TOP interview vol.1
10年後の大野を考える
人口減少や高齢化、空き家問題など、まちなかの景色はどんどんと老いていく。
不安に駆られて考えれば考えるほどブクブクと潜ってしまい、思考が停止しかける。
観光とは別の軸の仕事という軸。
大野にはたくさんの企業があり大野を支えている。
遠くない未来にやってくる地域の問題を業界トップの方々はどう見ているのか?
そんなお話をお聞きする企画です。
人が訪れ、地域の人と交わることで起こるまちの“にぎわい”というもの。
大野の仕事=“なりわい”という軸でみるとどのようなことが見えてくるのか。
2つが交わると面白い化学反応が起こるのでは?と期待を込めて連載スタートします。
これからの未来をつくる、かもしれない人たちにぜひ読んでもらいたいです。
企画・編集:荒島旅舎 桑原圭 / 横町編集部 三浦紋人
Interview 1
九頭龍設備株式会社
代表取締役 山岸 謙さん(48歳)
※2022年7月現在
>まずは業界について
九頭龍設備株式会社は「管工事の会社」。
官公庁から直接発注される土木系の水道設備工事と建築工事に係る空調も含めた設備工事を請け負う。
一社だけでなく管工事協同組合として連携し、大野市と連携して大野のインフラを支える。
そして、水道トラブルを解決するいわゆるまちの水道屋さん的なところもある。
現状、大野市内の水道屋の数は年々減っているそうだ。
2022年6月現在、大野市の管工事業協同組合に加盟しているのは18社。
山岸謙さん(以下、謙さん)が代表になったのが5年前で、その当時は24社もあったそうだ。
辞めていく理由は後継者不足や、受注できる仕事の減少、小さい規模は吸収されていったりとさまざま。
>業界の課題
業界の課題を聞くと、肉体的にキツイ業界だと思われイメージがあまり良くない。だから若い子に見向きもされない。と謙さん。
仕事の特性として、商品を作って売る商売ではない受注産業であることは、仕事の幅の広げ方もなかなか難しい。
建築工事でここ最近増えてきているのは解体工事。つくる時代ではなくなってきているのも肌で感じるそうだ。
しかし、あくまでも自分たちは“作る”仕事で売るのはその技術力。
今後それをどうしていくかが課題。
>10年後、どうなっていく?
人口減少により建築工事自体は確実に減る。一方で、インフラや公共施設が整備されたことにより、新規の官公庁の仕事は、「維持管理」や「点検」に移行していく。
今後、縮小していく町に大きな仕事になるような「大規模施設を建てること」は時代にそぐわなくなっていく。そうして仕事が減っていくと、小さな会社は大きな会社にまとまり、生き残りをかけるようになるのかもしれない。そうすると、地元の企業としての個性はどんどんなくなってしまう。
理想と現実、会社経営者の苦しさはそこにあると謙さんは言う。
「経営者はみんな苦しいんじゃない?どれだけ想いがあっても自分が一番最後になる。仕事があってもそれで社員がメシを食えなかったらそもそもがあかん。」
「今の時代、来年のことも分からない。だから1つの業界にこだわっているのではなく、技術を出しあってシェアしていく時代になっていかないと。」
>未来の話をしよう。
確実に来る未来を見据え、謙さんが目指すもの。
それは“世界に目を向け、技術力を売ること”
4年前、大野市で始まったCarrying Water Project。
技術者として参加した謙さんは、東ティモールの職業訓練校で配管の指導を行った。
しかし、この国には水道屋そのものがなかった。卒業後は公務員になるか、職人になりたければ、インドネシアか韓国に行くしかない。会社がないので技術者が育たない。大きな課題だと感じた。
加えて、現地を歩くと、いたるところから水が噴き出しているのを目の当たりにした。自分たちがこれまで培ってきた技術力や大野市でのインフラを管理する仕組みなど、この国で“できること”が多いことを知った。
「それなら会社を作ってしまえばいい。」そう思った。
東ティモールと大野をつなぎ、現地で会社を立ち上げ若い子を海外へ連れて行きたい。
謙さんの夢はどんどんふくらむ。
今のまま大野で同じようなことをやっていっても仕事はゆるやかな下降線をたどっていく。業界は再編され、国内の大きいところに吸収されてしまう可能性もある。
「大手の流れにのっかっていくことはつまらない。」トップの考えは会社の個性にもなる。土台にあるのは培ってきた確かな技術力という自信。
柔軟な思考でそれを活かすことで次の一手が見えてくる。
「同じことやっててはだめや。」
先行き不透明なこの時代、経営者はその連続なのかもしれない。
「目に見えんから 手は抜かん」
これは大野市の高校生が謙さんを取材して作ったポスターのキャッチコピー。
「管工事は消費者の目には見えない仕事。だからといってそこで手を抜くのはプロではない。自分の仕事にはプライドをもってほしい。」その想いを高校生が受けとり、言葉にした素晴らしいコピーだ。
このトップの想いが社員の方にも伝わり九頭龍設備の技術力にもつながっているんだと思った。
謙さんが仕事をするうえで意識していたこと。
「60まであと12年。最後に勝負してもいいと思ってる。」
社長として、1人の大野人として世界に目を向ける姿勢に大野の希望をみた。
>編集部memo
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