた

これがハッテンバのルールなのだ。

何度も何度も席を変えたり、後ろに立ちっぱなしだったり、バタンバタン外に出ていくのも相手を探すための手段なのであろう。

うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

LGBTに限らずどのような差別も持ってはいないつもりだし、誰がどのような性的嗜好を持とうとそのものの自由であるとも思っている。しかし、さすがにその場に居合わせるとなればあまり心地よいものではない。すみませんごめんなさい。ぼくはノーマルですノンケなんです誘わないでくださいお願いします。などとまんじりともせず、残りの30分ほどをやり過ごし無事に終えることができた。


面白かった
作品も面白かったが、それ以上に塩尻東座2という空間を心底楽しむ事ができた。これは映画マニアとしては望外の幸せといえる。行ってよかった、百瀬さん誘ってくださってありがとうございました。

とはいえ、また体験したいかどうかは微妙なところではあるなぁ。

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