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コチはファミチキで釣れるけど、ルリスズメダイはグルテン餌じゃ釣れないって話

あけましておめでとうございます! 2022年がスタートしてから松の内どころか鏡開きも過ぎてからの挨拶で恐縮ですが、今年も筆者・新木正のnoteをよろしくお願いいたします。今年こそはコロナ禍がおさまって行きたいところにお出かけしたり、好きな人と気軽に会ったりできる世の中に戻って欲しいですね。

さて、冒頭に未来への願いを記しましたが、本記事で話題にするのは過去に出かけた沖縄旅行のことです。2021年後半、沖縄では米軍基地で大規模なクラスターが発生し、12月末にはオミクロン株の市中感染も確認。現在はさらに感染が拡大している状況です。寒い冬こそ南国へ行きたくなるものですが……こんな状況で都内から沖縄へ旅行するのはためらわれます。そもそも都内もここしばらく凄まじい勢いで感染拡大してますしね。

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▲沖縄に行けない悲しみをオリオンビールの限定缶で紛らわせるの図

そんなわけで、本記事では以前筆者が出かけた沖縄での釣り旅行について記したいと思います。自由に旅行をできない今の慰みとして、また遠くない未来に再び南国へ飛べる日が訪れることへの願懸けとして!

筆者が前回沖縄を訪れたのは、12月後半の寒い時期。三泊四日の日程でしたが、初日は夕方に到着して最終日は午前中のフライトで帰ったため、時間を自由に使えたのはほぼ中二日間のみです。妻子が実家に帰省している期間のひとり旅でしたので、一日目はレンタルバイクでリーフ(サンゴ礁帯)を巡ってミーバイやモンガラを狙い、二日目は那覇市街を流れる川でチヌやコチを狙う……という釣り三昧のプランを立てていました。北部の「やんばる」と呼ばれる地域でジャングルパーチも釣ってみたかったのですが、このときは時間の都合上お預けに。ジャングルパーチにはコロナ禍が収束したあと、改めて会いに行きたいですね。

ちなみに本記事のタイトルは二日目の成功と初日の失敗を端的に表したものです。なぜ時系列が逆になっているかというと、初日のリーフフィッシングは完全にボウズだったからです。以下、ちゃんとコチをゲットした那覇市街地での釣りについて書きますね……といっても、このときも釣れたのはたった一匹だけなんですが!

さてさて、皆さまは那覇空港〜浦添市を結ぶ高架のモノレール「ゆいレール」の足元を流れる「安里川」をご存知でしょうか? かつては排水で汚染され、魚も寄り付かなかった都市河川ですが、地道な浄化活動のおかげで現在は水質が改善し、那覇港から遡上してくる海水魚から純淡水魚まで、幅広い魚種が生息しています。GTやサメが釣獲された記録もあり、地元のアングラーのみならず県外からの旅行者もしばしば竿を出しています。

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▲思い切り街中を流れる川なので、釣りの際には通行人に注意すべし。

筆者はかねてから、この川で現地在住のアングラーが行う独特の釣法に興味がありました。「チキング 」と呼ばれるそのメソッドはその名が表すごとく、ファミチキなどコンビニのホットスナックとして販売されているフライドチキンを小さくちぎり、餌にするという釣り方なんです!

血の匂いに釣られてサメが寄ってくるように、魚は視覚だけでなく嗅覚でも餌を感知できますから、自然界ではありえないほど強烈な香りを発するフライドチキンが釣り餌として好適だという理屈はわかります。オキアミやアオイソメなど釣具店でしか販売していない餌と異なり、そこら中にあるコンビニで手軽に調達できるのも嬉しいですね。ただ、どう考えても針持ちは悪いでしょうし、匂いや味の個性が強いということはそれだけ魚をスレさせやすくもあるはずです。普段はルアーやフライの釣りばかりで、餌釣りの経験に乏しい私が、果たしてチキングで狙い通りの釣果をあげられるのか?  挑戦する前は期待半分、不安半分でした。

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▲ガード付きジグヘッドにファミチキをセットするの図。冗談みたいだ。

が、やってみれば結果はすぐに出ました! ゆいレール・安里駅の近くで釣りを開始してからおよそ1時間ほどの後、ボトムをゆっくりズル引きしていたナイロンガードの付きのジグヘッドリグに、元気なコチが食いついてきました。サイズこそ20cm強と小ぶりなものの、初めての釣法で釣れた一匹はそれだけで嬉しいですね。

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▲ファミチキで釣れた安里川のコチ。沖縄のコチは尻尾の配色がカラフル。

結局この日はそれ以降2度アタリがあったきりで、目当ての魚だったナンヨウチヌには会えませんでしたが、短時間でも手軽にできる釣りであることが分かりましたので、次回沖縄を訪れた際もぜひ挑戦してみようと思います。ふたつ上の写真ではかなり大きめにちぎったチキンをセットしていますが、魚の居場所がわかるまでは大きいチキンを使用→アタリがあったら同じ場所に小さくちぎったチキンを針先にチョン掛けしたリグを再投入などするとより効率的かもしれませんね。警戒心が強い魚は一口チキンをかじった時点で、針先に触れずとも今食べたものが自然界に存在する餌ではないことを理解するでしょうし。

さてさて、ここで記事を終わってもよいのですが、筆者と同じ轍を踏む方がこれ以上出ないように、ボウズだったリーフでの釣りについても記しておきましょう。私は中型自動二輪の免許を持っていますので、旅先などで時折レンタルバイクを借りることがあります。沖縄の代表的な岸釣りといえば、ミーバイやモンガラなど沖縄独特の魚種を狙ったサンゴ礁帯(リーフ)でのルアーフィッシングが挙げられますが、サンゴ礁帯は観光地ではない(海水浴場の近くに広がっていることも多いですが)ため、良いポイントの近くに駐車場があるとは限りません。そこで、車よりも駐輪スペースに困ることの少ないレンタバイク、それもシート下に荷物を格納できるスクーターを借りて沖縄本島東南部のリーフを巡ったのですが……残念ながら魚信を得られず、単なるツーリングに終わってしまいました。

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▲海沿いをバイクで走って、リーフを散歩するだけでも楽しいですけどね。

スプーンやワームを用いたルアー釣りがダメだったのは、いかに沖縄とはいえ12月の寒さは魚にとって厳しいし、そもそも筆者のウデがあんましである……ということで納得がいくのですが、個人的に「まさかコレが通用しないなんて」と驚いたのが表題の件です。

皆さまは「ルリスズメダイ」という海水魚をご存知でしょうか? 名前を聞いてピンとこなかった方も、上記のWikipedia記事に載っている写真を見れば「ああ、これか」と思われるはずです。沖縄のリーフにおいてごく普通に見られる魚であり、美しく鮮やかなブルーの体色を持つことから、熱帯魚販売店や水族館でも人気を集めています。

そんなルリスズメダイは、ほとんど釣りの対象になりません。そもそも、本種に限らず「超小物をリリース前提で狙う」ことが海釣りではまずないんですね。淡水におけるタナゴ釣りやクチボソ釣りのような、釣趣を追求した小物釣りがソルトウォーターのフィールドにおいては(もちろん個人的に楽しんでいる人はいると思いますが、文化としては)発展していない文化なのです。美味しくてファイトも楽しい魚が多種生息する海において、わざわざ見た目がキレイなだけの小魚を釣る必要もないのかもしれませんが……それは豊かな水産資源に恵まれた土地に住まう方々の感覚でしょう。普段23区内で休日の小物釣りを愉しんでいる筆者は、ルリスズメダイを超小型の針とライトラインの仕掛けで狙って釣れれば、新しい釣りのジャンルを開拓できるのではと考えたのです。

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▲バイクでなければ絶対に訪れなかっただろう位置にあったお店の沖縄そばも美味しかった。メインの麺からお口直しのゴーヤの漬物までぜんぶ最高。

勝算はありました! なぜなら、ルリスズメダイを水槽で飼育する際に与える餌は、植物性の材料で作られたペレットなのです。釣りの対象魚になっていないから人間に対する警戒心に乏しい&植物性のエサを主食とするルリスズメダイが、グルテンを餌につけたタナゴ釣り仕掛けに食いつかないワケがないだろうと、筆者は浅慮にも考えていたのです。

ですが、リーフに集うルリスズメダイたちの前に、海水を加えて練りこんだグルテンを投入したところ……ガン無視。エサの周囲に寄ってくることも、警戒して逃げることもなく、ただただそこに仕掛けが存在しないかのように扱われてしまいました。

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▲赤丸の位置にみえるのがルリスズメダイ、黄色の丸で囲まれているのがタナゴ釣り仕掛け。いっそ清々しいくらい魚たちから無視されている。

タナゴ釣りの仕掛けはそのまま、餌をグルテンから人口イソメに変えてみても結果は同じ。飼育下で与えれば食いつくはずの餌に対していっさい無反応な理由が解明できずにモヤモヤとしているのですが、どうやらルリスズメダイは飼育環境で食べる餌が似ているといえども、淡水魚であるタナゴと同じ釣り方はできないようです。

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▲テレスコピック式のパックロッドは、リグったままスクーターのメットインに入れられるので便利。同じパックロッドでも継竿だとこうはいかない。

とはいえ、諦めたわけではありません! 次に沖縄を訪れるときには、極小フライ(毛針)や海水魚飼育用のペレットをそのままタナゴ針につけた仕掛けなどを用意し、ぜひともルリスズメダイをこの手中に収めたいと思います。もっとも、水深の浅いリーフに多数生息していて、非常に目立つ体色をしている魚ですから、網を使えば簡単に掬えるんですけども……口に針を掛けて釣ることこそが、アングラーの矜持ということで!

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▲釣れなかった話で終わるのもナンなので、本記事の旅行よりもさらに昔に訪れたリーフで釣れた一匹を貼って〆に。この時も結構寒かったな。

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