赤い月

とても大きな月を見た。

思わず"えぇ〜"と声を出してしまった。

まるで自分の体にある、大きなホクロを見つけたときのような。

あまりの大きさに圧倒された。
車を運転していたのだが、ついつい赤信号で止まってしまった。

そしてその月はほんのりと赤みがかっていた。

僕には赤い月を怖がっていた時期がある。
それはクレヨンしんちゃんの「ネネちゃんのウサギがしゃべったゾ」(2003年12月6日放送)を見てからだ。

それは、夕暮れの赤い月が出ている日にネネちゃんのウサギの人形がシロの小屋の上でしゃべるという回で雰囲気からセリフ、全てがホラーでギャク要素が一つもないというものだった。


当時、6歳の僕はクレヨンしんちゃんが大好きで毎週見ていたのだが、いきなりそんなホラーな回を見せられ、床に落とした電動歯ブラシのように震えていた。
あまりの震動で回転していたと記憶している。

それからというもの赤い月を見るといつもネネちゃんのウサギを思い出すようになった。

しかし、そんな記憶を塗り替える出来事があった。
それは大学生2年になってすぐ、ストロベリームーンというとても大きな赤い月が見れるということでバイト先で知り合った女の子に誘われ、深夜2時にその月を見に行った。

東京の夜は明るくてあまり綺麗に見れなかった。
そこで廃墟の団地まで歩きそこから月を眺めた。もし、一人なら絶対に行けなかった。
今にもウサギが出てきそうな雰囲気だった。

僕はトラウマと戦いながらも勇敢に彼女をリードし、それが功を奏してかのちにその子と付き合うことになった。(ヒモを引っ張ると震えるキーホルダーほど震えていたがバレていなかったようだ。)

赤い月が淡い思い出となった。

そして、社会人となり赤い月を見た。
なぜか僕は乳輪を連想した。
なぜだか分からない。

"嗚呼、乳輪のようだ"

そう思ってしまったのだ。
卑しい気持ちはまるでなかった。
虚心坦懐に月を見ていた。

真っ暗な空(おっぱい)に大きな赤い月(乳輪)

僕はおっぱいに吸い込まれるように車を走らせた。

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