ビル7階建ての高さからの水圧を体験した
4月から新生活が始まって家にいる時間が短くなり、家に着いたらゴロゴロしながらYouTube開いて好きな配信者の切り抜きとか動画を見るような生活が根付いて来た頃。
流石に出掛けなさすぎて辛くなって来た。
配信してる方々の話しはどれも面白いものだったり、珍しい体験の話とかもワクワクしながら聞けるんだけど、ふと自分は話しを聞いているだけで体験してないんだなと思い虚しくなったので滝行に行くことにした。
YouTubeで落花生とたぬきのキャラクターが新年気を引き締めるために滝行をするという動画を見て、すごい辛そうだったのを思い出していたんだけれど、たぬきが清々しそうにしていた様子を見て絶対に行くことリストに入れていた。
行くと決めたのだから善は急げと、都心から近場で滝行できる場所がないかと調べてみると様々なタイプの滝行が出てきた。
ランキング形式でおすすめ度見たいな点数付けされているサイトとか。
滝行にも人気ランキングとかあるんだ
近場すぎても本格感がないかなって思い、車でしっかり移動して山を少し登ったところにある滝を調べてホームページを見てみることにした。
ホームページには実際に滝に打たれている人と、その滝の全容を写した画像が貼られていて自分の想像している滝行と相違ない体験ができそうだとワクワクする。
スケジュールを見てみると一年中体験することはできるそうだが、基本的に土曜日と日曜日のどちらかの午前に開催されるらしい。
確認して、直近で明後日の土曜日に参加人数に空きがあったのですぐに予約のメールを送ることにした。
一人からでも参加することができて、気にすることと言えば持ち物と移動手段だろう。
電車で移動する方々は、開催している団体が駅まで迎えに行き滝行をやる広場まで連れていってくれるらしい。
その場合は集合時間が30分ほど早くなり、私が見た時は朝9時集合となっていた。
折角なら車を運転して遠出してみたいな。
ここ最近、自分で行きたい場所を決めて出かけていなかったフラストレーションを発散するために初心者マークを引っ提げて運転して行くことにした。
持ち物はタオル、濡れてもいい履物、インナーと川遊びと変わらない持ち物で大丈夫そうだ。
向こうの団体で滝行する際に着用する空手着を用意してくれるらしい。でも衣装自由とあったからほぼ裸で行う人もいるのかもしれない。
参加費は9000円ほど。
他との比較ができないから高いのか安いのわからないすぎる。
おそらくお清めや空手着の用意、監督する方々のギャラと思うと高くはない?のかもしれない。
団体での予約も受け付けていて、撮影などで使う場合には時間帯も少し変えてくれるらしい。
Yutuberなんかも撮影で使うことがあるのかな。
メールの件名に予約についてと記載して、本文にまだ空きがあるなら参加したいこと。
車で集合場所まで向かうこと。名前、連絡先、性別、年齢、身長と胴回りのサイズを書き込み送信した。
修練の団体から連絡が帰ってきてようやく予約完了となるので、今日は予約してしまった高揚感と期待を胸に寝ることにした。
やってみたいことの予約っていつでも不安もあるし、予約し終わったら期待感とか湧いてくるのたまらないよね。実際、もうやるしかない状況に自分を追い込んでようやくやるってこと多いと思う。
翌日の夕方あたりに予約完了の返信が送られてきて、とうとう行くしかないぞと身が引き締まる思いになった。
とにかく遠出できるのがうれしいし、やったことないことができるのは楽しい。
メールには、予約完了の旨と改めて持ち物や注意事項について確認するように書いてあった。
着替えをする場所はあるが、鍵がかからないので貴重品などは最低限でお願いしますって書いてあるけど、電車の人はどこに貴重品置けばいいのだろうか。
それと現地集合する方へと別に注意事項が書かれていた。
ゴールデンウィーク中は渋滞が予想されるので気を付けて来るように、時間までに来なかったら始めちゃうからという旨が書いてあって、まあそれはそうと思いながら休日の遠出に胸躍らせることにした。
前日に参加できるかの確認メールを送るのを面倒くさがったのは己の怠惰。
なんかそういう再確認みたいな手続きって絶対に必要なんだけど、嫌ほど面倒くさいんだよな。結局メールなんてすぐできるのに時間ギリギリになって連絡した。
当日、朝9時半に現地に到着しなければならない。
しかも時期はゴールデンウィーク真っ只中。
まあ片道3時間あれば余裕だとは思った。
着替えなどの荷物は前日のうちに用意しておいたので朝30分ほど寝坊をかまして、でも2時間半あるからね。ゆったりとしながら車に乗り込み出発することにした。
長時間の車の運転は眠くなることが一番怖い。
特に高速に乗ると途中で止めることが容易でないから、緊張と睡魔で頭がおかしくなりそうになる。
そんな状態にはなりたくないので、ちゃんとコーヒーを買って飲みながら高速に入るとまだ日が昇って間もない時間帯だというのに三車線を車が絶え間なく進んでいる。
一般道から高速に入る時の速さの重みを感じながら本線に合流するとようやく今日遠出するんだなと後戻りできない実感がある。
高速を運転してて楽しいことは、首都高を走っていると都内の主要な場所を立体的に移動できること。浅草は聖火をモチーフにしたビルの真横を通ることができて皇居近くになると地下へ潜っては顔を出して潜っては顔を出してと、飽きることなく都内の知らなかった情景を見ることができる。
首都高の悪口は、合流がくそ多いのと時間制限付きの迷路みたいで選択肢を間違えると一生長い時間をかけてぐるぐる回る羽目になること。
華やかな緊張感のあるビル群を走り東京を抜けると、幅の広い平坦な道路へと出た。
依然と車の数は絶えず、むしろ増えてきて怖い。追突とかね。
高速道路沿いって田舎道に進むとよくわからないレジャー施設やら華やかなお城のホテルやら癖の強い建物が多いのはなぜなんだ。
崖の上に立つ建物の古びたトタンの壁には温泉の文字があってすごく行ってみたいし、そこからすぐに恐竜がこちらに向かって吠えているように立つ建物もあって(これは多分ラブホ)意味が分からなさすぎる。
よそ見運転一歩手前みたいなことしてると、車の速度が明らかに落ちてきた。
時速70後半で走っていたはずなのに今は時速15を下回ろうとしている。もう自転車並みの速度だ。
とうとう完全に車はその動きを止めた。そして動きを止めたのは周りの車も同様で、車に囲まれて動けなくなってしまった。見事に渋滞にはまったのである。
ラジオで渋滞の情報を聞いてみると今走っている線の名前と10㎞の渋滞という単語だけ聞こえた。
もうここで焦っても仕方がないので、車の中でゆっくり音楽を聴く時間ができたと思うことにするが、ナビに表示された目的地に到着する時間はどんどんと後ろへ倒れていき集合時間の9時半へと近づいて行っている。
内心穏やかじゃなかった。焦っても仕方ないけど、焦るじゃない?仕方なくない?
渋滞のせいだしさ。
そこで思い起こされる、現地集合の方への注意、朝の寝坊。
今度からもっとちゃんと余裕をもって動くようにしよう。
動かなくても問題ないから全く動かないほうが楽なんだけど、こまめに前についてないと隣の車線から強引に入り込まれる危険性があるので常に気を張らないといけない運転をしばらく続けていると、どんどんと速度計が調子を取り戻していきようやく渋滞を抜けることができた。
到着予定時間もぎりぎり間に合うような時間なので本当にほっとした。
そして道が下り坂になると一気に見通しが良くなり、遠くにははっきりと富士山が見えて遠出の喜びを朝の数時間で味わえてる贅沢にニコニコが止まらない。
ナビがとうとう高速を降りるように指示を出し、従いながら道なりに進むと住宅地が見えて信号で車が一時停止する。
高速降りたなって感じるのはやっぱり信号で止まる時だよな。
まばらにある住宅とファミレスっぽい飲食店を通り過ぎ山の方向へ向かうと、妙に綺麗な坂道がしばらく続く。ロードバイクに乗って登っている人を何人も見たからサイクリングロードとして有名な場所なのかもしれない。
登るにつれて道は狭くなり、対向車が来たらどちらかはバックか一旦曲がって譲らなければならないほどの細道が続いていく。
人がめったに来ないからこその道の狭さだとするなら、滝行をする場所としては険しさを連想させて納得する。
進んだ先の左手に車が複数駐車されていて白装束の人たちが集まっている。
ここだ。滝行やる人たちだ。
急いで車を止めて受付を済ませる。
受付では、快活な女性の方がバインダーを持って対応してくれた。
この女性の方も中々特徴的で、少しお年を召されていそうだがその場全体に通る元気な声を持ち、てきぱきと動く様子からは年齢が全く読めない。
最初に現金で支払いを済ませると白い柔道着一式を渡されて
「あそこに着替えることのできる小屋があるからそちらで着替えていただいて、皆さん集まったら説明始めさせていただきます」
と言われた。
多分私が最後に到着した体験者なので焦りながら小屋のほうへ向かい引き戸を開けて中へと入る。
小屋の中は、かなり狭く机のようなものが壁に沿って置いてありその上に荷物を入れるためのかごが隙間なく並んでいる。
いくつかの籠の中にはぽつぽつと他の方の着替えが入っていて、私もそれに倣って荷物をかごにいれた。
正直、タオル以外に何をもっていけばよかったのか全く分からなかったのでタオル2枚のほかに柔道着の下に着るインナー、そして川の中に入ったときに履く足袋を持ってきていた。
足袋なんてもう金輪際使うことなんてないだろうって思ってたけどここにきて活躍してくれた。
適当に柔道着を着替え足袋を履いたら、着替え以外の貴重品をもって急いで先ほどの広場まで戻った。
広場に戻ると先ほどの女性が全員集まっているのを確認して
「それでは滝行体験について説明させていただきます」
と説明が始まった。
これから山道を少し行くとバンガローがありその先に目的地である滝があるらしい。
滝行は、まずお清め、祈祷、準備体操を経てようやくすることができる。
ほかの団体も滝行を行っている場合があり、その時には少しだけ待っていただくことになる。
最後に、こちら指導の下で行いますがきつかったら無理せずやめること。修行ではあるが皆様にはいい体験をしてほしいということ。
それと今回主導で滝行を行ってくれる方は撮影のために先に登っている。
先に1人登っていること。
説明を受けいている間も未知の体験がすぐそこにあると考えて少し浮足立ってしまう。
というか思ったよりも参加人数が多かった。
自分含めて8人はいたと思う。
若めで派手目のお兄ちゃん達が3人、違うグループだが同じくらいの年代の女子が2人、付き添いの方と来られている男性が1人、大きなカメラと法螺貝を持ったスキンヘッドの方が1人。
法螺貝のインパクトが強すぎて意味が分からん。
滝行ガチ勢なのだろうか。いるのか?ガチ勢
説明があらかた終わると、さっそく山道を指導の方が先導し登っていく。
説明を受けていた場所は開けて空が視界の大半を覆っていたが、登るにつれて今度は高さ十数メートルはある木々が空を覆いあたりは晴れの日の午前なのに薄暗い。
様々な場所から水の流れる音がして、これが多岐につながっているんだろうと予感させる。
途中、幅の広くひざ丈ほどの深さの川がありそのそばではキャンプをすることができるそうだ。川にかけられた橋を渡りさらに奥へ進むと今までにはない激しく水がぶつかり合う音が大きくなっていく。
空気もひんやりとした水気を含んだものになり、岩に生えた苔をよく見ると露が乗って薄暗い中でキラキラと光っている。
そして視界は開けていないがはっきりと滝を目でとらえることができた。
滝を生み出している落水の始まりは、顔を上げないとみることができず確かな勢いをもって落ちていく。水は空気抵抗や風、様々な場所にぶつかり飛沫をあげて白い線を水流の中に作る。そして絶え間なく滝壺へ落ち水面は常にグラグラと揺れている。
滝壺に落ちる水の勢いが強いせいで水がミスト状になりあたりを漂っているのが肌で感じることができる。
そして滝の上流だけ木々がないため、滝の背後から日の光が差し込みあたりに漂うミストに反射し光の線を生み出して森の中の光芒のような神秘的な風景が広がっていた。
これね、めちゃくちゃ寒いんよ。4月末とか5月のはずなのに体が冷えて息が白くなるんだよ。
それと、滝壺に落ちる水の音がやばい。まだ遠いからましだけど近づくと他に音が聞こえなくなる。あと水が落ちた場所がずっと白いわ。
不安が大きくなるものの、もう引けぬところまで来てしまった。
滝の手前には小屋のような祠が建てられていて近くに、白い口髭を蓄えた白髪のおじさんが経っていた。多分この人が引率してくれる方なんだろうと思い、宜しくお願いしますと挨拶だけしておいた。
祠の奥に滝の全容が見える場所があるのでそこで全員が集まるとインストラクターの方が説明を始めた。
ここでお清め、祈祷をした後に体を支える棒を持って滝行を行っていただくと。
高さは約23メートル、建物だとビル7階に相当すると。
現在の気温は17度で、おそらく水温は11度ほどであると。
温泉にある水風呂は18度ほどであると。
滝壺の中は岩がごつごつしていて、浅い部分もあれば肩まで入ってしまう深さの部分もあるので気を付けてくださいとのこと。
滝の勢いはかなりのもので、渡された棒で体を支えるようにしてくれと。
水温の話を聞いてよくわからないが、何となく大丈夫かなって思った。まあ、マイナスじゃなきゃ死なないでしょ。
滝の説明が終わると、全員に火のついた線香が配られインストラクターの方が太鼓を持ち般若心?っぽいものを唱え始め太鼓が一定のリズムでたたかれ始める。目をつむり手を合わせ順番に線香を備え鐘を鳴らし手を合わせていく。
ただ並んだ場所が一番後ろだったので滝の音にかき消され見様見真似で全部やった。
次にお清めをやるのだが、先ほどから少し離れた場所に人が集まっている。
というかカメラがある。そして柔道着に着用した女性が5人ほどいる。
マジで撮影してるわ。駆け出しのアイドルなのか鳥の被り物をかぶって規模小さめの振りを踊っている。
確かに見栄えのいい迫力のある滝なので撮影は多く行われているのかもしれない。
そんな撮影隊を横目に、お清めと安全祈願の儀式が始まった。
容器に入れられた塩をそれぞれ一握りして掴み取り、足元、ひざ、腰、腕、肩、頭と全身にまんべんなく振りかけていく。次に手のひらを器にして酒を注がれる。
飲める人は少し口に含み、その後塩と同じように全身へ振りかける。
最後に四方へ向かって空に九の字を書きながら「えぇーい!」と大声で叫ぶ。
漢字の九の字を書くわけだが、どうやら本来は印を結ぶらしく本来九つある印を簡易的に省略したものがこれだそうだ。まあ、初めての人間に覚えろって言っても時間がかかるだけだから仕方のないことだと思う。
その傍らで、さっきの撮影隊のタレントが大きく悲鳴を上げている。滝の音でほとんどの音がかき消されている中、女性の悲鳴だけが聞こえるのが少し怖い。
最後に準備運動ということで、周りと距離をとると舟をこぐ仕草で体をほぐしていく。
「えいっ!おう!」という掛け声とともにオールを漕いで戻す、漕いで戻すを大きくだんだんとテンポを速めていく。
インストラクターの方がお手本となってそれを真似してやるのだが、最初はついていけるのだが後半は速すぎてついていけない。なんか思わず笑ってしまった。
あらかたの準備を終えてもうそろそろかと思っていると、仙人レベルで髭の長いおじさんがこちらに近づきインストラクターの方が「本日、滝行を主導してくれる人です」と紹介してくれた。
さっき挨拶したおじさん、普通に参加者だったわ。
しかも今来たおじさんがもう仙人としての説得力をもった、偏見だけど白髪交じり長髪、長い髭っていう文句のない仙人が現れた。
しかも貴重品を預ける際に、法螺貝持ってた人はふんどし一丁になって情緒が滝に入る前からぐちゃぐちゃになってしまった。
そんなこんなで滝壺へ入ることに。
長く丈夫な棒を手に取り、仙人やインストラクターの方に続いて滝壺に入っていく。いや、インストラクターの方も入るんだ。
水中に踏み込んでいくと意外と耐えることのできる水温だと勘違いしていた。
控えめに言って氷水の中に入っているのかもしれないと思った。
信じられないくらい寒い。
気合を入れるために「えいっ!」と掛け声をあげながら奥へ進んでいくが、声を出す体力が寒さによってどんどんと奪われていく。
インストラクターの方の合図で一気に肩まで水の中へ沈めると、すでに冷たさで体の至る所が痛く危険信号を放っている。
今からこの冷たい水を頭からかぶるのだと、想像すれば地獄なのはわかるが寒すぎて思考することができず、心の準備をする暇なく滝へと案内される。
滝の中へ入る方法は、滝に背を向けて下がりながら入っていく。
滝に背を向ける恐怖がわかるか?目標との距離がつかめない、音は体に響くほどの衝撃として伝わってそれがだんだんと近づいてくるんだ。
そして背中を飛沫がかすり始めたと思うとすぐに、肩へとんでもない重さの衝撃が来た。そして滝の水を頭から受け止める。
目は開かない。耳も飛沫の音しか聞こえない。常に重い衝撃が頭に走り、その温度は体が強制的に硬直してしまうほど。掛け声も母音に濁音がつくほど叫び気を確かに持とうとするが急速に奪われる体力と体温のせいで声がすぐに出せなくなる。
滝に入る時間は1回につき1分半だという。
しかし信じられないくらいの辛さに、いればいるほど残り時間のことを強くより強く思うせいで体感時間がどんどんと伸びていくのがわかる。
新しい体験をするうえでここまで強く後悔したことはなかったかもしれない。
インストラクターの方が強く叫んでいるのが聞こえてようやく一回分が終わったとわかり逃げるように滝から離れる。
すると、「余裕があるなら2回目行きますか」と声がかかった。
信じられない。この人怖いよ。
十分だという人はすでに上がって着替えに行ってもいいらしく、私はさっさと戻りたかった。
だが、ふと頭によぎる参加費。
9000円は決して安くない。珍しい体験のために払って辛いからもういいや?
考えろ、もうしばらくは絶対にやらないぞ。そんな早く切り上げていいのか。
結局、貧乏性な私が勝ってもう一ラウンド参加することになった。
今度は滝の裏側へと回り、横から入っていく。
早く移動しないと本当に死んでしまいそうな気がしてがむしゃらに棒を使って裏へと回り込む。
ヤバイ。体感の気温がもうひと段階下がった気がする。
この場にいるだけで体の硬直と震えが止まらない。
長くうじうじしているとこの地獄が長引くのでさっさと滝に入ることにする。
痛い。さっきと全く違う痛みが体全身を襲う。
先ほどは水が塊になって重い衝撃が走っていたのだが、今度は滝が岩壁にあたり飛び散り細かい粒となり、まるでBB弾を全方位から当てられているような痛みが絶え間なく続いている。寒さは変わらず最悪。
ただ、無理に気合を入れるために叫んでいたのをやめると少しだけ思考する余裕が出てきた。
ネガティブな感情に支配されていたからとにかく余裕の出てきた頭で何も考えないことに努めた。
きついことに抗おうとするから自分が辛くなるって何回か聞いたことある。
受け流すように、受け流すように。
滝に打たれている中一瞬だけすべての感覚が敏感になり肌を伝う水の流れ、温度、耳のそばを通る水の音、それらを感じれたような気がしてそれは辛くなく心地の良いものだった。
次の瞬間、弾幕の中でもう無理。出ます。寒いです。
私の心はここで折れた。
滝壺から上がっても体の震えが止まらなくて、さっさと戻ろうと思い滝を一瞥するとまだ全然打たれている人いるわ。5人くらい打たれてるわ。
想像通り法螺貝持ってる人まだ打たれているっていうか、ずっと出ることなくうたれているね?ガチ勢でしたね。
登ってきた山道を急いで戻り着替えるために小屋へと向かう。
その途中、背後、滝の方向から法螺貝を吹く音が聞こえてきた。
着替え終わるとその後は流れ解散のようになって、インストラクターの方が滝行中に撮影してくれたデータをエアドロップで受け取ってその場を後にした。
もう体中が痛くて冷たくて疲れた。でも終わってしまえば楽しかった気がする。
一種アトラクションのようなものなのかもしれない。
帰りに滝行した場所からすぐのところにあるご飯処でとろろうどんを食べたが、可か不可で言うなら不可だった。それでも出先のご飯って付加価値でテンション上がるから不思議だ。
最後に山を下りてすぐの場所に道の駅があったので寄った。
道の駅ではその土地の名産品らしき物どもが綺麗にパッケージングされてた。
私はタバコの箱のようなデザインのお茶を買って帰った。
総評
滝行の体験は総合的にすごい楽しかった。
だけどヘビーなリピーターにはそうそうならないと思う。
時期や前日の天気によっては水量が変わりキツさも変わるので、人にも気軽に勧めづらいかな。
ただ、見ているだけの自然に介入している楽しさはかなり貴重な特別なものだと思う。
ぜひ、滝行やってみて。
ちなみに、柔道着は濡れるとものすごく透ける。
肌に張り付いた部分から肌色やインナーの色がわかるくらいには透けるのでそこ注意。