忘れられない人がいる
「大学で一緒のときからずっと好きな人がいて、卒業のときに告白したんです。そしたらその人に「待っててくれ」って言われて。それから彼は就職して地方に配属になって離れ離れになったんです。年に何回かメールしてたまに返事が返ってくるぐらいなんだけど、それでもずっと好きなんです」
誰にでも忘れられない人はいる。 彼女はその彼の一言を信じ、彼をずっと想い、待っているのである。 いま時こんな女性がいるなんて、東京砂漠も捨てたもんじゃない。
でもそれって、合コンに来てする話じゃないよね。
今回は4対4。
幹事ではなく久々にメンバーでお呼ばれした合コンである。と言っても当日に急遽こられなくなった代打だけど。お相手はIT企業の同期3人と別のIT企業に勤める大学の同級生の24歳計4人。男性陣は今回も会社の同僚。幹事は同じ歳の飲み仲間。
今回はお呼ばれした身なので試合開始直後はおとなしくしている。 そうすると左隣の女性2人がバリバリの関西弁であきらかに関西出身。 チーム関西に負けないようエセ関西弁で頑張る。俺だって西日本出身やで。一方右隣の子はなんだかおとなしい。なんか機嫌でも悪いのかと思い話しかけるとこれが結構喋る、そして飲む。
仕事のことや趣味など一通り聞いたあと、そろそろ本題へ。
「で、今の彼氏はどんな人なの?うまくいってるの?」
俺はいつしか、合コンに来る子でも彼氏がいること前提で話をするようになっていた。
「合コンに来る=彼氏いない」
という昭和のOld School, you know?な固定観念は、今まで合コンで出会った女性がきれいに取り払ってくれていた。いるって思ってたほうが救われるやん。
そしたらその彼女がしばらくの沈黙の後、実は・・・と文頭の話を始めたのである。 大学卒業してからということは2年もずっとその人だけを思っているのである。
でもよくよく聞いてみると
「風の噂で東京に帰ってきてるがその連絡はない」
「こちらからメールをしてもたまーに返ってくるぐらい」
など、明らかに暗に返事をしているような彼の態度なのである。
「それなら彼にあってはっきりさせたほうがいいんじゃないの?」
と言うと、それはできないと言う。
「メールこっちからもっと送ってみればいいじゃん」
との問いにもはっきりしない。
要するに、自分には好きな人がいて、その人を待ってるという構図を壊したくないらしい。何か言ってしまうと、その関係がなくなってしまうのではないかと思っている。
でも過ぎていく時間がもったいない、どうしたらいいんだろ・・・悩む彼女。
なんとか彼女の助けになりたい、と思った俺は、
「ここで俺たちが何かいってもきっとあなたの気持ちは変わらないよ。要は自分が納得するようにすればいいと思うよ。そういう一途な気持ち大切にしたほうがいいよ。そうすれば彼にその想いが伝わるし、もしかしたらその人を超える人が現れるかも。がんばれ!」
などと誠に僭越ながら大演説してみた。
静かに聞いてくれた彼女は
「そうですよね、今日メールしてみよっかな」
と言った。
わかってくれたらエエねん。
テンションは下がり気味だがなぜか人助けをしたような気分になった。とりあえずみんなと赤外線で連絡先を交換して健全解散。なんもうまくいってないのになぜかいい気分。俺ってエエやつやなほんま。
後日、女性の友人にこの話をした。
そしたら彼女はだからコイツはみたいな顔してこう言った。
「だからあんた駄目なんよモテんのよ。要するに彼女はその話することで、 今回の合コンにはその彼を越えるようなエエ男はおらんかったって言うてるんよ!アンタもその1人や!」
東京で聞く関西弁は余計身に染みる。
俺の東京弁は上手になったかな。
修行はまだまだ続く。
Life goes on.
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