【8/1】大魔王見参!~巨人に新たな風を吹き込むZ.ウィーラーに注目してみた~(徳)
0. はじめに
波乱の幕開けとなった今年のプロ野球界も実に様々なニュースがあるが「楽天ウィーラーと巨人池田のトレード」もその一つであったことであろう。楽天の主力打者として梨田政権でのAクラス進出に貢献、パンチ力ある打撃とその愛嬌溢れるパーソナリティーで東北のファンのみならず、プロ野球ファン全体に愛される助っ人、Mr.ポテトヘッドであり、ハクション大魔王であり。何故かお立ち台で「イクワヨ!」と叫ぶひょうきんな選手である。(ズムサタにどんどん出てほしい)
その後、楽天高梨と巨人高田のトレードもあり、楽天で今季出場機会に恵まれなかった主力と巨人のプロスペクト枠の環境を変えるトレードが話題を呼んだ。今回はそのウィーラーに注目してみたい。
(参考記事:https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2020/07/09/___split_123/index.php)
1. 年度別打席成績(2020/07/31現在)
(出典元 https://npb.jp/bis/players/03105130.html )
ウィーラーの年度別成績と今季成績を見てみよう。
来日1年目の序盤こそ苦戦したものの、シーズン中盤から後半にかけてにパンチ力ある打撃で適応し始めると、2016・2017年は中軸として2年連続25本以上・OPS.800超えを達成。2018年・2019年は少し長打率が落ちたものの、犠飛の数が増えるなど献身的な打撃を記録。この頃から楽天の外国人枠争いがより激化(宋やブラッシュなどの加入)、2020年はオリックスからロメロが加入したことから、争いに敗れ、楽天での出番はなかった。トレード直後の6/30に登録されると、7月中旬から調子を上げ、現在打線の中軸として少ない打席数ながら3割を超える打率で首位を走る巨人打線を支えている。
2. 注目してみたい傾向
・逆方向への意識
(図 ウィーラーの年度別打球方向)
(データ出典元 http://nf3.sakura.ne.jp/Central/G/f/48_stat.htm)
これはウィーラーの年度別打球方向である。前出の参考記事によると来日前のMLB(ニューヨークヤンキース)時代は逆方向を意識したバッティングやバントを信条としており、打率1割9分3厘、2本塁打、5打点の成績にとどまっていた。来日後は中長距離砲としての才能が開花、そのタイプチェンジにつれて、引っ張る傾向が顕著に現れ、左方向への打球が例年半分以上を占めていた。最も成績がよかった2016年・2017年は特に左方向への打球が多いこともそれを物語っている。
それが今季は一転、まだ60打席ほどと少ない打席数ながらも、逆方向への打球が40%程度へと大幅に増加。ホームラン4本のうち2本が右方向へのホームラン、フライアウトも右飛が多めになっており、逆方向への意識が高まっている。明らかにウィーラーの中で再度意識変化が起きていることがうかがえる。また坂本・丸・岡本といった中長距離砲の多い打線において、楽天時代と自身の立場が変わってきたことを察して打撃を適応させた結果とも言えよう。人柄にとどまらないこの適応力こそがウィーラーの強みである。
しかし、この右方向への打球が好結果に直接繋がっているかと言われると、一概にそうも言えない。右方向への打球(全体の40.9%)のうち、58.3%は凡打に終わっているのだ。この凡打が安打に変わったら、巨人版ウィーラーの進化にはまだまだ伸びしろがある。
(参考追記) ゴロアウトの低下
データサイト「1.02baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)」のデータを参考にすると、なんとウィーラーのゴロアウト率は例年の1/3に低下していた。右方向へのフライが増えていることが分かる。そして今季はここまで併殺打ゼロである。これも意識改革の一端を受け取ることが出来る。
・増える内野安打数
(図 ウィーラーの年度別内野安打数)
(データ出典元 http://nf3.sakura.ne.jp/php/stat_disp/stat_disp.php?y=0&leg=0&fpnum=48&tm=G&mon=0&vst=all)
今季はここまで例年の1/9-1/7程度の打席数ながら、内野安打数が既に4本もある。そして前出の通り今季のゴロアウト率は飛躍的に低下しているのである。ここには飛んだ方向の運やバットコントロールの巧みさに加え、新天地でも忘れないウィーラーの積極走塁の姿勢があると考えられる。来日以降毎年記録している盗塁を今季も既に1つ記録、昨年は積極的過ぎて8企図のうち5回刺されてしまうなどの結果もあったが、この積極走塁の姿勢がジャイアンツの選手達に与える影響は決して小さなものではないはずである。
3. 最後に
今回の記事では、まだシーズンが半分にも満たない段階ながら、ウィーラーは
・打撃でのアプローチ変化
・変わらぬ積極走塁の姿勢(今twitterでウィーラーと打つと「ウィーラー 走塁」とサジェストされるほど、ジャイアンツファンの目にも止まっているようである)
・ここでちらっと追記したいが来日後初めてプラスを記録している守備
・圧倒的愛嬌とひょうきんさとチームを鼓舞するファイティングスピリット、日本野球へのリスペクトといった人柄
走攻そしてキャラクターの「4」部門でジャイアンツに新たな大魔王旋風を巻き起こしている。
このトレードは今の所、ジャイアンツにとって大成功トレードといえる。しかし、トレードは双方にwin-winとなって初めて最高のトレードと言える、イーグルス池田の奮闘にも期待しながら、これからも二人のシーズンを追いたい。
文責:徳