みちのく一人旅
「もう一人旅に出ます」
彼はそう言った。さっきまでうきうきしていた顔があっという間に真っ青。 そりゃそうだ、合コンで知り合ってのめりこんでいた女性が人妻だと1週間後に宣告されたのだ。 しかも本人からではなく、その合コンの幹事だった俺からである。 ちなみに、俺がその事実を女性陣の幹事から聞かされたのは宣告の前の日である。 女性って怖い。改めてそう思った・・・
今回は4対4。
お店はそこそこいい感じなのだが実は昨日も同僚の送別会でここに来ている。しかもコースまでまったく同じ。まあいいか。
お相手は某百貨店に勤める26歳~3?歳の販売員4人組。皆さん美人である。やはり百貨店勤務ともなると見た目重視なのだろうか、と思ってしまう。
この合コン、実は一人旅に出そうになったその後輩君が開催してくれたものである。しかも女性陣の幹事はその宣告されたはずの人妻。
宣告後一時は落ち込んだが不死鳥のごとく復活し、この日を迎えたのである。若いってすばらしい。Stay Young.
開始直後は些かぎこちない感じ。
事情を知っているのは俺だけであり、幹事たちを見ていられない。 そのうち話が盛り上がってくる。 俺の隣の女性がどうやら一番年上らしい。磯野貴理子を1000倍おしとやかにそして若くした感じの美人。大人な雰囲気であり、彼氏がいないようには見えない。
「で、彼氏いるんでしょ?」
思わず聞く。愚問だと分かっていても。
「いないですよーほんとに!もう結構いないんですよねー」
その言葉、信じたいが信じられない。 以前、合コンで彼氏4年もいないと豪語した女性にかなりいれこんでいたところ、長く付き合っている彼氏がいることを幹事から報告(というか忠告)され、それこそみちのく一人旅に出たくなった記憶がある。
それでも、信じるものは救われることを信じ
「エーそんな綺麗なのに。周りの男が見る目ないんだねー」
大して見る目のない俺がそんなこと言ってみる。なんとなく会話も盛り上がってくる。
今回の俺には制限があった。半ダブルブッキング状態であったのである、とういうかJust double booking.
片方は先輩の昇進祝い合コンである。そっちの幹事は俺。今頃店で先輩は飲んだくれてるんだろう。でも綺麗な女性陣を呼んであるから大丈夫なはず。 残された時間は30 Minutes left.
今回の目標は次につなげる事とし、女性陣の連絡先をゲットし、先に離脱する。Get out now!
この方式ではいつまでたっても合コンが続くことになり、ねずみ講状態になってしまう。 早く抜け出したい・・・でも抜け出せない、この東京砂漠。
後輩君と人妻幹事が飲み会の後、どうなったかは聞いていない。
もしかしたら、何かあったのかもしれない。
すごく興味ある。
でもそれを聞くのは野暮だと友達に止められた。
お互い大人なんだからって。
俺はまだまだ子供のようです。
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