氷魚10月19日「ぬらめく」
ぬらめく
つるつるしてはいない
一貫性はないが濡れている
玄関に似ているが空洞ではない
しゅらめくでは通じない
靴を脱ぎまた履く影の微動詞
にしては光っているが川でもくちびるでもなく
靴にしては大きいし一瞬にして潰れくつ
を履かないどうぶつはお金を脱いだり履いたり
店を洗ったり乾かしたりしない
るびもいらない出来事に血を出して走る
ただ走り疲れて瞼が閉じるとき
一日のあとがきのような空が映る
何も書かないチーター
ぬらめく
足跡だけの山羊
ぬらめく
目の奥の雨の森
ぬらめく
歩みかけて作った道が幾つも
歩き散らして
ぬらめく ぬらめく ぬらめき
を最後まで壊そうとする靴底の光
靴底の光に合う靴がなく
既製品の靴を買い続ける
シュープラザで買ったクロックス
ABCマートの靴
靴づれしたままの足で歩く
チーターがいる
目覚めない山羊が足にいる
雨の奥の森の音が
膨らんで動いている
これらを覚えていたいが
覚えたままでは暮らせないと
ぬらめく
クロックスに熱湯をかけて
丁寧にほぐしてみる
こなれるまでの時間
山羊たちは遠ざかり
雲の粉末を
踵に塗りつけ
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